助成団体紹介
2023活動報告|治療しながら学ぶ子どもへ「まなびのビーズ」を開発し病院で活用。意欲につながったと喜びの声が
認定特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズ
助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2023年事業紹介 難病とたたかう入院中のこどもの勉学意欲を高める「まなびのビーズ」開発事業
事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望
事業の目的
この事業は、まなびの場面での病児のがんばりを形にする(=可視化する)ことを目的としています。
ビーズ・オブ・カレッジはアメリカで始まったプログラムで、自身の治療にあてはまるビーズの色や形をつないでいくものです。弊法人では、アメリカ本部のビーズ・オブ・カレッジから国内で唯一承認を受けてプログラムを運営しています。「がんばったねビーズ」はアメリカでは"Act of Courage"ビーズと言い、治療の過程で自分が一番がんばった治療や場面を申告して受け取るビーズです。さらにその一環として、治療と勉学を両立している患児たちのために「まなびのビーズ」を開発。国内9病院で実施しました。
「院内学級は単なる学習保障の場ではなく、病気によってガラッと変わってしまった人生に今後どう向き合っていくかを教えてくれる心の支えの場所である」(16歳で小児がん発症、24歳で旅立った野球少年患者の言葉)という院内学級の存在に、要望が強かった学習支援のビーズを入れたいと考え、ビーズ・オブ・カレッジを導入している25の病院へ、学習支援のビーズの希望についてアンケートを実施ました。結果、95%の病院から次のような回答がでました。
①院内学級で使うビーズは子どもたちの勉強に対するモチベーションアップにつながる
②進級や検定合格などの場合に渡すビーズがほしい
③いつも闘病をがんばっている子どもたちに、勉強でもがんばっていることをほめてあげられる特別なビーズがほしい
④院内学級では高校生向けの支援が少なくなるので、何かの形で勉学に対して応援のメッセージを届けたい などです。
家族と離れ、病院という非日常の空間の中で治療をこなし、病気と闘う毎日。その中で、治療への義務感や、病気を抱えていない同級生に対する嫉妬などを感じてしまうこともあるでしょう。複雑な感情を抱き、メンタルが不安定になることもある中で、人生を進むための心の内を成長させることができるよう、課題解決のサポートツールとして、新しい意味合いを持つ「まなびのビーズ」の開発を進めました。
事業の内容
重点実行項目
①2023年4月~ 入院中の子どもたちの学習意欲度の調査、ビーズの希望種類の調査、ビーズの種類決定、協力病院と有識者への協力依頼
達成目標:4月~5月(オンラインミーティング2回)
●協力施設:ビーズ・オブ・カレッジ導入病院 5病院
●外部有識者:病弱児教育専門家、特別支援学校教諭(ビーズ大使)、トンボ玉ギャラリー館長
●5病院の院内学級での学習取組状況と希望ビーズの調査
●5病院の調査結果を分析し、まなびのビーズの種類(5種類ほどを予定)を決定
●外部有識者(3名)からのアドバイスを受け、まとめ
<まなびの場面で受け取るビーズの種類について>
1位:一緒に学んだ仲間との思い出のビーズ
2位: 定期テストや検定試験をがんばった時に受け取るビーズ
3位:各種イベント(発表会など)でがんばった時に受け取るビーズ
4位:1週間連続で授業に参加できた時に受け取るビーズ
5位:進級時に受け取るビーズ
:学期を修了した時に受け取るビーズ
6位:体調不良で悔しい思いをしたときに受け取るビーズ
7位:編入した時に受け取るビーズ
②2023年6月~ 「まなびのビーズ」デザイン募集(入院中患児、入院経験者の小学生~高校生)実施とデザイン決定
●入院中の小学生~高校生までの患児とSNSで募った小学生~高校生までの入院経験者から、各種ビーズのデザインを公募
●作成してくれる国内ビーズ作家探し → 募集 → 10名のビーズ作家のご協力
●「まなびのビーズ」種類 選択協議(有識者3名、弊法人) → 5種類の場面で渡すビーズの種類を決定
<5種類の場面で渡すビーズ種類決定>
*学業を進めていくうえで節目に受け取る「節目のビーズ」
*イベントなどの思い出を表す「思い出のビーズ」
*闘病中のしんどさ、悲しみや辛さを表す「乗り越えのビーズ」
*自分なりの目標を達成できた時に受け取る「達成のビーズ」
*仲間とのつながりを感じた時に受け取る「つながりのビーズ」
●ビーズ製作依頼から完成までの工程スケジュールを決定
③2023年12月~ ビーズ完成をめざして作家との調整のくり返し、完成、ビーズ配布の告知スタート、10病院へ配布
2024年1月~ 配布後、使用状況とその効果のアンケート実施 → 9病院統計まとめ → 次年度へ向けてビーズの種類や個数など改善
2024年4月~ 最終報告書を作成、ベネッセこども基金と協力有識者、協力ビーズ作家など関係者へ送付予定
事業の結果
協力施設:ビーズ・オブ・カレッジ導入病院 5病院
・外部有識者:病弱児教育専門家、特別支援学校教諭(ビーズ大使)、トンボ玉ギャラリー館長
・担当スタッフ:4名(ビーズ・オブ・カレッジ担当者2名、総務、広報)
・協力病院数:5病院(ビーズ・オブ・カレッジ担当者)
・アンケート参加者数
a)院内学級の子どもたちの参加度や意欲調査結果:40名
b)ビーズの種類希望についての調査結果:
c)ビーズのデザイン希望についての調査結果:24名
・ビーズ作家制作希望者数:10名(全国)
・制作ビーズ個数:990個(目標1,000個に近いご協力を得られた)
・配布希望病院:10病院(院内学級に通う病児数に応じて公平に分配した)配布実施病院は9病院
・最終感想アンケート数:9病院より回答あり
事業の成果
●配布病院からのアンケート回答
①まなびのビーズは病児のまなびの意欲につながっていましたか? はい/8病院 いいえ/2病院
**医療者の声を抜粋
・今回のビーズで、行事やテストに対してやる気がみられました
・きつい治療の中での受験を終えたお子さんに渡しました。学業に関することでビーズをもらったことはなかったので、とても喜んでいました
・検査・治療だけではなく、勉強をしたということも振り返る機会となって良かったです
・「卒園式に出られない悲しさを乗り越えた」と教えてくれました。その時に知らなかったその子の思いを聞くことができました。 患者さんの気持ちを知るきっかけにもなりました
②まなびのビーズを継続したいと思いますか? はい(77.8%)
③渡す頻度が多かったビーズは?(複数回答可)
節目のビーズ(66.7%)/達成のビーズ(77.8%)/乗り越えのビーズ(33.3%)
④ご意見
・ビーズがとてもかわいいのが最高!
・ビーズひとつひとつがかわいく、自分たちが頑張ってきた証をワクワクしながら選んでいる子どもたちの表情が印象的。ぜひ、まなびのビーズは継続してもらいたいです
・学校での時間や友人との時間、自分の居場所を再確認できたようです。ありがとうございました!
・渡すタイミングが難しいと感じました。特に「つながりのビーズ」は対象となっている事柄がぼんやりとしているので難しく、患者さんもあんまりしっくりこないようでした。「○○をした」というような、わかりやすい事柄に対してのビーズだと良いと思います
・期間が短く、使い方を模索中です。進級・進学、退院を控えている子が多いので、いろいろ積極的に渡していきたいと考えています
自己評価
今回の事業は、長年の要望であった「まなびの場面での病児のがんばり」を見える化したい!との願いから、ベネッセこども基金様の助成を受けてかなえられた事業です。病児に代わって心より御礼申し上げたいです。アンケートから得られた回答の通り、お子さんや現場のビーズ大使の方からはうれしいお声をいただいたこと、「まなびのビーズ」を新たに作成して院内学級で学ぶお子さんへ届けることができたことへの達成感を感じています。
課題および今後の展望
アンケートを実施した中で、以下のようなご意見がありました。
・病院によって対象児がいなかったり、「つながりのビーズ」や「思い出のビーズ」といった目に見えない感情を表すものは、院内の担当者から渡すタイミングが難しかったこともあり、一度も渡さなかったビーズがありました
・節目のビーズや達成のビーズは、実際に患者が経験し行ったことが多く渡しやすいですが、つながりのビーズなど気持ち面でのビーズは、どのような場面で渡すべきなのか迷いました。また、今回の配布期間に対象だった患者の大半が、体のしんどさや気持ちのしんどさであまり院内学級に行けていなかったので、先生や他患者とのかかわりやつながりにまでは至りませんでした。このようなケースはこれからも多いように思います。節目のビーズや達成のビーズなど、患者も受け取りやすくこちらも渡しやすい種類だけにしても良いように感じました
以上のことから、病気と闘うお子さんの中には、そばにいる家族やスタッフにははかり知れない様々な心情が内面にあり、そのすべてに対応する術に関して課題があると考えます。
しかしながら、病児のさまざまな心情に沿えるよう、ビーズを渡す場面での種類選びの際にさらなる話し合い、有識者との協議の時間が必要だったと感じています。
また、まなびのビーズ配布時期が短く満足する期間ではなかったようなので、配布をもう少し前倒しにすべきであったことは反省しています。
配布病院担当者からは継続してほしいとのお声を多くいただいており、まなびの場面での「病児のがんばりを認める」ことへの要望が大きいことが判明しました。弊法人として今後は、病児のがんばりを認めるツールとし、また院内学級の先生や医療者の皆さんとの関係性を深めるツールとして継続して「まなびのビーズプログラム」を提供していきたいと思います。
Kimberly Forsythe-Ferris (キンバリ フォーサイス) さん
1990年~プロの声優として活動開始、TVラジオのアナウンサーや教育用ビデオのナレーターなど多方面で活躍。米国ヴァージニア大学教養学部数学専攻卒業後、同大学技術・応用化学学部理学修士を取得
2006年小児がん起因の合併症により息子タイラーを亡くしたあと、同じような病気で苦しむ子供とその家族のサポートをしたいと考え、「NPO法人タイラー基金」を夫のマーク・フェリスと共に設立
2012年~ 認定NPO法人取得を機に「シャイン・オン・キッズ」に改名、現理事長