公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2021活動報告|医療的ケア児と家族のためのホームスクールプロジェクト!

公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。感染症の再びの蔓延のため一部の事業を見直し、2022年度に延長して実施しました。事業の詳細などは以下からご覧ください。



2021年事業紹介|医療的ケア児と家族の為のホームスクールプロジェクト!

採択団体一覧|2021年度<重い病気を抱える子どもの学び支援活動助成>



事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

NICUを退院し、在宅ケアを受けている医療的ケア児の内、制度等で発達支援や包括的支援を受けることができていない医療的ケア児や保育園等に入園する権利を奪われている医療的ケア児の家庭を訪問し、母やきょうだい児と一緒に、発達に必要な遊びの提供、感覚発達を促す身体表現、五感を刺激していく表現活動、発語に繋がる言語トレーニング、ICTを使った学びの場の提供などをしていく、「医療的ケア児と家族の為のホームスクールプロジェクト!」を実施する。
当事者の病状や家庭環境、理解度、医療的ケア度などから、各人、各家庭の学びマップを作成し、それらの情報を医療者や理学療法士、保健師、行政とも共有し、将来の地域包括サービスや就園、就学にも活かせるようにしていく。
また、立地的に訪問が可能な家族同士での交流も積極的に行い、ゴールとしては対象家族を一同に集めて各家庭のホームスクールの発表を行い、医療的ケア児同士の交流とともに、地域における医療的ケア児への理解も深めていくことを目的とする。

事業の内容

① 医療的ケア児への訪問型スクールの実施
対象:東京都内の医療的ケア児とその家族
内容:月に平均2回、発達を促す身体運動、五感を使った表現活動、発語を促す言語トレーニング、タブレットを使った知育支援、支援アプリを使ったコミュニケーション活動等を図る為に、家庭に個別訪問をし、兄弟児、親を含めた活動を実施した。
規模:各家庭への個別訪問 東京都内12家族
(訪問看護ステーションの利用者さん4家族、法人の活動に参加した家族6家族、新規の家族2家族)
実施時期:2021年5月~2022年9月


② 医療的ケア児家族の保育園等見学会実施
対象:東京都内の医療的ケア児と保護者
内容:医療的ケア児が就園可能な保育園や小学校への見学会(個別)に実施し、就園、就学に繋がるようなお手伝いを実施した。予定では、地域との交流の場も作りたかったが、コロナの影響で、個別対応が多くなった。
規模:対象児の近隣の保育園、幼稚園、小学校等
実施時期:2021年6月~2022年9月


③ 訪問看護の病児と家族と地域の交流の場「はるマルシェ」の実施
対象:東京都内の医療的ケア児と家族、行政関係者、医療者、医療福祉関係者、一般市民等
内容:ホームスクールで実施したアート作品展示、写真展示、ネイルやマッサージをしながらの対話(ピアサポート)、楽器を使った音楽体験、きょうだい児コーナー(おもちゃフリマ)、両親の為のヨガ、手足版画による絵画と詩の作品作りなどを、マルシェ形式で実施し、好きな時間に参加できる形態のマルシェを実施した。
実施日:2023年11月13日(日)アーツ千代田3331にて 13:00~16:00

事業の結果

① 医療的ケア児への訪問型スクールの実施
回数:各家族平均月2回、のべ訪問数 273回

② 医療的ケア児家族の保育園等見学会実施
回数:各対象家族数回の訪問と同行 15家族21案件

④ 訪問看護の病児と家族と地域の交流の場「はるマルシェ」の実施
規模:82名 一部Zoomで配信 13名 合計95名

ホームスクール訪問の様子。絵本遊びを楽しんでいる病児と妹。(妹はまだ字が読めないが、兄に絵本を見せる係を担い、スタッフがページに合わせて声を出したり、音を出したりしている)
「まるマルシェ」の様子。医療的ケア児の母が担当。ケアの子育て時代のケアノートを見てもらったり、話を聞きながら、ネイルケアをした。写真は、子どもにかわいい絵のネイルをしてあげているところ。
「マルシェ」の中で、医療的ケア児も兄弟児も、一般の児童も一緒になって、音楽遊びをしている様子。病気のありなしに関係なく、乳児の時から、本物の良い音に触れること、五感を刺激することが大事。
「マルシェ」では、ホームスクール事業の中で描いたアート作品を展示した。多くの人の目に留まったことが、本人も家族もとても嬉しい様子だった。
きょうだい児の為のコーナーとして設置した「子どもフリマ」。価格設定や並べ方なども、子どもたちに任せ、きょうだい児が主役になれる場とした。

事業の成果

① 病児だけでなく、家族全員(特にきょうだい児)とともに一緒に活動をすることで、家族全員の共通の話題や楽しみができたり、様々な体験を通して保護者が、病児や兄弟児の表現を客観的に見ることで、子どもたちの可能性や、日常での療育的な視点を持つこと、簡単な遊びを家族で日常に意識的に行うことでも病児の成長に大きく寄与することなどを理解し、今後のより良い豊かな時間を作り出す契機となった。

②これまで、一人で保育園等の見学や問い合わせができなかったり、入園拒否で否定的になってしまっていた母たちが、同行者がいることで安心して、自身の復職を諦めることなく、前向きに取り組むことができるようになった。また、受け入れを検討する園側も、看護師からの適切な医療的ケアに関する説明やアドバイスを受けることで、病児の受け入れに対して、積極的な姿勢となった。

③気軽に参加できるマルシェの開催で、普段あまり外に一緒に出かけない父たちの参加も多く、家族全員で病児を含めた育児の環境を考えることに繋がったり、医療的ケア児への理解を深める展示や話で、一般の方の共感を得ることに繋がったり、病児の母の参画により、自身の経験を他の人の為に役立てる契機になったりと、多様な関わりの形態が歓びと発見を生み出す結果となった。

自己評価

①当法人がこれまで実施してきた、家族全員の旅行という非日常の経験のみならず、日常の活動でも、家族全員での関わりが、家族全員にとって有益であることが実証できた。また、本事業により、これまで見えて来ていなかった、医療的ケア児への療育への視点、可能性を発見できたことは非常に大きな成果であり、この経験により、「居宅訪問型児童発達支援事業」を立ち上げた。

②保育園や小学校見学に限らず、母たちが一人で動くことには、勇気が必要であったり、交渉が難しかったりすることが多い。そのような中で、誰か、中立の人間が間に入り、見学や交渉も同行者がいることで、困難に思えていたことも具現化し、成功体験を作ることが母たちの勇気に繋がった。また、当法人にとっても良い経験になり、需要があることも理解できた為、「保育所等訪問事業」の事業化への目途が立った。

マルシェ開催に至るまでの準備を含め、当法人のスタッフにとっても、良き体験の積み重ねと外部の人たちとの交渉力も養うことが叶ったことは、大きい成果であった。また、病児の母の自身の経験を生かした役割を設定することで、今後の新たな活動のきっかけを見出すことも可能となった。

課題および今後の展望

①医療的ケア児への訪問としての事業化は叶ったが、それはあくまでも、対象者の地域が限定されることと、対象者が病児のみとなってしまう為、家族全員で活動の良さを活かす為に、また別の形で家庭訪問ができるように組んでいく必要があり、支援活動としての位置づけで検討中である。

②保育所等訪問事業は、小学校への就学支援も含まれるが、対象となる区によって、行政の対応がまちまちであることや、学校における看護師の配置がない地域などもある為、並行して、対象になる病児ではなくても、同行での園や学校見学、調整を続けていくこと、また、学校看護師等との連携を図っていくことで、より情報交換がしやすくなる体制を作ることなどが課題となっている。まずは、中央区での関わりがスムーズにいくよう、地域担当者とも連携を図っている。

今後、定期的に本事業で実施したような、「マルシェ」を開催していき、医療的ケア児同士だけでなく、広く多くの人たちとの関わりを持つことや、子どもたちの発表の場とすること、母たちの能力を発揮できる場を提供していかれるように、次年度での開催の準備を始めている。今後は、公益法人の支援活動の一環として実施していく予定である。

公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を

代表理事

大住力 さん

東京ディズニーランド等を管理・運営する㈱オリエンタルランドに入社し、約20 年間、人材教育、東京ディズニーシー、イクスピアリなどのプロジェクトの立ち上げや運営、マネジメントに携わる。現在は、難病と闘う子どもとその家族の応援を目的とした公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を代表。「"いま" を生きる」、をテーマに、難病と闘う子どもと家族への応援と共に、誰でもが持っている「底力(ソコリキ)」を応援するべく、教育現場から、刑務所、企業等幅広い講演活動を行う。

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