事業について
岐阜県美濃加茂市は、外国にルーツを持つ住民の割合が10%を超える集住地域です。市内にはフィリピンにルーツを持つ家庭も多く、就学前のこどもの中には、家庭や保育の場で日本語に触れる機会が限られているこどもたちがいます。特に、フィリピンにルーツを持つ方々が運営する認可外保育園に通うこどもたちは、日常的には英語やタガログ語などを使って過ごすことが多く、小学校入学後に日本語での学習や学校生活への適応に困難を抱えるケースが見られます。そのため、就学前の段階から、日本語に触れる機会や小学校生活を見据えた準備を、地域の中でどのようにつくっていくかが重要な課題となっています。
一方で、この課題は「日本語を教えればよい」という単純なものではありません。こどもたちは、家庭で使う言葉や文化、保護者との関係、園での生活、そして小学校で求められる集団生活や学習環境の中で育っています。だからこそ、母語や家庭で使う言葉を否定せず、こどもたちが持っている言語や文化を大切にしながら、日本語や学校生活に少しずつ慣れていける環境を整えることが必要です。
本事業では、外国にルーツを持つ就学前のこどもたちを地域で支えるために、こども本人だけでなく、保護者、認可外保育園、地域住民、行政、教育機関が連携する仕組みづくりに取り組みました。1年目は、地域の中にこどもたちの学びを支える担い手を増やすこと、保護者がこどもの教育や言語について考える機会をつくること、そして行政・教育機関とともに就学前支援の必要性を共有することを中心に活動を進めました。
フィリピンの方が運営する認可外保育園に通うフィリピンルーツのこどもたち
美濃加茂市で開催された多文化共生イベントで、伝統的な竹ダンスを披露するフィリピンの方々
1年間の振り返り
1年目は、外国にルーツを持つ就学前のこどもたちを地域で支えるために、地域住民、保護者、認可外保育園、行政・教育機関との関係づくりに取り組みました。シンポジウムや研修を通じて、こどもたちが直面する教育課題や、母語・日本語の両方を大切にした支援の必要性について理解を広げることができました。
また、担い手育成研修を通じて、こどもたちの学びを地域で支えようとする人材が育ち始めました。保護者向けのワークショップでは、教会や外国人コミュニティ、企業と連携したことで、これまでつながりのなかった保護者にも出会うことができ、保護者自身が企画・運営に関わる動きも生まれました。
さらに、行政・教育機関との研修や視察、連携会議を通じて、美濃加茂市内でプレスクールの取り組みを進めるための課題や、認可外保育園との連携の必要性が整理されました。1年目を通じて、こどもたちを支える人、場所、機関が少しずつつながり、2年目の具体的な実践に向けた土台をつくることができました。
母国語も日本語も活用した戦略的な絵本の読み聞かせに関する研修を受ける担い手の方々
保護者ワークショップにおいて、こどもたちの教育について考えるフィリピン人保護者
2年目に向けて
1年目の取り組みを通じて、外国にルーツを持つ就学前のこどもたちを支えるためには、こども本人への支援だけでなく、保護者、認可外保育園、学校、行政、地域の担い手がつながる仕組みが必要であることが明らかになりました。
2年目は、1年目に育成した担い手や保護者メンバーとともに、市内の認可外保育園や学習拠点での実践を進めていきます。こどもたちが日常の遊びや活動の中で日本語に触れられる機会を増やし、小学校入学までに身につけておくことが望ましい内容を園や保護者と共有できる形に整理していきます。
また、保護者向けには、教会やコミュニティの場を活用し、小規模で参加しやすいおしゃべり型のワークショップを継続します。こどもたちが小学校に入ってから困りごとを抱えて初めて支援につながるのではなく、就学前から地域の中で安心して学び始められる環境づくりを進めていきます。
認可外保育園の先生に対して、教材の使い方を教えるNPO法人にわとりの会の代表
認定特定非営利活動法人 アイキャン
事務局長
福田浩之 さん
フィリピン大学大学院にて地域開発学を専攻する傍ら、NPO法人アイキャンの職員として、10年間フィリピンの路上のこどもの自立支援に従事。2023年に帰国し、日本で新規事業を立ち上げ、外国ルーツのこどもを対象とした学習支援・居場所づくりを実践。海外と日本の現場で「当事者の力を引き出す支援」を大切に活動している。