公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2020年度活動報告|活動報告|医療的ケアを必要とする子どもたちの"食"の世界を広げるプロジェクト

NPO法人 i-care kids京都

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。 事業の詳細などは以下からご覧ください。



事業紹介|医療的ケアを必要とする子どもたちの"食"の世界を広げるプロジェクト



事業の目的 事業の内容 結果 成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

①保育園スタッフ、関係者が医療的ケア児の食育について学び、どのような取り組みができるのかをそれぞれの専門的見地から知識と経験を共有する。
②医療的ケア児が食べることについて、育てる、五感で触れる、食べる体験を広げることができる。
③医療的ケア児の家族が言語聴覚士、管理栄養士、歯科医師などの専門家から食について講座を受けることで、自分の子どもの普段の食生活を見直したり、質を高めることができる。
④食を通した活動で家族同士の横のつながりをつくる。
⑤地域や全国に、この活動が広がり、他の施設での取り組みのモデルとなる。

事業の内容

重点実行項目①「保育園スタッフ、関係者の研修会の実施」

対象:
法人役員(10名)、保育園スタッフ(約10名)、地域の医療的ケア児に関わる専門職スタッフ(約30名)
概要:
2020年6月下旬ころに京都市内の公共施設にて島田療育センターはちおうじの小沢浩先生をお招きし、「医療的ケア児×食育」のシンポジウムを実施し、参加者が医療的ケア児の食育についての概論と実践を学び、どのような取り組みができるのかを考えるとともに、それぞれの専門的見地から知識と経験を共有する。

重点実行項目②「医療的ケアの必要な子どもたちと食べ物を育てる、五感で触れる、食べる活動の実施」

対象:
保育園の園児と保護者(約7家族)、京都市内の医療的ケア児家族(約80家族)、関係者から参加者を募る。
概要:
2020年6~11月の間に3回、子どもたちと野菜を植える、育てる、食べるの体験、季節の味覚を楽しむ体験等を実施する。

重点実行項目③「医療的ケア児と食育に関する家族向け講座の実施」

対象:
保育園の園児と保護者(約7家族)、京都市内の医療的ケア児家族(約80家族)、関係者から参加者を募る。
概要:
2020年6月~11月の間に3回、言語聴覚士による摂食、嚥下についての勉強会、管理栄養士による保育園での食育についての勉強会、歯科医師による口腔ケアについての勉強会を実施する。


結果

重点実行項目①「保育園スタッフ、関係者の研修会の実施」

⇒新型コロナウィルスの影響で開催を中止した。2021年度に持ち越す予定。

重点実行項目②「医療的ケアの必要な子どもたちと食べ物を育てる、五感で触れる、食べる活動の実施」

⇒新型コロナウィルスの影響で、小規模保育園キコレの園児とのプログラムのみ実施。毎月1、2回のペースで管理栄養士が保育の中で食育プログラムを展開した。季節の野菜、食材に触れるテーマでふき、梅、しそ、豆類、かりんなどを五感で感じ、調理する体験を積んだ。また園庭にトマトときゅうりを植え、水やりや観察、収穫、お料理まで一連の活動を行うことで野菜嫌いが軽減されたりということが見られた。また、クッキーづくりやあじさいゼリー、うどんを打つなどの料理の体験、ピクニックやお買い物ごっこで自分で食べたいものを決め、配膳し、いただくという経験も積むことができた。

重点実行項目③「医療的ケア児と食育に関する家族向け講座の実施」

⇒新型コロナウィルスの影響で一斉にご家族に集まってもらうのは不可であったため、個別対応とスタッフ研修に変更となった。
(1)言語聴覚士による摂食・嚥下についての勉強会⇒2020年7月2日に言語聴覚士に来園してもらい、各園児の給食を観察、指導を受けた。
(2)管理栄養士による保育園での食育についての勉強会⇒開園前の全体研修会(役員、スタッフ総勢20名)にて管理栄養士から保育園での給食、医療的ケア児や重度心身障害児の食事について研修を受けた。
(3)歯科医師による口腔ケアについての勉強会⇒嘱託の歯科医師とは開園時より連携を取っており、入園時に入園お祝いとして口腔ケアのセットを園児にいただいたり、感染予防についても助言をもらった。11月26日に歯科健診を実施し、健診終了後にスタッフが歯科医師より口腔ケアについての研修を受けた。

成果

・多様な食育プログラムの取り組みは、保育だよりや連絡帳、口頭などで保護者の方々にお伝えした。経管チューブから経口摂取に移行している園児もおり、園での取り組みに対しての期待はとても高い。また野菜嫌いが軽減された、家でもお野菜を食べることができるようになったという嬉しい報告も受けている。
・保護者からの食事についての相談はスタッフに寄せられ、管理栄養士を中心にスタッフ全員で共有し、保護者と一緒に園、家庭での子どもたちの食生活についての情報交換や共有を行っている。保護者も信頼して相談を寄せてきてくれているのを感じている。朝食に何を食べさせたらよいのか?、家での食事は何カロリーくらいを目指すのか?経口摂取にどのように移行していけばいいのか?などが多く寄せられる質問である。
・園児たちは障害や疾患も様々で、食育プログラムのどの部分にどの程度参加するかは一人一人違っているものの、料理全般を思いきり楽しむ園児もいれば、はじめは野菜や食材に触るのにも抵抗があったのが、少しずつ自分のペースで参加する園児もいる。またなかなか自分からは関わろうとしない園児はにおいをかいだり、スタッフと一緒に感触を楽しんだりという活動から徐々に慣れていっている状態である。
・ホームページから時折食育について発信していることから、他園の調理師から問い合わせがあり、コロナが落ち着いている時期に園にきてもらい、情報交換を行った。
・園で働いているスタッフにも職員食が毎日2食ずつ提供されたり、一緒におやつをいただいているが、食べることはスタッフの楽しみにもなっている。

課題および今後の展望

・しばらくはコロナの影響があり、大人数が集まることができないと思われるので、園内での食育の取り組みを充実させていくとともに、ホームページを中心に外部への発信をしっかりしていきたい。
・園内での取り組みについては、ただ「たのしい」「おいしい」というだけでなく、それぞれの子どもにとって、その活動がどんな意味があるのか、ねらいをしっかり共有しながら取り組んでいけたらと考えている。
・保護者との取り組みについては、引き続きそれぞれの質問や要望に応えるとともに、ホームページの「キコレのごはん」ページ、保育だより、連絡帳等を通して情報交換、共有をしていけたらと考えている。
・コロナの感染状況をみながら、小さな集まりでもいいので、専門家を迎えての勉強会などもしていきたい。
・コロナが落ち着いたら、まずは園児、保護者と一緒に食事会をしながら、食べることを楽しむ取り組みを行いたいと考えている。

「ジューンベリーおいしいね」
園庭になったジューンベリーをつんでいただきました。おままごとに使ったり、おやつのパンケーキのソースにしてもらったり、色々楽しみました。
「みんなで梅仕事」
梅をつけて梅シロップづくりをしました。お仕事帰りや懇談会でお母さんたちにも飲んでもらいました。とても好評でした。
「あじさいゼリーづくり」
あじさいの写真をみながらつくりました。
「お豆いろいろ」
豆苗やグリーンピース、大豆などいろんなお豆について学んだり触ったりしました。「そらまめくん」絵本シリーズとともに楽しみました。
「かりんシロップ」
またまた季節のつけもの、、、。このころにはみんな保育園にもすっかり慣れて、今まで食材が触れなかった子もしっかりかりんを握ってビンに入れることができました。
「クリスマスのクッキーづくり」
黄色のクッキーと紅芋パウダーの入ったピンクのクッキー2種類できました。いろんな形をつくってみんな大満足。いいにおいが保育ルームに満ちていきました。もちろん、とってもおいしかったです。

NPO法人 i-care kids京都

代表理事
アートセラピスト・保育士・特別支援教育教員免許取得・医療的ケア児家族

藤井 蕗さん

京都教育大学発達障害学科卒業後、ドイツ、スウェーデンにて障がい児・者の支援に携わる。2004年英国ハートフォードシャー大学大学院アートセラピー科修了。帰国後、医療法人にて発達障がい児、高齢者、緩和ケアの領域でアートセラピーを実践。二男・旅也が18トリソミーを抱えて生まれてきて、在宅移行する際に退職。著書「a life 18トリソミーの旅也と生きる」(クリエイツかもがわ出版)。自分自身の体験を通して、障害や病気を抱えた子どもを授かったとしても、お母さんたちが自分の仕事を続けられる社会にしたい、自分たちと同じような体験をしている子どもたちや家族たちのプラットホームとなるような場所を作りたいと考え、「i-care kids京都」を立ち上げた。

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