公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2022活動報告|支援における「経験知」の見える化事業

特定非営利活動法人 TEDIC

経済的困難を抱える子どもの学び支援

3年間の助成期間を終え、取り組みや成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。

事業紹介|地域社会資源の定性情報の可視化を実現するために




事業内容と活動経過 1年目 事業内容と活動経過 2年目 事業内容と活動経過 3年目 3年間の事業の成果と評価

事業内容と活動経過 1年目

■事業の目的

・過去9年間の支援記録、活動記録、ボランティア記録、関係者情報などの蓄積されたもの、過去に200人以上関わってきたボランティアスタッフや実践による暗黙知・経験値を、整理・分析・体系化・可視化することで、共有知に変換していく。
・定量情報では見落とされがちだが、特に対人援助や子ども支援において感覚知として大切にされる定性情報(姿勢、他機関との関係性など)にフォーカスし、再現可能な状態にしていく。
・可視化、活用のプロセスにおいては、アフォーダンスの理論(環境により、人の行動が規定されるとする行動心理学の理論)を踏まえ、視覚的・聴覚的・触覚的など、環境デザインに価値やバリューを埋め込み、無意識的に体得できるようにする。
・法人内部への浸透を目指しながら、法定協議会を活用し、地域全体の支援機関や人材育成への波及を目指す。


■事業内容と活動経過

<1年目の活動内容>

背景として、在職するプロパー職員の数が少なく、またOBOG組織も存在しないため、マニュアルや研修制度が不足していることに不安を感じています。さらに、新規入職した職員が「TEDICらしさ」という明確な価値観に直面し、戸惑うことが多いという課題も浮き彫りになりました。

このため、以下の調査方法を用いて現状を把握しました:
①立ち上げメンバーへのインタビュー(3人)
②過去7年間のボランティア活動感想集のテキスト分析(継続中)
③石巻市子どもの生活・学習支援事業を利用している子どもおよび保護者へのインタビューおよびテキスト分析


これらの調査を通じて、私たちは活動の課題や改善点を明確にしました。プロパー職員の不足や組織の不安定さ、言語化されていない価値観への認識のズレなど、多くの課題が浮かび上がりました。

<1年目の結果>

子どもへのヒアリングでは、「学習に対して変化があったか?」「家族との関係に変化があったか?」「友達との中で変化があったか?」等の項目で半構造インタビューを行いました。これまで事業評価の一環で子どもにアンケートを実施したことはありましたが、記述は少なく、本音までは見えませんでした。それが、今回の調査ではいい面も悪い面も含め、インタビューの中で本音を聞くことが出来、ありがたいことに、ポジティブな反応が多く、現場の人間にとっては、自分たちのやってきたことが報われた調査でもありました。

一方で、ある子は「昔のほうが楽しかった。昔は遊びにも行っていた」という事を言ってくれ、委託事業が増え、制度の中で救える子どもが増えた一方、気軽に来れる場所ではなくなったのではないか、子どもと距離が出来てしまったのではないかといった気づきを得ることもできました。

また、これまでを振り返った際に特徴的だったのは、行政・民間の支援機関と対話や協議を繰り返してきた点、だということにも気づけました。委託事業を受託したこと自体も法人にとっては大きなターニングポイントではありました。前述のように、ポジティブな側面もあれば、ネガティブな面もありました。

第1回学び合いの会の様子

事業内容と活動経過 2年目

■事業の目的

支援分析レポートや研修とメンター制度を通じて、より充実した支援体制を整えていきました。

<実行項目①>
図書館プロジェクト(支援プロセスのオープン化と蓄積)

■実施施策①:過去の支援分析レポート検討ワークショップ
立命館大学桜井研究室に過去の支援分析を依頼。9/10、12/16に分析報告会を実施。分析からは各年代のチューターの活動傾向は見えたものの、これらを支援実践に活かせる資料に昇華させるまでには至りませんでした。ただ、第3者機関に客観的に分析をしてもらうことで、当事者(TEDIC)では気づかない視点をフィードバックしてもらうことが出来ました。桜井研究室とは継続して分析を進めています。

■実施施策②:「子どもファイル(仮)」作成
TEDIC居場所事業部で関わっている、子ども90名の個別ファイルを作成しました。ファイルの中身はアセスメントシート、支援計画、活動計画、学習教材等。ケース会議なので、実際に使う場面を想定した構成を意識しました。

■実施施策③:支援報告会
7~9月に実施。月次で支援の振り返りとその共有を行いました。各人、チームでブラックボックス化していた支援プロセスや取り組み内容を法人内で共有、互いに影響を与え合うことが出来ました。会の運営自体も、若手スタッフや学生スタッフに委ねたことで、主体的に考えて動くことが増えました。

■実施施策④:支援サポートシステムの構築
これまで、属人的になってしまっていた支援プロセスをツール(notion)の力を借りてオープンにしました。支援・活動計画管理、拠点管理、ボランティアコーディネート、コミュニティづくり、各種タスク管理の機能を実装。実装の過程で現場スタッフに業務のヒアリングを行うことで、業務の可視化、一般化が進みました。また、これまで一部の人間だけが行っていた他機関連携も、関係機関DBなどを構築し、整理した。

<実行項目②>
カレッジの設立(TEDICの研修部門の設立)

■実施施策①:個別伴走支援者養成研修

8月と9月にオンラインで実施した個別伴走支援者養成研修は、京都ユースサービス協会の竹久氏(TEDIC理事)を講師に迎え、大学生チューターやプチユースワーカーなどが中心となって研修設計を行いました。初回と2回目の研修では「振り返り」をテーマに活発な議論が行われ、現場のニーズに即した内容が提供されました。

■実施施策②:ブルーチューター養成研修

ブルーチューター養成研修では、利用申込、支援計画、活動計画、ボランティアコーディネート、関係機関連携業務の習得を目標に、4回の座学研修とOJTで構成されました。座学研修では「オリエンテーション」、「事前準備」、「関係機関連携」、「振り返り」がテーマとなりました。OJTでは、座学で学んだ内容を実際の活動に活かすため、相談責任者の大津氏と共に行いました。ブルーチューターの養成が進んだ結果、大津氏が一人で担当していたケース数が大幅に減り、平均20ケース程度に均等化されました。若手スタッフを中心に、各ユニットでの定期的なMTGなども行われるようになりました。

■実施施策③:地域のNPOリーダーによるメンター制度

石巻市内で活動するNPOリーダーのプレーワーカーズ廣川氏とかぎかっこPJの神澤氏をメンターとして迎えました。週に一度、彼らがTEDICに参画し、若手スタッフと共に活動の事前準備から現場での支援、そして振り返りまで行い、OJTを実施しました。TEDIC内でのマネージャー人材不足の課題に対して、内部の人材だけでなく、地域の専門家の協力を得ることで、若手スタッフの成長環境を築くことができました。

第4回学び合いの会の様子

事業内容と活動経過 3年目

<3年目活動内容>

■重点実行項目①
虎の巻(仮)の作成および支援サポートシステム(notion)の構築とその使い方マニュアル(notion)作成

業務研修を通じて、虎の巻を活用することができました。定期的にnotionの編成と修正を行いました。実装した機能の修正に加えて、予算執行管理などの機能も追加し、システムの改善を続けました。

■重点実行項目②学び合いゼミの実施
学び合いゼミを年間4回開催し、チーム内での学び合いの文化を醸成しました。また、チューターの振り返りを通じて、業務理解が進む結果を得ました。

職員研修支援と各地域ユニットMTG、TEDICの全体振り返りの開催 今年度より、各事業に担当理事を配置し、研修機能を担保しました。年間を通じて職員研修支援を4回実施し、各拠点の振り返りも行いました。また、本助成外での合宿も成功裡に開催しました。

TEDICらしい「学びのサイクル」の仮説獲得
重点実行項目を通じて、様々な研修や取り組みを行った結果、日常の現場こそが成長の源であることを実感しました。現場の実践と振り返りを重視することで、体験知識が形式化され、学びのサイクルがより具体化しました。

設立者の支援姿勢のヒアリング時の様子

特定非営利活動法人 TEDIC

副代表

鈴木 平さん

大学卒業後、IT企業を経由して、2014年より子ども支援NPOに参画。在職時に「人が育つ環境をつくる」をテーマにしたユースソーシャルみやぎを設立。 その他、子ども向けキャンプや体験活動を提供するNPOの事務局も務め、2017年より、NPO法人TEDIC理事就任、2019年より現職。事務局業務及び、地域、ボランティア、子どものコーディネーション活動を行う。



SNSでこの記事をシェアする

一覧に戻る