助成団体紹介
最終活動報告|実践から学ぶ〜ケースワーク・ソーシャルワーク研修〜
特定非営利活動法人 寺子屋方丈舎
2019~2021年度の助成期間を終えられた特定非営利活動法人 寺子屋方丈舎より、3年間の取り組みと成果についてご報告いただきました。
事業目的
① ボランティア・スタッフの人材育成
② ケースワーク・ソーシャルワーク研修→現場でのワーカーを養成してゆく
助成団体紹介 2019活動報告|SchoolTaktを使った人材育成
3年間様々な形での人材育成をされてきました。今後も地域に根ざした活動を続けていただき、できればその知見をより多くの方々に公開いただけるよう期待しております。
ケースワーク・ソーシャルワークを現場で学ぶ意義 関係機関との連携から学ぶ 親の会から学ぶ 2021年度の活動について
ケースワーク・ソーシャルワークを現場で学ぶ意義
ケースワークとは、なんらかの困難を抱えた対象が自立的に生きてゆくための支援を意味します。当団体における【対象】とは、不登校により居場所や学びの場が失われ、生きづらさを抱えるこどもと家族を指しています。しかし、同じ人間が存在しないように、生きづらさの原因もまた多様です。だからこそ、不登校対応とそれにまつわるソーシャルワークにおいては、普遍的な知識の吸収だけでは対応に限界があると言えます。
しかしながら、なんの知見も無しに場当たりでケースワークを重ねてしまうと、スタッフの中での対象者への「対応の軸」は育たず、結果として対象者に自立的な生活をもたらすことは困難です。つまり、不登校支援に関わるスタッフには、対象に応じた柔軟性・想像力と、全対象に通じる軸の双方が必要であると考えています。
その意味で、現場での実践と振り返りのサイクルを循環させることは、不登校の普遍性や共通した困難を学び取りつつ、個別の多様なケースに応じた対応検討において多くの想像力を働かせることができる手法です。一貫した軸と柔軟な思考を両立させられる。それが、ケースワークを現場で学ぶ意義では無いかと思います。
関係機関との連携から学ぶ
本年度は、こどもや保護者が抱える問題に行政や学校・福祉事業所・病院等の関係機関と連携して当たるためのケース会議が盛んに開催されました。ケース会議にて各関係機関の役割を考える際には、こどもや保護者に関わる機会の多い私たちが情報・意見を発信することが重要であると考えています。
そこで、毎週の振り返りは、以下のような様子で実施しています。
①こどもや保護者の状況を自身で整理する②その状況に対しての自身の働きかけを振り返る③働きかけの結果を整理する④働きかけと結果についてスタッフ同士または協力者からのフィードバックを行う
関係機関を含めた支援を上記の方法で振り返ることで、今後対象者にとって必要な支援の全容を考えることができる上に、その中で団体・スタッフにできること(=役割)が明確化され、ケースワークを行うスタッフ本人に落とし込まれます。それにより、関係機関との連携において意見を発信できる、自立したケースワーカーの育成を目指すことができると考えています。
スタッフ一人ひとりのケースワークの力を育むためには、一方的な指示のもと動くのではなく、自身の行動を自身で振り返りながら主体的に学ぶ機会が欠かせません。その意味で、関係機関との連携からは「必要な支援は何か」というマクロな視点とともに「自分自身にできることは何か」というミクロな視点を学びとることができ、さらなる実践につなげることが可能です。
親の会から学ぶ
不登校のこどものケースには、保護者の認知も大きく関わります。こどもを心配に思う気持ちはあっても不登校を受け入れられない、不登校のこどもとどう接すればいいのか...等、保護者の悩みは多様であり、それが親とこども双方の生きづらさにもつながります。よって、そのような悩みに寄り添い、新たな視点を拓くための働きかけを行うことも重要なケースワークの一つです。そこで、当団体では毎月一回の頻度で親の会を開催しており、そこでも多くの学びが生まれます。
親の会については①どのように保護者の気持ちを引き出し、受けとめるか②どのように保護者同士での学び合いを生むか、という点を深める必要があります。この2点について、振り返りにて状況・働きかけ・結果を整理しフィードバックを行うことにより、ケースワークの力を育むことが可能です。
親の会の実践とその振り返りの繰り返しを通し、保護者との寄り添い方を学ぶほか、実際に意見や気持ちを可視化するワーク形式を導入し、保護者が気持ちを出しやすくなったり、保護者同士のフィードバックが盛んになるなどの効果が生まれています。
結果「こどもが学校に行かなくなったとき、この世の終わりかと思った。でも、親の会で他の保護者や体験者からいろんな体験を聞けて、更にモヤモヤしている気持ちを聞いてもらえて、今は私自身が安心している。なんだかこどもも変わってきたみたい」「似たような状況で、辛いと思っている人や悩んでいる人がいたら、大丈夫だよと伝えたい。」という感想をいただいています。保護者同士の学び合いから、スタッフも保護者の気持ちやその整理の方法、認知の広め方を学び、それが日常のケース相談にも活きています。
2021年度の活動について
現在は短いスパンでの振り返りを繰り返し、学びを高めていますが、それだけでは過去に一度得た学びが時とともに失われてしまいかねません。よって、2021年度の活動においては、上記の学びから得られた成果や振り返りを通して見えた規則性等を言語化することで、これまでで得られたスタッフの気づきを俯瞰して見直してゆきたいです。そのことでスタッフの相談能力の向上がなされればこそ、一連の活動の大きな成果と言えると考えています。
ただし、フリースクールも今ある施設を活用してどんな日中活動ができるかについては色々な試行錯誤を経て、この場にあった活動がイメージできるようになりました。
対象についても、当初は不登校になった外国籍児童生徒と考えていたが、本来高校に行く年代で家で過ごしているオーバーエイジの居場所や高校進学支援のニーズに多く接することにより、そうした人たちへの支援に目標を設定することができました。
鈴木 篤さん
千葉で生まれて、震災後東北で、こども支援の活動をしています。 こどもたちと一緒に活動して、お互いに学び合うことを大事にしています。今回はスタッフの育成やスクールタクトを使った学習の仕組みづくりを行なっています。 誰もが元気になれる場作り実践中!