助成団体紹介
活動最終報告|居場所のない子どもたちのフリースペースの継続性・支援力を高めるための自治体との協働事業
特定非営利活動法人アスイク
大橋 雄介さん
2か年の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。
事業の詳細は以下からご覧ください。
居場所のない子どもたちのフリースペースの継続性・支援力を高めるための自治体との協働事業
事業の目的/目指す状態 事業内容と活動経過 1年目 事業内容と活動経過 2年目 2年間の事業の成果と評価 課題および今後の展望
事業の目的/目指す状態
東日本大震災後に不登校率が高まっており、当法人が自主事業で運営してきたフリースクールの利用者は年々増加しています。一方で、利用者の中には生活困窮世帯も少なくなく、家庭からの利用料によって運営していくことは困難です。そのため、仙台市との協働事業として試験的に運用を行い、その実績をもとに仙台市の施策となることで、継続的に運営できる状態になることを目指しました。
2019年より、市のふれあい広場のサテライトを運営することで、仙台市(財政部局)に施策化の提案を行なうためのエビデンスが揃い、2021年度から委託事業となることが決定することを目指しました。
事業内容と活動経過 1年目
《活動内容》
① 関係機関へのヒアリング等による今後求められる居場所のニーズ調査、及び仙台市との検討会議の開催
② 居場所の共同運営による利用者のニーズの実証
③ 協働事業の運営による人材育成の取り組み
《結果》
① 延利用者数が急増したことで、サテライトの必要性を実証できた。関係機関のヒアリングを通して、ふれあい広場のポジショニングを明確にし、仙台市とも共有することができた。
② 年間延べ利用者数は約3,000人となり、前年度の3倍近くとなった。サテライトの内2か所(長町・泉中央)が週1日開催のため、利用を敬遠する家庭が発生した。
③ サテライトの支援感を深めていくためのベースとなるクレドが完成した。1日当たりの利用者数は9.1人となった。2組織の支援感の違いが浮き彫りになり、今後の連携を深めていくうえで注意すべき点を明らかにすることができた。
事業内容と活動経過 2年目
《活動内容》
① ふれあい広場サテライトの拡充
2019年度に開設したサテライトの内、泉中央・長町サテライトを週1回から2回に増設する。
② 関係機関との連携強化
ふれあい広場に期待されている「義務教育終了後に中退・引きこもりになるリスクの高い子どもとのつながりづくり」を機能させるために、関係機関を巻き込みながら効果的な方法を検討する。
③ 支援観の深化
正解のない居場所の運営において重要となる価値観・思想を深めるために、歴史のある先進的な居場所でスタッフ体験を行なう。
《結果》
① コロナ禍で一時的に利用者が減少したものの、年度後半にかけて巻き返し、過去最高の登録者数を更新した。
② コロナ禍のため、関係機関が集う場を設定することはできなかったため、前年度同様に個別に関係機関を訪問し、事業の周知、つなぎ方に関する意見交換を行った。適応指導センターとは、初めて卒業生をふれあい広場サテライトにつなぐための説明会を開催することができた。
③ コロナ禍により他団体の視察は不可能だったため、外部研修への参加、内部での自前のワークショップなどで代替し、当初の目的は一定程度達成できたと考えている。
2年間の事業の成果と評価
サテライトを設置したことにより、ふれあい広場の登録者は2倍以上になっており、これまでつながれなかった潜在的な対象者に対するアプローチにおいて顕著な効果が見られた。
また、年間の延べ利用者数は前年度の3倍近くに急増。登録者数の増加だけでなく実態としても対象者の居場所として機能し、継続的な関係構築につながった。
登録者の7割近くに対して、登校日数の増加、転学、中退予防、進学、就職などのポジティブな状態変化が見られた。特に義務教育段階では、22%もの登録者に登校日数の増加(全欠から部分登校開始、別室登校から普通登校など)が確認されている。
また、外形的な状況変化がない利用者も、13%はポジティブな行動変化(他者とのコミュニケーション、学習習慣の習得など)が見られており、それも合わせれば全体の8割にポジティブな効果を見出すことができる。
上記のような実績が認められ、部分的にではあるが2021年度より仙台市の施策となることが決定し、当初の目指す姿を達成することができた。
課題および今後の展望
上記の通り仙台市の施策となり、委託事業となったものの、現状では運営費の半額以下の予算であるため、外部から資金調達をしなければならない状況です。そのため、段階的に予算を引き上げ、完全に委託事業として運営できる状態を引き続き目指していきます。
また、委託事業になるに当たって、就労支援、アウトリーチを新たに取り組むことになりました。左記に対応できる人材の確保・育成に注力する必要があります。
さらに、委託事業となったことにより、財政的な安定性は改善された一方で、事業の自主性や利用者視点が弱くなるリスクを抱えることになるため、自治体とは対等なパートナシップを構築することを意識していかなければならないと思っています。
大橋 雄介 さん
NPO 法人せんだい・みやぎ NPO センター理事 公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのばアドバイザー 一般社団法人全国子どもの貧困教育支援団体協議会理事 1980年生まれ。筑波大学卒業。リクルートのグループ企業で組織開発・人材開発のコンサルティングに携わった後、独立。2011年の震災直後にアスイクを立ち上げる。著書に「3・11被災地子ども白書」等。仙台市協働まちづくり推進委員会副委員長などを歴任。日本青年会議所「人間力大賞」会頭特別賞受賞。