助成団体紹介
2023活動報告|群馬県太田市と横浜市にて、外国につながる子どもの状況調査や学習支援を実施
特定非営利活動法人 ABCジャパン
1年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2023年事業紹介 神奈川県・群馬県の外国につながる子どもの状況調査・教育相談とフリースクールのモデル化事業
事業の目的 2023年度の取り組み 2023年度取り組みの結果 1年間の振り返り 2年目に向けて
事業の目的
外国につながる子どもたちが安心して学び、過ごせる地域社会と、保護者が安心・安定して生活・就労できる環境の中で、子どもたちが共に暮らせる社会を作るために、群馬県太田市にて教育体制の整備や外国につながる子どもたちに関する調査を行い、状況を把握することを初年度の目的としています。また、すでに横浜市鶴見区にてフリースクールが確立している当団体からの技術や知識の共有を通じて、授業運営を開始します。
2023年度の取り組み
【群馬県での調査実施、フリースクール運営の取り組み】
群馬県太田市にて、外国につながる子どもたちの学習支援を行うにあたり、生徒・保護者、そして教育関係者から求められていることを把握するために実態調査を行いました。アンケート調査とは別に、実際に群馬県太田市や大泉町へ足を運び、日本国内の学校に通う外国籍の子どもの保護者に対して意識調査やカウンセリングニーズを聞きました。また、隣の市にて20年以上外国人支援を行っている特定非営利活動法人・Gコミュニティの理事長より群馬県における支援状況のヒアリングを行い、さまざまな角度から太田市での支援を企画するための情報を収集しました。
調査結果で実際に求められている声に基づき、10月より授業運営を開始しました。当初は参加人数がまばらでしたが、呼びかけを続けることで参加する生徒が定着してきました。
【横浜市での、フリースクール運営の取り組み】
外国につながる子どもたちの学齢超過生や学校になじめなかった生徒を対象としたフリースクールの認知度が横浜市外で高まったことから、さまざまなところから入会希望の声があがりました。受入れ能力の点から、全員を受け入れることはできませんでしたが、入会できなかった生徒を別のNPO法人や他支援団体へつなぐ対応を行いました。
2023年度取り組みの結果
【群馬県での調査実施、フリースクール運営の取り組み】
群馬県における教育支援を強化するために、教育関係者のボランティアスタッフや、学生スタッフと共にフリースクール運営に努めました。開講当初は集中力が途中で途切れてしまったり、わからない問題に直面しても質問ができなかったり、あいさつの日本語を使うことをためらったりとさまざまな場面が見られました。しかし参加が継続していくことでスタッフとの信頼関係が生まれ、休憩時間以外は一生懸命勉強に向き合い、積極的に質問をすることができ、教室に参加する時のあいさつやスタッフとの会話が増えるなど、生徒の成長が見られました。また、高校受験を控えた中学3年生の生徒は、当団体が主催する教育フェアに参加し、高校進学することへの意欲が増して、開校以来90%以上出席、わからない問題には積極的に取り組むなど努力を重ね、無事高校進学を果たしました。
【横浜市での、フリースクール運営の取り組み】
日本語を含む教科学習をレベルごとに分け、当団体に関わってくれる大人たちに対して面接練習を依頼しコメントをもらうなど、高校進学に向けてのカリキュラムをより強化しました。
面接練習時に、生徒たちの日本語力が上達していると多くの方からコメントをもらい、生徒たちもより一層練習に励みました。結果、生徒全員が高校進学を果たしました。
1年間の振り返り
全体を通して、横浜市での現状と群馬県太田市の現状とが想像以上に違っていることが多くありました。当初は、今まで支援を行ってきた横浜市と、群馬県太田市の地域差を理解することからスタートしました。 地域差はあれど、外国につながる子どもやその保護者が困っていることがあるからこそ支援するという当団体の基本理念には変わりありません。横浜市から太田市へと足を運びながら現地の声を聞き、実行に移すということをくり返し行いました。
2年目に向けて
2年目は、群馬県で実施した調査結果やフリースクールでの実績を自治体と共有し、問題意識を持ってもらうと同時に、各学校にて教科学習や日本語指導が不足している生徒に対して声かけの協力をしてもらえるよう、働きかけていきたいと思っています。
安富祖美智江さん
ブラジル・サンパウロ出身の沖縄系二世。在日30年・横浜市鶴見区在住28年。
二女の母。地域のブラジル人や南米系日系人住民への相談ボランティアからスタート。
定住外国人支援のため仲間と共にABCジャパンを立ち上げ、その後NPO法人化。
2016年より理事長として、行政や学校、ブラジル大使館・総領事館等と連携して、当事者の立場に立って外国人住民の生活・教育等の支援を行っている。
2018年ブラジル国家勲章受章、2019年外務大臣表彰受章。2023年度国際交流基金地球市民賞受賞、第4回(2024年)SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞受賞。