助成団体紹介
2020年度活動報告│病気療養する子どもがいる自宅や病室と学校の教室とをICT 活用によって「確実につなぐ」学びの支援事業
一般社団法人日本育療学会
1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。 事業の詳細などは以下からご覧ください。
事業紹介|病気療養する子どもがいる自宅や病室と学校の教室とをICT 活用によって「確実につなぐ」学びの支援事業
事業の目的
病気療養する子どもの教育支援、生活支援、小児看護、小児医療等を研究フィールドとする研究者、教員等によって構成している日本育療学会が学びの支援活動の中心となり、全国特別支援学校病弱教育校長会等と連携して、携帯型モバイルWiFi ルーター等のICT を活用した、病院にある学校の教員による入院療養や在宅療養する子どもへの遠隔授業等の教授学習活動等を確実に行い、継続した学びの支援活動にすることを目的とする。
事業の内容
実施項目①
全国特別支援学校病弱教育校長会等と連携した、病院にある学校のWEB 会議による遠隔授業実施に関するニーズ調査
実施項目②
病院にある学校での携帯型モバイルWiFi ルーター等を活用したWEB 会議による遠隔授業の実施
実施項目③
「病気療養する児童生徒のためのICT 活用による遠隔授業」に関する研修会の実施
結果
実施項目①
日本育療学会会員による本調査に係るプロジェクトチームを編成して、実施項目①に取り組んだ。
全国特別支援学校病弱教育校長会の全面的な協力の下、病弱教育部門が設置されている特別支援学校90校を対象にニーズ調査を実施し、71校から回答を得た(回収率78.9%)。
【調査結果の要約】
(1)既に多くの特別支援学校で遠隔授業が実施されているとともに、実施に至っていない学校の大半でも検討がなされている。
(2)検討している学校の多くは、遠隔授業に必要な機器や通信環境等の基礎的環境整備が必要であることが示された。
(3)遠隔授業の実施や活用できる教員数拡充に向けては、校内手続きの明文化が重要である可能性が示された。
(4) 遠隔授業を実施している学校と検討している学校では遠隔授業の運用による利点や課題の捉え方が異なる可能性が示された。
実施項目②
実施項目①のニーズ調査の結果をもとに、33校の病弱部門のある特別支援学校への携帯型WiFiルータと通信データSIMカードの提供と行った。
各校には、携帯型WiFiルータを用いた遠隔授業の記録を求め、28事例の授業実践記録の報告があった。
実施項目③
「病気療養する児童生徒のためのICT活用による遠隔授業」に関する研修会は、一般社団法人日本育療学会2021年度第2回研修会との合同開催として、2021年7月31日にWeb会議システム「Zoom」を用いて実施した。
研修会への事前参加登録者は188名、実際の参加者は138名であった。正会員の他に、非会員である全国各地の特別支援学校教員約100名の参加があった。
研修会は、実行項目①のニーズ調査に関する報告、及び実行項目②で携帯型モバイルWi-Fiルーターを提供した33校の中から4校の先生方による授業の実践報告であった。その後、登壇者と参加者による口頭での質疑・応答が行われた。また、Zoomのチャット機能を活用し、研修会参加者同士の情報交換などが研修会の時間帯に同時進行で行われ、オンライン研修会でありながらも参加者が主体的に、意欲的に参加できる機会を設けることができた。事後アンケートでは内容に満足した旨の回答が大半であり、参加者にとって意義ある研修会にすることができた。
成果
実施項目①
本ニーズ調査については報告書を作成し、(一社)日本育療学会学会誌「育療」68号に掲載、公表した。 本ニーズ調査結果の一部が、産経新聞(大阪本社)朝刊社会面トップ記事の中でとして掲載された。
実施項目②
病弱部門のある特別支援学校33校に携帯型WiFiルータと通信データSIMを提供したことによって、これまでネットワークインフラの確保ができないことが原因で、遠隔授業を実施することが困難であった学校において、自宅や病室と学校の教室とをつないだ授業が実施され、遠隔授業の促進の一助とすることができた。
実施項目③
本研修会については、実践報告内容も含めた報告書を作成し、(一社)日本育療学会学会誌「育療」70号(2022年3月発行予定)に掲載、公表予定である。
課題および今後の展望
昨今のコロナウイルス対応のよって、学校教育全体においても、急速に遠隔授業の取り組みが行われるようになった。
本活動助成の成果と併せて、このことを追い風として、コロナウイルス感染拡大以前はあまり取り組まれてこなかった、入院や自宅療養する子どもへの遠隔授業の実践が、より一層多くの学校で行われるよう、(一社)日本育療学会の社会貢献事業として、継続した支援となるように、関係機関との協力体制を整えていきたいと考えている。
京都女子大学発達教育学部 教授・京都教育大学大学院連合教職実践研究科 教授
滝川 国芳さん
2019年4月 - 現在 京都女子大学 発達教育学部教育学科 教授
2019年4月 - 2021年3月 京都教育大学大学院 連合教職実践研究科 教授
2013年4月 - 2019年3月 東洋大学 文学部教育学科/大学院文学研究科 教授
2008年4月 - 2013年3月 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 総括研究員
2007年4月 - 2008年3月 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 主任研究員