公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2022活動報告|多職種連携での支援事例を伝え広めるWEBアウトリーチ事業

認定特定非営利活動法人ポケットサポート

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。



2022年事業紹介|多職種連携での支援事例を伝え広めるWEBアウトリーチ事業



事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

(1) 地域の多職種と連携して取り組む支援事例蓄積
・多要素認証(USBキー)の導入により、さらなるセキュリティ向上や個人情報保護を徹底しながら、個別の相談事例や支援事例を蓄積すると同時に、これまで以上に多職種が連携して地域で暮らす子どもと家族を支える岡山モデルを構築していく。

・2020年度のアンケート調査やPR TIMESによるメディア露出により、当団体の認知度がアップしており、岡山市外からの問い合わせも増えてきている。これらを踏まえて、岡山市だけではなく岡山県下全域や全国規模での支援ネットワーク拡充を進めていく。

(2) 支援対象者へのWEBアウトリーチと支援事例の情報発信
・幅広い支援対象者へ情報を届けるためにキーワード検索連動型広告により、「難病 子ども」「小児 白血病」「小児がん 復学支援」などのキーワードで検索した際に当団体の事例や相談窓口を紹介するWEBページを検索結果の上位に表示させることで、積極的にアウトリーチを行い、当団体とつながるきっかけを作る。

・蓄積された支援事例を学校現場の先生方に向けてお役立ち情報(ホワイトペーパー)として事例別にPDFでまとめ、WEBサイトに申込制ダウンロードにて公開する。また、岡山県内の小学校から高等学校および特別支援学校へは印刷したものを郵送し、返信ハガキにてホワイトペーパーの評価や今後の課題等を情報収集する。

事業の内容

(1)地域の多職種と連携して取り組む支援事例蓄積
当団体が関わるすべての子どもたちの情報を「Salesforce」(情報共有ツール)に集約していき、いつ・どこで・誰が・どんな支援を提供したか、保護者からの相談内容、保護者とのメールのやり取り、医療機関や学校教員との打ち合わせ内容、当団体の交流イベント等への参加状況などを紐づけていく。これらの個人情報保護レベルの高い情報を機密性を維持しながら、職員間だけでなく岡山市保健所や岡山県教育委員会と情報共有するためにパスワードと新たにUSBキーを導入して、セキュリティ向上を図りながら多職種連携での支援の質も向上させた事例を蓄積する。

蓄積された日々の支援記録データは、医療と教育を横断して支援対象者を継続的に支える岡山モデル構築には必要不可欠な情報資産となる。また、学生ボランティアが関わった活動では、学生目線での子どもたちの様子や気づきもSalesforceに蓄積していくことで、学校教員や医療・福祉を目指す学生のスキルアップや、将来的な病弱児支援の拡充につなげていく。

(2)支援対象者へのWEBアウトリーチと支援事例の情報発信
コロナ禍による感染症対策のため面会や外出自粛している子どもや家族との接点を増やすために、キーワード検索連動型広告により病名や復学支援、相談先を検索している当事者を対象に、当団体の専用特設ページに誘導を行い、相談支援事例や行政窓口の紹介、利用者の声などを周知する。ページ内にはチャットでの問い合わせ機能を追加して、気軽に質問や相談ができる機能を追加することで、利便性を高める。

蓄積された支援事例の中でも他地域や他校でも役立つと思われる好事例に関しては、お役立ち情報(ホワイトペーパー:A4用紙両面程度)としてまとめることや、パワーポイントで図解しながら事例を解説する動画を制作して、YouTubeで公開することで、他団体・他地域での支援ネットワーク拡充につなげる。岡山県内の小学校~高等学校・特別支援学校へお役立ち情報を印刷したものを郵送すると同時に返信ハガキを同封して、学校現場での実践度合いや支援活動の実施具合、当団体の認知度を調査する。

事業の結果

(1)地域の多職種と連携して取り組む支援事例蓄積
・日々の個別支援記録として年間96件、相談事例として年間30件と関わった。
・WEBアウトリーチにより、全国からの問い合わせが増えている。
・セキュリティキーの導入による多要素認証で個人情報保護の徹底を実施。
・フィードバックアンケートによる支援後のフォーローも開始した。
・岡山市以外の市町を管轄する保健所とも連携することができた。

(2)支援対象者へのWEBアウトリーチと支援事例の情報発信
・事例集の発行部数:3,000部(岡山県内の学校や関係機関に郵送)
事例集アンケート返信回答数:41件
 質問2:事例集は参考になりましたか? 平均値:7.9
 質問3:校内の先生方に紹介しますか? 平均値:7.6(NRS評価:8)
 質問4:ポケットサポート認知度
  ・初めて知った:48%
  ・名前を知っている:22%
  ・よく知っている:30%

・WEBアウトリーチによる相談件数:5件
・行政との新規連携件数:2件
・小学生から高校生までの授業配信や行事中継、連携会議など様々な実践事例を掲載した事例集を作成することができた。
・SNS等を通じて事例集の資料請求を全国からいただき、情報を必要としている人がいることを実感した。

岡山県内のおける病気療養児支援 実践事例集

制作した実践事例集冊子
実践事例集の掲載内容

事業の成果

当初、事業目標としていた「岡山県内各地域の保健師等にも事例共有が行われ、岡山県全体の地域支援ネットワーク強化する」、「蓄積データから岡山県内における病気を抱える児童生徒の新たな支援課題や、教育現場の悩み、当事者のニーズを把握する」を達成することができた。
行政セキュリティの課題でメール共有に変更とはなったが、セールスフォースによる情報共有プログラムの改修によりメール転記することなくスムーズに情報共有や過去の履歴をセキュアに閲覧することができるようになった。

全国に向けて岡山モデルの実践事例を発信するための事例集を制作することができ、下記のような嬉しいコメントも届いている。今後も、このような事例集やフォーラム開催を継続していき、一人でも多くの学校現場や支援対象者に届け、病気でも学びを諦めない社会づくりに寄与していきたい。

【事例集を読んだ感想】
・このような取り組みをしてくださること、とても貴重でありがたいことだと感じています。今後、関わっているケースで同様の相談があれば、ぜひ活用させていただきたいと思います。

・令和4年度にはじめて、庁内の連絡会議を実施し、今後も継続していくこととなりました。連携の実践事例がとても参考になりました。ありがとうございました。

・今後、療養中の児童が入学してくる時の学校の受け入れ体制や、サポート体制を考える上で、大変参考になりました。ありがとうございました。

・子どもの成長や時間の流れは待ってくれません。「学びを止めない病弱教育」と言う通りできることや可能性を見つける第一歩となりました。

・本校には特別支援学級はなく、事例に該当する生徒もいませんが、合理的配慮の点については参考になる内容が多いと思いますので、職員に紹介したいと思います。

自己評価

入院中の子どもたちとは2023年4月現在も面会制限や感染症対策のため、病棟に訪問しての支援活動や、対面での交流イベント開催を休止している状態が続いている。 このような状況の中で、私たちにできるアウトリーチ方法としてWEB広告や事例集を制作しての情報発信を行うことで、情報を必要としている当事者家族や医療・教育などの関係者に届けることができた。

事例集をご覧いただいた感想の中には、「このような取り組みは貴重でありがたい」「実践事例がとても参考になった」「学びを止めない病弱養育」という心強いコメントもあり、私たち自身も助成事業を通して勇気づけられた。

また、SNSやプレスリリースによる情報発信を活用することで、twitterやインスタグラムを経由してご連絡をいただく保護者の方や、資料請求をいただく支援者、新聞掲載をしたいという記者の方など、過去にない反響の大きさに驚いている。 事例掲載にあたり教育委員会や当事者家族の皆様のご協力で、素晴らしい実践事例集を制作することができ、岡山モデルを全国に向けて発信し、全国の当事者家族や学校現場の先生方に勇気や未来への希望も届けることができた。

保護者家族との面談風景

課題および今後の展望

・コロナ禍以前の相談件数まで戻っていない状況が続いており、いかにして支援対象者や医療・教育関係者に相談窓口を知ってもらうか、WEBアウトリーチや多職種連携など様々な手段を模索している。

・実践事例集と合わせて郵送した返信ハガキの回収率が伸び悩んでおり、発送時期や回収方法の見直し、行政機関との連名など回収率アップのための施策を検討する必要がある。

・県外からの問い合わせ対応や個別支援に関しては寄付金で賄っているため、ファンドレイジングの強化による支援する人材と資金を安定的に確保していく必要性を再認識した。

・WEBアウトリーチによる全国からの相談に対しても柔軟に対応できるように、全国の支援団体と顔の見える関係をつくり、横のつながりを広げていきたいと考えている。

認定特定非営利活動法人ポケットサポート

代表理事

三好 祐也 さん

5歳で慢性のネフローゼ症候群を発症。義務教育のほとんどを病院で過ごす 岡山大学経済学部卒業 岡山大学大学院保健学研究科修士課程修了 研究テーマ:病弱教育、院内学級 自身の経験を通じて10年以上にわたり、病弱児の学習・復学などの自立支援と環境理解のための講演活動を行う。講演は学会や大学、小・中学校、福祉関係など多岐にわたっている。

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