公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

最終活動報告|学習支援教室に来ることができない子どもたちへの訪問型学習支援と学習支援人材育成事業

一般社団法人 栃木県若年者支援機構

経済的困難を抱える子どもの学び支援

2019~2021年度の助成期間を終えられた一般社団法人栃木県若年者支援機構より、3年間の取り組みと成果についてご報告いただきました。

事業目的:
1 家庭訪問型の学習支援活動の開始 来るのを待つのではなく、出向く学習支援を。
主に不登校の小学生、中学生を対象とした訪問型学習支援活動を行う。相談機関やスクールソーシャルワーカーからの依頼を受け保護者の同意のもと、週1回程度自宅を訪問し勉強を行う。訪問を継続し関係性を築くなかで、訪問から教室(寺子屋)での学習に移行したいと希望する子どもがでてくれば、移行もサポートする。

2 学習支援ボランティアの数、質を高めるための研修プログラムの実施
当法人が運営している学習支援サポートセンターとして、学習支援ボランティアスタッフ養成研修を構築する。学習支援スキルだけでなく相談スキルや県内の子ども支援に関わるソーシャルキャピタルについても学び、子どもたちの課題により対応していける人材を増やしていく。

助成事業の概要|訪問型学習支援へのトライアル~仕組みの確立と支援者育成~



拠点まで通えない子どものために、自宅訪問型の学習支援を始めたのが3年前でした。実際に支援をスタートすると、住宅環境などにより自宅で学習することが難しいケースがうかがえ、自宅以外の場所「小さな拠点」でも支援を検討し始めました。本助成では直接助成はしていませんが、最終年度には、地元団体、ボランティア、公共施設と連携して中距離の訪問支援の実施の可能性につなげられたことは大きな実りだったと思います。
状況に合わせて最善の方法を考える一般社団法人栃木県若年者支援機構の今後の活動に注目し続けたいと思います。



1年目の活動内容と結果 2年目の活動内容と結果 3年目の活動内容と目指す状態 3年目の結果 課題および今後の展望

1年目の活動内容と結果

活動内容 
① 訪問型学習支援活動を定期運営するための仕組みの確立とモデル活動実施
週1回の訪問を60-90分の活動をボランティアの皆さんとともに実施できるよう内容、仕組み、広報等について委員会も結成し再検討のうえ構築した。
② 学習支援ボランティア養成研修・プログラム確立・研修の実施

結果 
① 訪問型学習支援活動の実施
利用者4名に対して78回の訪問学習を実施した。また、2名のボランティアが参加して運営した。
② 訪問型学習支援ボランティア研修を実施。11名が参加 現場マッチングまでには至らなかった。

SSWやキャリアコンサルタント、子どもを対象にプログラムを実施する専門家などを講師に招き、様々な視点からの研修を実施することができた。

学習支援の様子

2年目の活動内容と結果

活動内容 
① 訪問型学習支援活動の実施と発展
1年目にモデル的に実施した訪問型学習を継続発展させていく。新たな子どもたちにも情報を届けることができるように、情報発信を強化。
② 学習支援ボランティア養成研修
 学習支援ボランティア養成研修を、大学生、社会人向けに分けて実施する。

結果 
① 訪問型学習支援の利用者は13人、訪問回数は延べ253回で、目標を上回ることができた。子どものケース会議は必要となったタイミングで実施、4回行った。SSWや学校関係者、行政担当者との連携により、訪問時に限らず、子どもの学びをどうサポートするか方針や内容を共有・相談しながら進めることができた
② ボランティア説明会への参加者は27人で、学習支援につながったボランティアは7割~8割、うち訪問支援の研修に参加してくれた方は6人、研修後に訪問学習支援ボランティアへつながったのは2人であった。

SDGsカードゲームで考える子どもの貧困

3年目の活動内容と目指す状態

① この2年間続けてきた訪問型学習支援を継続する。
本助成をうけて、訪問型学習支援の基盤をつくることができた。これを継続していくことで、訪問による学習支援が必要な子どもたちへの支援を継続していく。また、実践からの学びが今後の事業を検討していくうえで最も学びがあるということも改めて実感。団体としての経験値を高めるためにも継続して取り組んでいく。

② この2年間の新たな学びとして得た経験をいかして、事業を改善、発展させる。
家に入ることができない(いわゆるゴミ屋敷等の理由)、または、保護者がいつも家にいて、訪問時間中も子どもから離れず、保護者ばかりが話してしまうなどの理由により家で学習することが困難な子どもたちへの対応が必要。送迎などは難しいが、家の近くであれば子どもが自分で歩いて外に出てこれるケースにおいては、家の近所に学びの場をつくることが重要。
→ 地元団体、ボランティア、公共施設と連携しての小さな学びの拠点づくりを行い、そこに、ボランティアが訪問する、中距離の訪問支援の実施。

3年目の結果

目標以上の訪問学習支援活動を実施することができた。
コロナ禍でも、工夫をして継続して実施することができた。
その試行錯誤の中で、3年目、他団体との連携をスタートできたので、事業の継続や広がりをつくることができた。
特に、家庭の事情で訪問しても家に入ることが難しい、家だと保護者の干渉が強く勉強ができないなどといった家での学びが難しい子どもたちに対して、その地域のNPOと連携して、学びのスペースを作ることができたことは今後の大きな方向性の一つになると考える。こうした子どもの学びを支える小さな拠点を増やしていく事で、学習支援員が家に上がることができなくても、近くまで訪問し一緒に勉強という形が作れる。

本プログラムにおいても、具体例として、小さな町に暮らす家庭の保護者から訪問型学習支援活動の依頼が入り、実際お話を伺うと、アパートで母、子ども3人で生活し、勉強スペースもなく、さらに一番下の子どもはまだ1歳で泣き出したりと集中して勉強することが難しい環境であった。そこで、その家から徒歩で通えるところにあるNPOに協力依頼を出し、週1日90分程度事務所内のスペースをお借りすることができた。それにより毎週そのNPOの建物を利用し、学習支援員が訪問し勉強することができるようになった。そのNPOが居場所にもなり、時に一緒にご飯を食べたりというつながりが子どもたちと出来た。直接子ども支援に取り組んでいる団体でなくても、子どもを大切に思う団体は多いので、そういう団体と手を繋いでいくことで展開できる。

また、子ども食堂運営団体も学習支援の認識が高まってきているが、学習を見れる人がいない、という悩みも聞く。地域のこども食堂へ訪問し学習を行うといった形も今後広がると考えている。

セミナー 子ども×貧困×学習

課題および今後の展望

訪問型学習支援の継続 コロナ禍で実施が難しい時期もあったが、その経験も踏まえ、今後も継続して訪問型学習支援活動を実施していく。そのために必要となるボランティアの確保や研修についても本事業で得た経験やつながりをいかし、実施しながら安定運営ができるようにしていく。 小さな学びの拠点づくり この取り組みも他の団体と協力をしながら継続をしていく。それに加えて、子ども食堂で学習支援もプログラムとして始めたいところなども増えているので、そうした子ども食堂で学びたい子どもたちにスタッフ・ボランティアが訪問して学習を行えるような仕組みも広げていく。



一般社団法人 栃木県若年者支援機構

学習支援コーディネートスタッフ

吉井 久乃 さん

困窮家庭の子どもたちなどを対象とした学習支援プログラムを担当しています。
また、2020年度より「みんなが安心できる暮らしを社会全体で支える」ことをテーマにしたネットワークの構築事業が始まり、その全体コーディネートも担当しています。

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