公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2020年度活動報告|香川県内におけるがんや難病の子どもとその家族のケアサポート事業

病気の子どもと家族を孤立させない支援団体 NPO未来ISSEY

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。 事業の詳細などは以下からご覧ください。



事業紹介|香川県内におけるがんや難病の子どもとその家族のケアサポート事業



事業の目的 事業の内容 結果 成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

香川県内において小児がんや心臓病など慢性的な疾患をもち、長期入院や治療が必要な子どもやその家族は、突然経験することになった病気、治療に対する不安や負担、学習の遅れ、制限された生活など数々の困難を背負っている。特に子どもの心の成長に必要な「年齢の近い人とのコミュニケーション」「学習意欲と学年相応の学習内容」が欠けることは治療後の復学の壁となることがある。従って助成金を活用し、病弱児やきょうだい児の心理的ケアと学習支援を専門とする人材(学生ボランティア)の育成・統括する企画運営部として未来ISSEYが機能する体制を香川に作ることを目的にした活動を行ってきた。また子どもやその家族の現状を分かりやすく伝える活動を継続的に行っている。
具体的に行ったことは、
 (1)チームグッドブラザーに参加するスタッフ・ボランティア育成研修の実施
 (2)対象者への学習支援・イベントの実施
 (3)広報用ムービーの作成
である。
またこういった活動が香川県内で始まっていることを必要な方に届けるため、広報として映像を作成・配信上映してきた。同時に慢性疾患を抱える子どもとその家族、きょうだい児等の現状を一般の方に知ってもらうことにより、ボランティアの募集や寄付の獲得につなげていく。

事業の内容

(1)チームグッドブラザーに参加するスタッフ・ボランティア育成研修の実施

◆対象
2020年度グッドブラザー事業参加スタッフ・ボランティア
◆概要(カッコ)内参加人数
①新人研修  4/28 5/30 6/11 8/31 10/25 11/6
グッドブラザーの役割・活動する上での条件・注意事項・事務手続き等、うち3回は岡山県認定NPO法人ポケットサポート代表理事三好祐也さんによる講演含む
②イベント
4/6 プリント集作成打ち合わせ会
9/27 ゲーム研修会(3)
10/11 バディ(病弱児)との接し方(2)
11/22 季節イベントアイデア企画会
12/13 ポケットサポート代表理事三好祐也さんを講師にお招きしてグッドブラザー研修会

(2)対象者への学習支援・イベントの実施

◆学習支援概要
内容:
①の講習を受けたスタッフ・ボランティアが病弱児の病室を訪れ、学習支援や話し相手・遊び相手となる。現在オンラインZoom使用。
実施日:
四国こどもとおとなの医療センター 毎週金曜日17:00~19:00
香川大学医学部附属病院 毎週土曜日14:00~16:00

◆プリント集作成・発行
内容:
グッドブラザー自作プリントのデータを送ってもらい、スタッフが冊子として発行。3週ごとに発行。現在24号発行完了。
毎回20部~30部

◆イベント概要
内容:
七夕やハロウィン、クリスマスなど季節の行事に合わせた交流イベントの開催。
実施日:
4/22 春イベント(アマビエ作り)
8/21 夏祭り(青木石キャンドルスタンド作り、ビンゴゲーム)
10/29 ハロウィンパーティー
12/17 水族館見学

(3)広報用ムービーの作成

◆概要
ムービーテーマ「きょうだい児」
完成後、さぬき映画祭に出品し、認知度拡大を図る。
その後、団体の広報としてHPでの公開や、講演会での上映を行う。

結果

(1)チームグッドブラザーに参加するスタッフ・ボランティア育成研修の実施

◆対象
2020年度グッドブラザー事業参加スタッフ・ボランティア
◆概要(カッコ)内参加人数
①新人研修4/28(6名)6/11(9名)8/31(21名)10/25(62名)11/6(5名)
②4/6(5名)5/30(6名)9/27(1名)10/11(1名)11/22(1名)12/13(8名)

(2)対象者への学習支援・イベントの実施

◆学習支援概要
実施日:
四国こどもとおとなの医療センター 毎週金曜日17:00~19:00
年間参加 グッドブラザー延べ113名 病弱児延べ72名 スタッフ延べ37名
香川大学医学部附属病院 毎週土曜日14:00~16:00
年間参加 グッドブラザー延べ76名 病弱児延べ29名 スタッフ延べ23名

◆プリント集作成・発行
内容:
3週ごとに発行。現在24号発行完了。各回プリント新規提出数8種類×3冊×24号=576種類。(同じグッドブラザーが数枚出す場合もある)

グッドブラザー作成だははは問題集

◆イベント概要
内容:
七夕やハロウィン、クリスマスなど季節の行事に合わせた交流イベントの開催。
実施日:
4/22 春イベント(アマビエ作り)
参加 病弱児延べ10名 スタッフ延べ3名
8/21 夏祭り
参加 グッドブラザー延べ6名 病弱児延べ10名 スタッフ延べ3名
10/29 ハロウィンパーティー
参加 グッドブラザー延べ2名 病弱児延べ7名 スタッフ延べ3名
12/17 水族館見学
参加 グッドブラザー延べ3名 病弱児延べ11名 スタッフ延べ3名

季節イベント「夏祭り」
季節イベント「ハロウィンパーティー」

(3)広報用ムービーの作成

◆概要
ムービーテーマ「きょうだい児」
完成後、さぬき映画祭に出品し、認知度拡大を図る。
その後、団体の広報としてHPでの公開や、講演会での上映を行う。

成果

(1)チームグッドブラザーに参加するスタッフ・ボランティア育成研修の実施

支援の対象者が非常にデリケートな問題を抱えていること、個人情報保護の視点から決して軽い気持ちで参加できないボランティアであることを理解し、協力いただける高校生以上の方に参加してもらっている。今までに作ったショートムービーの視聴・パワーポイントの使用・講師による講演等工夫することで共感と理解を得られ、登録者120名を超える状況である。
活動開始後もステップアップ研修を実施、ボランティア活動の中で生じる互いの悩みを話し合ったり、スタッフや講師からのアドバイスを受けたりすることで自信をもって活動に取り組めるようになってきた。

グッドブラザー研修会

(2)対象者への学習支援・イベントの実施

病弱児は
①3週に1回届くプリント集で活動に興味を持つ、
②年4回企画イベント開催でオンライン交流に参加、
③グッドブラザーに親しみをもって週1回オンライン交流に参加、
という流れで段階的に未来ISSEYと距離が近くなる。「お兄さんお姉さんと話したりゲームをしたりしてすごく楽しかった」「退屈な時間が減って、zoomの時間が待ち遠しい」という感想をたくさんいただいた。これは家族、特に母親の心情面も同じである。未来ISSEYという団体を知り利用できるサービスを使っていただく中で、ただ便利だったというだけでなく、「諦めていた時間と経験を取り戻した」「心が救われた」といった気持ちをもったようである。
またグッドブラザーたちは、将来、医療・看護・福祉・教育といった分野に進もうとしている学生が多い。オンライン交流・季節イベント交流・プリントデータ作成を経験する中で、大学進学をボランティアサークルのある香川大学医学部に決めた者、資格取得や就職に向けて更に強い意思を固めた者など、「してあげた」という感情でなく、「喜んでもらいよかった」「今をどう過ごすか」「自分がどう将来に進むか」という自己決定のための重要な経験として捉えていることが興味深い。

グッドブラザー病気を抱える子どもたちとのオンライン交流

(3)広報用ムービーの作成

複雑なきょうだい児問題にスポットをあてた広報用ムービー「ともだち」を作成。主人公を高校生にし、少し大きくなったきょうだい児の心を描いた。未来ISSEYが関わる病弱児にもほとんどの方にはきょうだいがおり、体調を崩したり、不登校になったりしている。またこの問題はその時だけではなく、大きくなってからもその時の思いから抜け出せていないということがわかった。そこで今回は少しでもきょうだい児という存在を周りの人に気づいてもらうことと、なかなか吐き出せない思いを当事者の代わりに叫んでみることを目的とした。
さぬき映画祭に出したものの、本選に残るための10位に事前審査で選ばれることができなかった。しかし285名の方は「ともだち」に票をいれてくれていた。その後Youtubeで動画をUPするとともにDVDを50枚作成し、市町村や学校に配布。また民生委員が所属をする社会福祉協議会にも配布し、勉強会などで見てくれている。

☆Youtube(こちらをご覧ください→
4月16日現在 再生回数1210回

啓発用ショートムービー「ともだち」

課題および今後の展望

・グッドブラザーの継続的な募集・研修
・グッドブラザーの主体的なアイデアを生かした活動の支援
・コロナ禍で病弱児とご家族が安心し信頼して利用できるオンライン交流の実施方法の検討
・病弱児とご家族が気軽に「未来ISSEYに相談したい」と思える、団体のあり方

病気の子どもと家族を孤立させない支援団体NPO未来ISSEY

代表

吉田ゆかりさん

中讃ケーブルビジョン株式会社にてアナウンサーとして勤務ののち、株式会社インペックスの専務取締役として婚礼やイベント司会等で活躍。次男の闘病経験を経て、香川県で同じような状況の子どもや家族の力になりたいと2018年11月に非営利団体NPO未来ISSEYを設立。2020年10月に法人化。自身の経験を活かし、慢性疾患により長期入院や療養をしている子どもたちの学習・学び体験の場を作っていく活動や家族の相談事業に注力している。またその子どもや家族の現状を講演活動や映像制作・上映を通じて広めている。



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