助成団体紹介
2021活動報告|GIGAスクール構想と組み合わせた病気を抱える児童生徒の地域連携支援
認定NPO法人 ポケットサポート
2021年度の1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2021年事業紹介|GIGAスクール構想と組み合わせた病気を抱える児童生徒の地域連携支援
採択団体一覧|2021年度<重い病気を抱える子どもの学び支援活動助成>
事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望
事業の目的
①文部科学省GIGAスクール構想と組み合わせたオンライン支援モデル構築
新型コロナウイルス感染症の拡大により導入が前倒しされたGIGAスクール構想(児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想)と、ポケットサポートの設備や人材・ノウハウ・地域支援ネットワーク等を組み合わせることで、入院治療中の子どもたちの学びを止めず、学ぶ権利を保障していく。
②多職種連携による地域支援ネットワークづくり
アンケート回答返信封筒の消印集荷エリアから岡山・倉敷・津山の3地域において病気を抱える子どもたちに関する支援の必要性など意識の高い教職員が集中していると分析した。また、アンケート集計速報値で当団体の認知度は12%、岡山県教育委員会の長期療養児教育サポート相談窓口の認知度は18%となっている。地域支援ネットワークづくりにおいて認知度アップと同時に効果を最大化するため、3地域に絞って各地域にある病院の医師や看護師・保健所等と一緒にネットワークづくりを行う。
事業の内容
事業①
新たな試みとして子どもたちが前後左右にiPadを操作できるドリー型ロボット(KeiganMotor)の開発・研究調査を行い、オンラインでの交流や学習支援、入院中の学校行事参加など、他地域の支援団体にもロボット貸出を行いながら、改良、課題や改善点を分析する。
テレビ電話を活用した双方向WEB学習支援だけでなく、NPO法人eboard(埼玉県)とも協力体制を強化し、いつでも小学校から中学校までの単元別動画を視聴して学ぶことができる体制を構築する。オンデマンド型動画やMicrosoft Teamsによる非同期型の学習支援では理解できなかった問題や同世代との交流・ピアサポート相談を行うためには、テレビ電話を使った同期型の学習を取り入れるなど同期型と非同期型を組み合わせた柔軟で新しい学習環境構築を目指す。
法人の取り組みを1人でも多くの病気を抱える子どもたち(小学生~高校生)の支援につなげると同時に、岡山モデルとして全国に発信していく。
事業②
岡山地域は国立岡山医療センター小児科の樋口先生、倉敷地域は倉敷中央病院小児科の納富先生、津山地域は岡山県難病相談支援センター等と連携してオンライン開催する。小学生から高校生まで幅広い支援事例等を共有すると同時に、地域資源(病院や学校、保健所、支援NPO等)への相談先認知を高める。イベントは事前参加申込制とすることで、名前・メールアドレス等を収集して他地域のイベント開催案内や、当団体の支援メニューをメールマガジンにて情報共有することにつなげる。さらに、イベント当日の配信内容は録画を行い、参加できなかった場合もYouTubeにて一部をアーカイブ視聴できるようにする。
事業の結果
事業①
年間を通してzoomで打ち合わせを行うなど、NPO法人eboardと連携体制は構築したが、今年度は利用に関して対象者がおらず、学習支援そのものの実施には至らなかった。打ち合わせの際、NPO法人eboardが抱えていた課題に対し、病弱児支援の視点が活かせることがわかるなど、法人同士の連携の意味を見出すことができた。年間を通して遠隔授業の補助として使用できる、ドリー型ロボット・首振り型ロボットの試作、体験モニター、開発フィードバックを行った。
事業②
病気の子どもに携わる多職種が連携するための勉強会「子どもたちに生きる力を!私たちに今できること」と題し、全3回のYouTubeライブ配信により実施した。第3回については、当初の予定から変更を行い、病院内学級の担任教諭と、先天性疾患の当事者の方にご登壇いただいた。
第1回 8月7日(土)「入院中の支援や、退院後の復学支援について」講師:岡山医療センター小児科樋口洋介先生 参加者:196名
第2回10月23日(土)「入院や連携が必要な小児がんの子どもたちについて」講師:倉敷中央病院 納富誠司郎先生 参加者:130名
第3回1月29日(土)「当事者目線で考えてみよう」講師:①倉敷市立庄中学校(川崎医科大学附属病院 院内学級 中学部)難波真先生②先天性心疾患当事者 古賀充容さん 参加者:143名
多職種連携の案内については、当法人のメールマガジン登録者だけでなくPRTIMESを通じても行った。PRTIMESに全3回掲載した内容については、イベントの案内、首振りロボットの完成について、オンライン授業についての多職種連携に関する課題。
事業の成果
事業①
試作したロボットは全国の病弱児支援団体から愛媛県の認定NPO法人ラ・ファミリエ、北海道の勇者の会をピックアップし、2団体に体験モニターとして協力いただき、開発のフィードバックを行うことができた。ロボット試作の体験モニターを通して、団体間の認知向上と連携を深めることもできた。
当団体スタッフで肢体不自由の難病患者が試用しフィードバックを行う事で、当事者目線の開発を行う事ができた。今まで入れなかった事務所2階の部屋での業務に参加することができた。
NPO法人eboardが授業の動画の中で出している字幕は聴覚障害者だけでなく、病室で勉強を行う際に他の患者さんへ迷惑がかかるという課題に対しても有効という視点を示し、字幕の有効性の幅が広がった。
事業②
実際の病院で行われている復学支援について、ポケットサポートとの連携事例、院内学級の様子など現場感のある内容、先生の質問に対する的確な答えなど、アンケート集計結果からも満足度の高い内容となった。すべての回でライブチャットによる質問にも回答を行い、チャット内でも全国各地からの参加による院内学級や支援学校の教員などをはじめとする学校関係者、その他有識者や当事者などが活発に意見交換を行う様子が見られた。YouTubeのアーカイブ視聴回数は5月中旬時点で全3回の合計約1400回再生。
PRTIMESを見た地元紙、山陽新聞の取材につながり、県内各地へ病弱児に関する支援拡充を目的とした情報発信を実施することができた。
自己評価
事業①
当初はGIGAスクール構想により岡山県内で主に使用されているchromebookに対応したロボットの開発・試作を検討していたが、各学校のネットワークや端末のセキュリティなどの課題が残り、今年度の開発ではiPadとzoomを使用した首振りタイプを貸し出しできる状態まで構築することができた。また、本事業の取組を通して、入院中の高校生の遠隔授業の補助についての知見を多く得ることができた。実際に、高校生の遠隔授業参加も進み、県内での事業成果が得られることとなった。ロボット試作について地元紙からの関心や、地元企業からの開発応援などにもつながり、病弱児支援の拡充につながった。
事業②
全3回の勉強会を通して、県内外の病弱児の多職種連携の強化につながった。当初の予定として岡山県難病相談支援センターの担当者の登壇を予定していたが、当事者に変更したことにより予想外の反響を得ることができた。特に先天性疾患の当事者の講演については、県内の大学の教育学部特別支援教育学科の講義でも使用されるなど、今後の特別支援教育を担う学生たちへのひとつの知見として使用して頂ける成果を得ることができた。PRTIMESによる広報で県内の認知も広がり、同時に全国からの注目も得ることができた。
課題および今後の展望
現在の法人の課題として、新たな病弱児支援の対象者と出会いづらいという状況がある。相談から支援へつながる場合もあるが、関係性の構築や支援の継続など新たな課題が生まれてきている。事業①に関しても本事業に関しての対象者が年間を通していなかったこともその課題と言える。
YouTube配信の中で全国の院内学級の先生方のネットワークが欲しいという声も上がっていた。活動する地域での連携強化のほかにも、多職種連携の垣根を超えた全国的な病弱児支援者のつながりにも今後、目を向けていきたい。
三好 祐也 さん
5歳で慢性のネフローゼ症候群を発症。義務教育のほとんどを病院で過ごす 岡山大学経済学部卒業 岡山大学大学院保健学研究科修士課程修了 研究テーマ:病弱教育、院内学級 自身の経験を通じて10年以上にわたり、病弱児の学習・復学などの自立支援と環境理解のための講演活動を行う。講演は学会や大学、小・中学校、福祉関係など多岐にわたっている。