助成団体紹介
【助成先訪問】Wonder Art Productionの仙台の拠点〈ワンダーアートスタジオ〉を訪問しました
Wonder Art Production
「2021年度重い病気を抱える子どもの学び支援活動助成」の助成団体である、Wonder Art Productionの仙台の拠点〈ワンダーアートスタジオ〉を訪問し、代表の高橋さん、スタッフの鈴木さん、菊田さんにお話を伺いました。
Wonder Art Productionの助成事業
「全国と世界の病院をつなぎ、子どもたちの創造力と表現力を豊かに育む学びと交流支援事業」として、想像力と表現力を促す創作と学習プログラムの開発と提供し、作品を通じた患児同士の心の交流支援を行っています。
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ワンダーアートスタジオ スタジオでの活動 ARTS for HOPEの10 年の活動を振り返る「希望へつなぐアート」
ワンダーアートスタジオ
2016年に仙台にアートスタジオを開設し、障がいのある子どもたちのアートクラスをスタートし、2020年6月に現在の場所に移転しました。土地勘のある高橋さんがこのあたりを通った時に、元印刷会社だった使われていない4階建てのビルに目を付け、交渉の末、安価でおかりすることができ、自分たちで掃除、改造してオープンしたそうです。
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スタジオ内はアートであふれています。
1階:入口に写真スペースがあり、子どもたちが作品を作る様子が見られます。焼き物を作る窯も設置されています。
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2階の大きなスペースでアート教室を行います。保護者の待合室や展示作品を飾った部屋もあります。ここに来るまでの階段もトイレのドアも子どもたちの作品でいっぱいです。
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3階:ギャラリースペース
現在は東北支援のARTS for HOPEの10 年の活動を振り返る「希望へつなぐアート」が展示されていました。
※万一、画像から動画が視聴できない場合は、こちらのURLからお試しください。
4階:倉庫
まだまだスペースがあり、これから改造を続けていくそうです。
スタジオでの活動
2016年から開催している教室は、現在、子どもコースは(小1~中3)31名、大人コースは(高1~)8名で、週1回金、土、日で開催しています。
最初は3か月のコースで始めましたが、やはり1年は必要と今の形になったそうです。また中学生までが対象でしたが、希望者が多く大人コースができました。
子どもは県内6か所の支援学校や支援学級など20校くらいから参加しています。
言葉を発することがない子どももいて、保護者の方もコミュニケーションが難しいといった悩みをお持ちです。「できることを探してあげたい」「障がい者就労は同じ作業のくりかえし。プライベートを充実させてあげたい」といった希望をアートという表現で叶えています。
集団の授業でカリキュラムはありますが、一人ひとりの「やりたい!」に合わせて並走しながら作品を完成させていくそうです。
ARTS for HOPEの10 年の活動を振り返る「希望へつなぐアート」
2021年1月から、震災から10年間のARTS for HOPEの活動を振り返る展覧会を、岩手県、宮城県、岩手県で複数回開催しました。その展示をワンダーアートスタジオの3階に再現しています。
震災当初は、避難所でのアート教室を展開。皆が上を向けるように、シャボン玉を思いきり飛ばすことなどをしたそうです。最初は暗い色使いしかできなかった子どもたちが、それをきっかけにたくさんの色を取り戻したということです。
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2年ほど経ったとき、支援学校や放課後デイなど、同じ時期に障がいのある子どもの支援者から問い合わせがきました。子どもたちのストレスやトラウマを、なんとか軽減することはできないだろうかと。高橋さんは障がいのある子どもは二の次になっていることを感じ、すぐに子どもたちに会いに向かいました。それがのちのアートスタジオにつながります。
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2,3年後からは福島県南相馬市の商店街といった町の復興イベントに参加しました。
5年くらい経つと、被災したこと人々のことが忘れ去られる「風化」が問題となり、仙台駅、盛岡駅、上野駅などのコンコースでイベントを展開。川崎のミュージアムなどにも招待されました。
2016年から、障がいのある子どもを対象にしたアート支援を本格的に開始。
そして2021年、10年間を振り返る展示を行いました。その展示を引き継いでいるこのギャラリーに、近々地域の小学生が学びに来ることになったそうです。
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明るく弾むように説明してくださる高橋さんと見守る鈴木さん、菊田さんの息がぴったりで、とにかく気持ちの良い時間を過ごさせていただきました。
きっと大変なことも多いと思いますが、皆様のお力で乗り切っていかれると感じました。この後は、オンラインのワークショップに挑戦されることになっています。大変楽しみにしています。
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お会いした高橋さんは右から2番目、鈴木さんは左から2番目、後列が菊田さん
高橋雅子 さん
美術館のキュレーターを経て1999 年独立。NPO 活動開始。国公立美術館・博物館における子どもの情操教育プログラムの企画実施のほか、病気や障がいによる生きづらさと困難を抱える人たちの心身のリフレッシュやストレスの緩和、コミュニケーションを促進する創作活動を提供の一方、誰もが尊厳を持って前向きに生きられる社会づくりを目指し、医療・福祉施設におけるアートの力を活用した生活環境の改善・心のケア・啓発活動に取り組む。