助成団体紹介
2023活動報告|治療と学びの両立をめざすガイドブックで、高校生の進路選択を応援
特定非営利活動法人 未来ISSEY
助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2023年事業紹介 長期入院・療養を経験する高校生の在籍校での学びにつなぐ事例集作成事業
事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望
事業の目的
長期入院・療養中の高校生は、その約7割が休学・退学しているという実態(令和3年3月国立がん研究センター調査)を重く受け止め、彼らが在籍校で学び続け、単位取得・進級・進学を諦めないための支援ガイドブックを作成しました。
すでに国や行政からは積極的な施策が打ち出されているにもかかわらず、学び続けるための情報が教育関係者・医療従事者・高校生とその家族には届きにくいという現状があります。
情報の広がりにくさ・分かりづらさを解消し、病気を抱えても高校生が学校で学ぶ機会を当たり前の状況にしていくことを目的とします。
国からの通知をコンパクトにまとめ、各都道府県において取り組まれている先進的事例・高校生当事者の声・ICT活用の実際を掲載したガイドブックの存在が、病気を経験する高校生の学校生活や学び・将来を支えていくと考えています。
事業の内容
「治療と学びの両立をめざすガイドブック~高校生版~」 を作成しました。(冊子A4判・48p)(HP上で公開・ダウンロード可)
対象:全国の長期入院・療養中の高校生とその家族、教育関係者・医療従事者・福祉関係者・行政
内容:
ガイドブックは3ステップで構成。各章のタイトル・副題・デザインを最大限工夫し、手に取りやすくしました。
【ステップ1】課題提示
・病気を抱える高校生の学びに関する文部科学省・厚生労働省の規則改正・通知を1994年から順に追って解説
・国立がん研究センターの患者のアンケート回答による高校生の実態を解説
・各都道府県の国の方針に準ずる施策の有無とモデルケースを掲載
【ステップ2】支援の歩みと全国の5地域の好事例・先進的事例を紹介
【ステップ3】実現の第一歩となるICT活用・遠隔授業のポイント・相談や支援の窓口を紹介
全国病弱教育研究会、各地の特別支援学校等教育機関、高校生当事者や経験者の皆様がそれぞれの状況をご執筆くださいました。
未来ISSEYホームページよりダウンロード可とし、全国どなたでも利用できるようにしています。
事業の結果
・こども家庭庁・文部科学省・全国各都道府県教育委員会の高校教育課と特別支援教育課・香川県内市町教育委員会の高校教育課と特別支援教育課に1部ずつ・小児がん拠点病院・医療関係者・関係団体に配布(3月末 約190部配布済)
・未来ISSEY HP上にPDFファイルでUP
未来ISSEY ガイドブック
関係者・保護者が全国どこからでもダウンロードでき、必要な方にデータで送れる状況となりました。
事業の成果
配布先から、徐々にガイドブックに対する感想が寄せられています。
当初配布先ではなかった病院の、高校生に関わっていらっしゃるドクター、当事者の支援団体、県内の教育委員会等から、「HPでも見たが、ぜひガイドブックが欲しい、今後活用していきたい」という依頼が5件程ありました。今後の活用について追跡していきたいと思います。
またベネッセこども基金様の交流会でのご縁で、こども家庭庁の担当者様に完成版を送付、文科省にも追加で5冊送付。国の担当の方々に高校生の課題を伝えるツールとして役立てていただけることを期待しています。
かつてお子さんが高校受験・高校生の頃に長期入院を経験されたご家族は、このガイドブックに目を通して「あの時こういった事例を知っていたら、またこのガイドブックがあれば、もっと子どもの思いを強く学校に伝えに行けていた。」と話されていました。
「読みながら闘病中のことが思い出され涙した。また、他県の事例など、みんなの頑張りが伝わってきた。」「このガイドブックがあると、子どもの希望を学校に説明しやすい。」「心強い。」との声もいただきました。
現在治療中・療養中の高校生やその家族からのご感想や活用実績はまだありませんが、次年度以降、当事者・教育関係者に届ける方法を継続して考え、広めていきたいと思います。
自己評価
当事者やご家族、教育関係者・医療従事者・支援者・一般の方など、どなたにとっても必要な箇所・興味のある箇所から読んでいただける内容になりました。
今必要な方だけが読むのではなく、一般の方々も広くこの社会課題を知り広げることによって、高校生の状況を変えていけるという仮説を立てています。
このねらいに合う「誰もが読みやすい」ガイドブックとなったことに価値があると考えています。
課題および今後の展望
・ガイドブック作成・送付・HPへの掲載で今期事業が終了していますが、ガイドブックを実際に活用していただいた事例を追っていきたいです。
・手に取る方によってガイドブックの意味合い・活用の仕方は変わってきます。
①当事者の学習・交流への意欲喚起、復学・進学・就職等社会復帰への意欲喚起
②高校生に関わる方々がこの問題に対して解決方法を知る
③一般社会への問題提起
④当法人の活動を知ることを通じて社会貢献活動に取り組むきっかけとなる
どのような活用方法であっても、最後には解決したい課題につながっていくと考えています。
今後も、より広い分野の方々との連携をとったり、より多くの人に読んでいただけるような方策を考えたりしていくことが必要です。
・ガイドブックが活用された後、どのように当事者・関係各所・各地域が変容したかを追跡したいと思います。
・ガイドブックそのものの内容を更新することは難しいですが、変化した状況をHPに掲載するなど、最新の情報が反映できるようにしたいです。
吉田 ゆかりさん
ケーブルテレビにてアナウンサーとして勤務ののち、株式会社インペックスの専務取締役として婚礼やイベント司会等で活躍。次男の闘病経験を経て、香川県で同じような状況の子どもや家族の力になりたいと2018 年11 月に非営利団体NPO 未来ISSEY を設立。より支援の輪を広げるため、2020年10月、特定非営利活動法人(NPO法人)として法人格を取得した。自身の経験を活かし、慢性疾患により長期入院や療養をしている子どもたちの学習・学び体験の場を作っていく活動や家族の相談事業に注力している。また成人に近い世代の当事者や子どもの介護で就労形態を変ざるを得ない家族のために、就労への意欲向上のための支援と企業の社会貢献活動をコラボレーションする仕組みも構築。子どもや家族の現状を講演活動や映像制作・上映を通じて広める活動も行っている。