公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2024活動報告|掛川から全国モデルを。同郷者によるオンライン算数個別支援プログラムをすべての外国につながるこども(越境児童)たちに

認定特定非営利活動法人 e-Education

経済的困難を抱えるこどもの学び支援

1年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。

同郷者による外国につながるこども(越境児童)のオンライン教育伴走プログラム(全国展開を見据えた自治体モデルの構築)

事業について 2024年度の取り組み 1年間の振り返り 2年目に向けて

事業について

「1x1がわからない」
外国につながるこども(越境児童)が必ずと言えるほどつまづく問題。つまづく理由は、最初の1を「いん」と発音し、2番目の1を「いち」と読む日本語の難しさにありました。
このように、私たち日本人にとって簡単なことが海外から来たこどもたちに大きな壁となり、勉強が嫌いになる。そんなケースは少なくありません。

そこで本事業では、外国につながるこども(越境児童)に対して、最もつまづきやすい算数を、彼ら・彼女らが最も学びやすい母語(継承語)で教えるために、同郷者がオンラインで個別指導するプログラムを、静岡県・掛川市で始めました。

「掛川から全国へ広がるモデルを」という想いを胸に、教育委員会や学校の先生、地元NPOと協働した1年目の活動をご紹介します。

同郷者によるオンライン算数個別支援の様子

2024年度の取り組み

2024年度、私たちは、外国につながるこども(越境児童)の占める割合が全生徒の約4%と、全国的にも越境児童が多い静岡県・掛川市と連携しで教育支援の活動を開始しました。

まず取り組んだのは、越境児童の課題分析。来日したばかりの越境児童に対して日本語と日本の学校生活習慣を指導している「虹の架け橋教室」に協力いただき、ヒアリング調査を進めた結果、日本語と同様に算数・数学に大きな課題があることが判明しました。
特に、ここ数年、コロナ禍による学びの遅れの影響が深刻であり、小学校高学年になっても掛け算九九ができないまま進学してしまっている生徒たちと多く出会いましたが、日本語で算数を学ぶことは決して簡単ではありません。

そこで、同郷者とオンラインで繋ぐことで、自分が最も学びやすい言葉で算数の基礎から学び直すことができるトライアル事業を開始しました。

掛け算九九でつまづいていた来日直後の小学6年生のIくん

2024年5月に開始した「虹の架け橋教室」におけるオンライン算数個別支援を試験的に開始したところ、想定以上に早く成果が出ました。掛け算九九がわからなかった小学校6年生のIくんは1ヶ月で難しい筆算までマスターし、小学校4年生のCさんは3ヶ月で一気に学校のカリキュラムまで追いつくことができました。

2024年8月に取材いただいた読売新聞の記事の中で、掛川市の佐藤教育省から「全国に広がるモデルになると思う」と力強いコメントをいただき、2024年10月から掛川市内4校におけるトライアル事業が始まりました。

2025年1月からは隣接する菊川市の小学校2項においてもトライアル事業を解することができ、想定を上回るペースで実証を進めることができました。

短期間で複雑な掛け算まで解けるようになったIくん

1年間の振り返り

元々、日本語と算数両方の支援を検討していましたが、掛川市教育委員会をはじめとした関係者皆さまと議論や調査を進めていく中で、日本語教室(取り出し教室)や母語支援員が担当する日本語支援と我々の支援領域を分け、教科学習支援(算数支援)に注力する方針を確定したことにより、スムーズに開発を進めることができました。

また、オンラインで実施した100時間以上の授業は全て録画・データ化されています。新しく参画した同郷者の講師には、モデル授業の動画を見てもらった上で授業をしてもらい、さらに先輩講師がフィードバックを送るモデルを構築することができ、最終的に10人の講師を育成することができました。

オンライン学習支援の取り組みを視察された教育委員会皆さん

2年目に向けて

2024年度、モデル自治体である掛川市でのトライアル事業に隣接する複数の自治体が視察に参加しており、具体的な支援拡大の議論も始まりました。今後はさらに多くの越境児童たちに本事業を届けていきたいと思っています。

また、現在は掛川市や周辺自治体では複数の団体が越境児童支援の取り組みを実施しているものの、情報共有や意見交換の場はまだ整備されていません。そこで、関係者間の深い学び合いを創出する専用ルーツの開発やワークショップの実践により、越境児童支援者同士による学び合いの輪を拡大することを目指していきます。

認定特定非営利活動法人 e-Education

代表

三輪開人 さん

1986年生まれ。早稲田大学在学中に税所篤快と共にe-Educationの前身を設立。大学卒業後はJICAで勤務し、14年7月にe-Educationの代表理事へ就任。これまでに途上国14カ国3万人の中高生に支援を届けてきた。
2016年、「Forbes 30 under 30 in Asia」選出。2017年、第1回ICCカタパルト・グランプリ優勝。著書『100%共感プレゼン』(ダイヤモンド社)

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