公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

【助成先訪問】TEDIC事務所と新たな子ども支援拠点を訪問しました

特定非営利活動法人 TEDIC(宮城)

代表 鈴木平さん

経済的困難を抱える子どもの学び支援

3カ年助成の2年目にあたる本年度の前期の活動について、8月よりTEDICの共同代表になられた鈴木平さんにお話を伺うため、子ども支援場所である宮城県石巻市へ訪問しました。オンラインでは何度もお話していましたが、現場に伺うのは今回が初めてでした。


TEDIC事務所前にて 左:共同代表鈴木さん 右:ベネッセこども基金事務局長小松

新体制になり、事業活動の1つである子どもの居場所について、石巻圏内において支援拠点を増やしています。新拠点場所についても実際に訪問させていただきました。


すべての子ども・若者が自分の人生を自分で生きるために 子ども・若者が安心して過ごせる環境を 支援拠点の拡充~1市6町7拠点を目指して スタッフの確保と組織づくり強化に向けて試行錯誤中> 訪問を終えて

すべての子ども・若者が自分の人生を自分で生きるために

子ども・若者に対して、社会的繋がりの希薄化をはじめとする困難に対する予防と対策に関する事業を行い、子ども・若者の健全育成に寄与することを目的に、2011年5月にTEDICは設立されました。
主な事業は以下の通りです。

  • 石巻圏域子ども・若者総合相談センターの運営/宮城県からの受託
  • 石巻市子どもの学習・生活支援事業(トワイライトスペース)/石巻市からの受託
  • 居場所事業(ほっとスペース)/ 自主事業・石巻市からの委託
  • 海と山の学校/自主事業 など

子ども・若者が安心して過ごせる環境を

様々な理由で学校に行けない小~高校生が利用することができる「居場所事業(ほっとスペース)」(自主事業/石巻市からの委託)は、毎週水・金曜日13:00~15:00に運営されています。
大学生のボランティアスタッフと一緒に、勉強したり、ゲームをしたり自由にゆったりと過ごすことができます。

あそび場 別の部屋には勉強する場所もありました

検温後に入室や30分に一度消毒をするなど、コロナ対策はきっちりされています。
現在は市内4か所で、「石巻市子どもの学習・生活支援事業トワイライトスペース)」(石巻市からの受託)が毎週火~金曜日18:00~20:00に運営されています。保護者が仕事で帰りが遅いなど一人で家で過ごす小~高校生を対象に、学習と生活のサポートをしています。

支援拠点の拡充~1市6町7拠点を目指して

平成17年に石巻地域1市6町が合併して今の形になった石巻市。石巻駅前の事務所から各地域へ支援に出向くことは簡単ではありません。相談したい保護者や子どもたちが、事務所に来ることも負担になります。

石巻地域合併協議会サイトから引用


今年6月に河北区、8月に蛇田地区に新たな子ども支援拠点を開設されました。どちらも庭がある一軒家で、夏は花火、秋は芋ほりを子どもたちと楽しんだそうです。

蛇田にある居場所
河北にある居場所

スタッフの確保と組織づくり強化に向けて試行錯誤中

拠点の拡大に伴い、人材確保と組織づくりの強化にも取り組まれています。

地域における急速な子ども・若者支援のニーズ増の一方、支援の担い手に関してとっては財源や人材確保が困難な状況下にあります。支援現場においては組織文化・価値をベースとして一人ひとりが支援内容を適切に判断出来るように団体の理念やバリューなどの共有・浸透が不可欠です。また、特徴的な実践値・経験値は積み重なるものの、スタッフやボランティアが自由に取り出し、活用できる一元化した資料がないことなどを課題に感じられていました。

そこで、ベネッセこども基金の助成をご活用いただき、団体設立から10年間の支援について『「経験知」の見える化事業』をテーマに2020年度から3カ年計画で事業を実施いただいています。

助成事業の詳細はこちら


今年度2年目の活動の一つに、支援制度の概要や支援している子ども・若者一人ひとりの支援の記録などをまとめた『子どもファイル』の作成に着手されています。
団体内のケース会議などで活用し、子どもの状態や今後の支援方針について共通認識を図るとともに、若手スタッフに支援方法のノウハウを伝える機会をつくられています。今年度中に支援している約70名分のファイルを作成される予定です。

また、地域で活動している他団体の子ども支援の経験豊富なスタッフへの業務委託も積極的に実施されていました。例えば、居場所事業に週1回、別の団体のスタッフが入り、子どもと接する中で若手のスタッフへの育成をお願いするというものでした。
大都市のように、人員を確保することが難しい地域では、お互いのリソースを提供しあうことで、地域全体の支援力UPを図られていました。

訪問を終えて

震災からわずか2か月後に設立され、活動開始から10年が経過したTEDICは、支援活動の積み重ねにより、信頼関係や地域のネットワークを生かした事業展開をしっかりと進められていると感じました。
複雑多様化する地域課題を、1つのNPO団体だけですべて解決に向かわせることはできません。地域の協働体制の構築をより強く意識しながら、子ども達を地域で支えていく体制は、石巻だけではなく全国各地でも広がってほしい支援の在り方だと感じました。

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