助成団体紹介
2024活動報告|自然の中で遊び、心が動く体験を家族で。アウトドアイベントとユニバーサルおやこコンサートを実施
特定非営利活動法人 北海道こどもホスピスプロジェクト
助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2024年事業紹介 LTCのこどもと家族の状況を学びで改善する仕組みづくり~こどもたちへ繋ぐ自然、文化、そしていのち~
事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望
事業の目的
生命を脅かす病気(LTC)を抱えるこどもたちは、友だちと遊ぶこと、自然の中で思いきり体を動かすこと、きょうだいや家族と笑い合うこと----そんな「当たり前のこどもの時間」を、治療や入院のために我慢せざるを得ないことがあります。また、きょうだいや家族も多くの不安や制限のなかで日常を送っています。
私たちは、LTCのこどもが「こどもらしく」過ごせる時間と居場所をつくることをめざしています。
この事業では、自然の中でのびのびと遊び、音楽の時間を通じて心が動く体験を家族とともに味わうことで、「またやってみたい」「楽しかったね」という記憶が、こどもたちの未来への希望や学びの意欲につながると考えています。

事業の内容
生命を脅かす病気(LTC)のこどもやそのきょうだい、家族を対象に、以下の2つの活動を実施しました。
【1】 年3回のアウトドアイベント(夏・秋・冬)
対象:LTCのこどもときょうだい・家族
夏(6月):支笏湖でのキャンプ(初参加家族も安心できるよう日帰り/宿泊の選択制を導入)

秋(10月):旭岳での自然体験(初の旭川エリア開催。登山・クラフト・家族交流など)

冬(2月):支笏湖での雪と氷の体験(冬のカヌー、雪遊び、アイス作りなど)
【2】 ユニバーサルおやこコンサート(札幌・旭川・帯広)
対象:LTCのこどもときょうだい・家族
3つのエリアで開催。生演奏に加え、楽器に触れたり、音の仕組みを学ぶ体験プログラムを実施。

事業の結果
アウトドアイベント
夏の支笏湖イベント:9家族35名が参加。初めてのご家族も参加しやすいよう、日帰り参加と1泊2日を選べるように実施。ご家族が安心して参加できるよう、事前に電話にて情報の共有を行ったうえで進めました。また、個々の医療的ケアに関しては、野営に近い形でのキャンプであること、体調にあわせ自由に過ごすことが可能なことなどを家族と話し合いました。

秋の旭岳イベント:これまで札幌近郊の開催地だったが、新たな試みとして旭川エリアのご家族を対象に、実施場所を新規開拓しました。5家族20名が参加されました。ロープウェイで登ったあとは、チャレンジチームと、のんびりチームに分け、こどもたちが、プログラムを自分で選べるように工夫。チャレンジチームでは登山道を利用し1時間15分の登山。のんびりチームでは、親同士の交流タイムやこどもたちはクラフトをして楽しみました。初開催の場所でしたが、地域の施設に多くのご協力をいただき、帰りには隣接するホテルの温泉にみんなで浸かり、リラックスした時間を過ごせました。

冬の支笏湖イベント:冬もカヌーに乗りたい!というお声をいただき、冬の湖をカヌーで楽しみました。6家族22名が参加されました。今回は「雪や氷の不思議」がテーマで、霜柱や雪遊び、みんなで雪を使ってアイス作りにも挑戦。冬の自然を多角的に体感できるプログラムづくりを意識しました。こどもたちの五感や好奇心を刺激しました。

ユニバーサルおやこコンサート
札幌・旭川・帯広の3会場にて実施。
演奏だけでなく、楽器体験を通じて、参加したこどもたちに笑顔が見られたほか、普段話す機会が少ない家族同士の自然な会話や交流が見られた。

事業の成果
■ アウトドアイベントの成果
初めは緊張していたこどもたちも、活動の中で自然となじみ、分け隔てなく楽しむ様子が見られました。アンケートでは以下のような声が寄せられました。
・こどもたちの変化と成長
「弟(次男)はふだんは保育園以外では親から離れて遊ぶことはほとんどなかったのですが、親から離れてスタッフの方と遊ぶ姿や他のお子さんと遊ぶ姿があったり、カヌーでは自分からエビを触ったりと成長した姿を見れたのも感動的でした」
「障がいのあるこどものきょうだいである、きょうだい児同士の交流もでき、楽しそうに遊んでいる姿にも嬉しさを感じました」
「基本的に外にいることは好きなのですが、歩けないということで公園等に連れて行くことはほとんどないため、今回スタッフの方が一緒に遊んでくれて常に笑顔で楽しそうにしていました」
・家族の絆を育む豊かな時間
「兄も楽しめて、弟(障がい児)もしっかり本人のペースで遊べるのはこのイベントしかないと思います。兄にはたくさん我慢させているので兄のペースにたくさん付き合っていただき感謝しています」
・保護者の声と心の変化
「普段、家族だけでは実現が難しいと躊躇することも、今回のこのキャンプで体験させてもらえて大変満足しています」
「親同士、悩みを共有することができました」
「障がい児のつながりを持たない母としてコミュニティを広げてもらえて感謝しています。この場がなかったら、きっとつながりを持たずにいたと思います」



また、旭川エリアでのイベント開催を通じて、初めて地域の施設と連携することができました。このつながりを今後も大切にしていきたいと思います。
■ユニバーサルおやこコンサートの成果
クラシック音楽や、生の演奏、音楽を"体験"することをコンセプトに実施しました。アンケートでは以下のような声が寄せられました。
・こどもたちの様子
「最初は緊張気味でしたが、ディズニーメドレーで手拍子をしたり歌ったりと、とても楽しそうな笑顔が見られてよかったです」
「表情がとても良く、喜んでいる様子でした」
「いろいろな音色や音にたくさんの心地よい刺激を受けているようでした。頭をふったり、手をパチパチしたりして、楽しさを表現しているようでした」
・保護者の声と心の変化
「美しい生の演奏を間近で聴くことができ、指揮者体験など滅多にできない経験をさせていただき親子共に楽しめました」
「障害の子を連れてクラシック音楽を聴きに行く事は、色々な制限や制約があり難しいと思っていましたが、皆が同じような境遇なら気持ちも楽に気軽に足を運べました」
「バギーで行ける場所やイベントはあまりないので、このように環境やスタッフさんが整った状況なら是非とも参加して、色々な体験や刺激を受けさせてあげたいです」
自己評価
過去最多の家族にご参加いただき、団体の活動が少しずつ社会に広がっている手応えを感じた一年でした。LTCのこどもたちだけでなく、普段は我慢を強いられがちなきょうだい児たちも、自然の中でのびのびと気持ちを解放し、心から楽しむ姿が印象的でした。
こどもたちの挑戦やきょうだい同士の絆、保護者同士のあたたかなつながりが、それぞれの「できた」と「分かち合えた」につながり、家族全体の力となったと感じています。

課題および今後の展望
今後もアウトドアイベントを続けていきたいと思っています。参加家族の満足度が非常に高いことが、私たちの強みになっています。一方で、リピーター家族が多くなることで、新規のご家族が参加しにくくなる状況は避けたいと考えています。今後は募集時に「新規のご家族優先」などを記載することや、リピーター向けの別イベントをするなどのフォローアップも課題となりそうです。
これからも、つながりがあるご家族を大切にしながら、活動を広げていきたいと思います。
奥田萌 さん
北海道にもこどもホスピスをつくりたい。ーー生命を脅かす病気や障がいとともに生きるこどもたちが"こども"らしく過ごし、家族が安心して過ごすことができる場所――。私たちはそんな自由であたたかな居場所づくりを目指して活動しています。
北海道は広大です。小児がんの拠点病院である北海道大学病院で治療を受けるために、家族が離れて過ごすことも少なくありません。そして、きょうだい児も多くの我慢の中にいます。そのようなご家族が、入退院の前後や外泊日にのんびりと過ごせるお家「くまさんち」の運営、そして家族の絆を大切に、心が動くイベントを定期的に開催しています。