公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2025活動報告|闘病の記憶を「自信」に変える ~まなびのビーズを通じた小児がん経験者の社会復帰支援~

認定特定非営利活動法人 シャイン・オン・キッズ

病気・障がいを抱えるこどもの学び支援

助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。

2025年事業紹介 心のケアを軸とした長期入院治療を経験したこども達への社会復帰支援

事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

小児がんの治癒率が高まる一方で、長く辛い治療を終えたこどもたちの8割以上は、体力低下や見た目の変化、学習や発達の遅れ、そして晩期合併症など、社会復帰の段階で多様な困難に直面することがあります。当団体はこれまで、アート介在療法「ビーズ・オブ・カレッジ(勇気のビーズ)」を通じて、闘病中のこどもたちの心のケアを行ってきました。さらに前年度には、学習意欲を高める「まなびのビーズ」を開発し、大きな反響を得ました。本事業では、退院後のこどもたちが前向きに人生を歩むきっかけとなるよう、「まなびのビーズ」を活用した社会復帰支援プログラムを開発すること、そして、こどもたちが抱える個々の課題に合わせて切れ目のない支援を提供できるよう、医療施設と多様な専門性を持つ支援団体をつなぐネットワークを構築することを目的としました。

事業の内容

対象:10歳(小学4年生)~18歳(高校3年生)の重い病気を抱えるこどもとそのご家族
以下の3つの柱で活動を実施しました。
1.「まなびのビーズ」の精査と退院後の社会復帰支援モデルの構築
医療施設の現場でビーズをより使いやすくするため、テーマやデザインを精査。また、退院後のこどもたちが社会で孤立しないよう、退院時に病棟から社会(支援コミュニティ)へつなぐための「退院キット(退院シール・案内チラシ)」を制作し、導入病院へ配布しました。
2.「ふりかえりビーズ」ワークショップのプログラム開発
退院後のこどもたちを対象とした「ふりかえりビーズワークショップ」に「まなびのビーズ」を正式に導入。専用のノートを開発し、医療従事者であるビーズ大使との対話を通じた自己理解や同じ経験を持つ仲間(ピア)とのグループワークを実施しました。
3.多様な支援団体とのネットワーク構築とイベント開催
退院後のこどもたちを対象に「オンラインふりかえりビーズワークショップ」の開催、および対面での「ふりかえりビーズワークショップ」と並行して有識者・他団体と連携した「保護者向けセミナー&対話の場」を組み合わせたコラボイベントを実施しました。

事業の結果

本事業は、皆様のご協力により、計画を大きく上回る実績を上げることができました。
・「まなびのビーズ」の改善と全国展開:ビーズのテーマを3つ(できたね・くやしいね・ありがとう)、デザインを7種類に絞り込みました。とんぼ玉作家の皆様に呼びかけた結果、目標(400個)を大幅に上回る700個もの美しいビーズが寄せられました。
・退院キットの配布:現場のニーズに合わせ「退院シールと三つ折りチラシ」のセットへ内容を変更し、300セットを制作、全国30の病院へ配布を完了しました。
・ふりかえりビーズワークショップの拡充:対面での実施は、当初目標の年2回・20名を大きく超える計5回、38名のこどもたちが参加しました。
・オンラインでの対話の場の創出:当初「茶話会」として企画していたものを、ニーズに合わせて「オンラインふりかえりビーズ」に変更し実施した結果、24名のこどもたちに対話の機会を提供できました。
・体験型コラボイベントの実施:有識者(山口有紗先生、ラ・ファミリエ西様)をお招きし、保護者向けセミナーと親同士の対話、こども向けワークショップ を同時開催。目標を超える23名が参加し、支援団体との新たなつながり(3団体)を構築しました。
こちらのページでも様子を紹介しています。

事業の成果

本事業を通じて、こどもたちやご家族に前向きな変容が見られました。
・こどもたちの変容(主体性と深い自己表出)
「まなびのビーズ」が加わったことで、これまでの治療メインのプログラムでは語られにくかった「学校や勉強、友人のこと」「悔しかった思い」などがダイレクトに語られるようになりました。過去の辛い経験を美しいビーズという「意味のある形」にすることで、「自分はこんなに頑張ってきたんだ」という大きな自己肯定感や活力へと変換されています。また、グループワークを通じ、同じ経験を持つ仲間と出会えたことで孤独感が薄れ、思春期の患者が自ら闘病経験の伝え方を相談し合うなど、力強い成長が見られました。
・ご家族の変容と安心感の獲得
退院後、あえて触れずにいた闘病期間を親子で振り返る中で、親にとっては辛かった記憶を、こども自身が「痛みを乗り越えた自信」に昇華できていることに気づき、深い安堵を得るご家族が多くいらっしゃいました。また、保護者セミナーを通じて専門家から学び、同じ悩みを持つ親同士が交流できたことで、「ここは安心・安全な場所だ」という精神的な支えを提供できました。
・成果物
医療現場の運用指針となる「ガイドライン(説明手順書)」のバージョンアップと退院後の切れ目のない支援につながる退院キット(案内リーフレット)、対話を引き出す問いかけを盛り込んだ「ふりかえりビーズノート(改訂版)」という、今後も長く活用できるツールが完成しました。

自己評価

当初の目標を達成し、こどもたちの真のニーズに応える社会復帰支援のモデルケースの基盤ができたと評価しております。 定量的な目標達成にとどまらず、「まなびのビーズの規格調整」や「茶話会からオンラインふりかえりビーズへの企画変更」、「退院キットの実用化」など、現場の声に耳を傾け、柔軟かつ迅速にプログラムを適応させたことが、参加者の満足度と深い意識変容に直結しました。医療施設から社会(支援団体)へと患児をシームレスにつなぐ第一歩を踏み出すことができたと感じています。

課題および今後の展望

一方で、今回の取り組みを通じて、新たな課題と取り組むべきテーマも明確になりました。

1.保護者への継続的な情報提供と精神的サポートの拡充
アンケートから、高次機能障害などの晩期合併症、きょうだい児の悩み、進学や就職といった「少し先の未来」に対する保護者の具体的な情報ニーズが浮き彫りになりました。今後は今回築いたネットワークを活かし、こども本人だけでなく、保護者に向けたセミナーや交流の場を継続的に企画していくことが大きな展望です。

2.「支援の引き継ぎ(リファー)」の実運用フローの確立
ワークショップ等で拾い上げたこどもや家族の「固有の困りごと」を、学習支援やメンタルケアを専門とする他団体へいかにスムーズに繋ぎ、切れ目のない支援を実現するか、その具体的な連携モデルの構築を進めます。

3.医療施設内における運用体制の負担軽減
まなびのビーズの導入が進む中で、病棟での保管場所の問題や、日々の記録漏れといった新たな課題が見えてきました。現場の医療従事者(ビーズ大使)の負担を減らし、よりスムーズにこどもたちに届けられるような仕組みの改善を検討してまいります。

4.ファシリテーションスキルのさらなる向上
グループワークによるピアサポートの効果が実証された一方、さまざまな背景を持つこどもたちへのアセスメントには高度なスキルが求められます。今後も運営スタッフならびにビーズ大使の育成・サポート体制を強化してまいります。

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