助成団体紹介
2021活動報告|矯正教育現場等でのアーティストによるワークショップを通じた経済的困難を抱える非行少年等の自立支援活動
特定非営利活動法人芸術家と子どもたち
1年目の助成期間を終え、「矯正教育現場等でのアーティストによるワークショップを通じた経済的困難を抱える非行少年等の自立支援活動」についてご報告いただきました。
事業の詳細などは以下からご覧ください。
採択団体一覧|2021年度<経済的困難を抱える子どもの学び支援活動助成>
自立支援施設への視察・ヒアリング調査のアプローチ オンラインイベント(勉強会)登壇者、参加者の声 アーティストによるワークショップのプログラム開発と抱負 1年間の総括および次年度の取り組み概要と抱負
自立支援施設への視察・ヒアリング調査のアプローチ
少年院については、新型コロナウイルスの影響もあり、いきなり各施設に問い合わせをしたところで、新規団体が入り込むことは難しい(逆効果)だろうという関係者からの意見をもらいました。そこで関係NPOの協力を得ながら、少年院に関わる法務省矯正局の方を紹介していただくという形をとりました。
児童自立支援施設については、初期の段階で2施設に電話やメールで問い合わせを行いましたが、反応が全くなかったこともあり、こちらもまずは、児童自立支援施設関係者(元児童自立支援施設職員)の方との関係構築を行い、その方を通じてのアプローチをしていきました。
オンラインイベント(勉強会)登壇者、参加者の声
■タイトル:『少年院にいる子どもたちの現状と課題を学ぶ』
■実施日時:2021年12月21日(火)19:30〜21:00
■登壇者:中島学(法務省札幌矯正管区長)、山本宏一(法務省矯正局少年矯正課企画官)、新井英夫(体奏家・ダンスアーティスト)
■参加者:教員、アーティスト、少年院関係者など41名(登壇者・スタッフを除く)
■参加者からの声(一部)
- 少年院という場所について、かなり意識的にならないとほとんど情報が入ってこないし、少年犯罪についても、テレビなどで報道される偏った内容しか知らないのが現状です。現場で実際に子どもたちと接している方の思いを聞くことができて、いろいろと気づかされました。大きく、そして根深い問題ですが、出来るのは一人ひとりと向き合うこと、対話をしていくことに尽きるのだと思います。
- 少年院という場所の話だけでなく、不登校の子どもたちなど、生きづらさを抱える10代の子どもたちに共通する話のように聞こえ、大変参考になりました。
- 全部ではないと思いますが、子どもたちが犯罪に向かうことを「社会がそうさせている」部分があるのだということを改めて思いました。それは塀の中に入ってしまって分断されてしまうと、自分とは関係のないところ、社会とは関係のないところの話になってしまいがちです。障害者、貧困と同じ構造な気がしました。
※詳しい内容については、芸術家と子どもたちHPのコラムを参照してください。
■事業への影響
- 勉強会の企画を通して、法務省矯正局にいる登壇者2名と、今回の活動について深く議論することができ、今後の活動展開に向けての強力な協力者を得ることができた。
- 勉強会に京都医療少年院、加古川学園、八街少年院の職員に参加してもらえたことで、広く当団体の活動を施設関係者に知らせることができ、またその後ヒアリングも行うなど、今後の活動の広がりに繋がった。
- 勉強会後、参加者から多くの反響をいただくことができ、この活動に関心をもってくれる方や、賛同者が多くいるということを知ることができた。
- 今後、実際にワークショップをする上で、参考となる下記のような知見をたくさん得ることができた。
◎少年院にいる子たちの実態について
→発達上の課題がある子や被虐待経験がある子の割合が増えており、児童養護施設等の児童福祉施設にいる子どもたちの実態と近いものがある。
◎少年院で実施するアーティスト・ワークショップはどのようなものが望ましいのか?
→一方向的なものではなく、常に応答的なコミュニケーションがあるものなど。
◎少年院で実際に実施したことのあるワークショップの例について
→ことばの貯金箱、ラップづくり、ダンスワークショップなど。
アーティストによるワークショップのプログラム開発と抱負
これまでの関係者とのやり取りを通して得た知見を元に、活動全体に共通するプログラム開発企画書は作成したので、あとは、実際のワークショップ実施施設の職員やアーティストとともに、具体的な内容については詰めていく予定です。少年院や児童自立支援施設にいる子どもたちについて、予めきちんと学びを深めておくことはもちろん、最終的にはワークショップ実施のその日その場で出会った子どもたちとのコミュニケーションを大切にしながら、そこにいる全員で、充実した時間をつくっていきたいです。
1年間の総括および次年度の取り組み概要と抱負
少年院や児童自立支援施設とはほとんど繋がりがない状態から、紆余曲折を経ながら、少しずつ道をつくっていった1年でした。新型コロナウイルスの感染拡大さえなかったらと感じる場面も多々ある中で、たくさんの協力者と出会えたことは、設立以降これまで当団体が着実に構築してきた信頼関係があったからこそ、繋がったご縁であると感じています。この1年の学びや繋がりを活かして、次年度からは実際に少年院や児童自立支援施設の現場に入り、現場の子どもたち、職員たちと共に活動をつくっていきます。新型コロナウイルスの感染拡大もまだ終息していない中ではあるが、確実に実践を積み重ねながら、アーティスト・ワークショップの現場で起きていることについて、協力者の方々と議論を深めていける1年にしていきたいです。
堤 康彦 さん
1965年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。87~97年東京ガス㈱に勤務。99年より独立。現代芸術家を小学校等へ派遣しワークショップ型授業を実践する活動「ASIAS(エイジアス)」をスタート。2001年NPO法人化。03年「アサヒビール芸術賞」受賞。04~16年、「トヨタ 子どもとアーティストの出会い」ディレクター。18年「第12回よみうり子育て応援団大賞」奨励賞受賞(主催:読売新聞社)。19年「第13回未来を強くする子育てプロジェクト」「スミセイ未来賞」受賞(主催:住友生命保険相互会社)。著書に、「子どもたちの想像力を育む アート教育の思想と実践」(共著/佐藤学・今井康雄編)他。