事業について
当団体は大阪府富田林市と堺市で2016年からフリースクールを運営しています。
つながるきっかけをデザインする、をミッションに不登校支援にとどまらず、貧困や、障害などさまざまな困難を抱えるこどもたちに、その時に必要な支援を事業を通して届けてきました。
2025年4月より、ベネッセこども基金の支援を受け、まなびに困難を抱えるこども向けの学習塾「志塾@」で高校生世代の受け入れをスタートしました。貧困世帯で発達障害や学習の困難を抱える高校生世代(15〜20歳)を対象に、毎週水・木・金の夜(18:30〜21:00)に少人数制の学習会を開いています。
1年目は、学習会を126回開催、延べ882名が参加しました。ここでは、この1年で感じたこと・学んだことのなかから、他の支援団体のみなさんにも参考にしていただけそうなトピックを4つお伝えします。
①学習支援は「遡り」から始める
発達障害や学習の遅れを抱えるこどもへの支援で大切にしているのは、「まずできるところまで戻る」ことです。今の学年の内容にこだわらず、本人が「わかった」と感じられる地点まで遡って始めることで、成功体験が積み重なり、学習への意欲や自己肯定感に変化が出てきます。この1年でも、スタッフが学力を丁寧に確認しながら小学校の内容まで遡ったところ、「塾は楽しい」と話すようになり、学校への足も向き始めた生徒がいました。
学習会の様子
②学校と「合理的配慮」を一緒につくる
発達障害のある生徒にとって、学校での合理的配慮の実現は学習支援と同じくらい重要です。ある生徒のケースでは、保護者が学校と交渉を重ね、「テストの点数ではなくその生徒独自の課題で評価する」という方式が導入されました。学習支援の場が保護者と学校の橋渡しになれることも、支援団体の役割の一つだと感じています。交渉が難しそうに見えても、具体的な支援内容と根拠を丁寧に伝えることで、学校側が一緒に考えてくれるケースは少なくありません。
③ キャリアコンサルタントと連携した「自己理解」の支援
学習支援と並行して取り組んだのが、外部のキャリアコンサルタントと連携した進路・キャリア支援です。自分の特性や強みを可視化するツール「ワークグラム」を使ったワークショップを開催し、生徒たちが自分自身について考える機会をつくりました。
高校生世代のこどもたちは、「働く」ことや「将来」についてイメージしにくいことが多く、学習意欲の低さの背景にキャリアへの見通しのなさが重なっているケースもあります。ワークショップ後には個別相談も実施し、バイトや進路について初めて具体的に話すことができた生徒もいました。「学ぶ理由」を自分で見つけていく支援として、他団体のみなさんにもお勧めしたい取り組みです。
キャリアコンサルタントさんによる、自分らしさ探検プログラムの様子
④ スタッフが共通して使える「支援ガイドライン」をつくった
支援の質をスタッフ間で揃えるため、「発達障害を持つ高校生世代への学習支援ガイドライン」を作成しました。スタッフが実際の支援経験をもとに書き込みながら仕上げたもので、完成後は新スタッフへの研修資料として使っています。支援のノウハウは個人の「暗黙知」になりがちですが、言語化して共有することで、組織全体の支援の質を底上げできると感じています。現在も実践を通じてアップデートを続けています。
2年目に向けて
2年目は、当団体の他の拠点にも活動を広げ、さらに支援者向けの勉強会を新たに始めます。私たちが1年目に学んだこと----「遡り学習」の設計、学校との連携方法、ガイドラインの作り方----を、同じ課題に取り組む他の団体とも共有していきたいと考えています。
特定非営利活動法人 志塾フリースクールラシーナ
理事長
田重田 勝一郎さん
1978年大阪生まれ コンピュータ総合学園HAL卒
卒業後、 17年間システム開発会社でプログラマ・システムエンジニアとして従事。在職中にCode for Sakai、CoderDojo堺を立ち上げ、ITによる地域課題解決や無料のこども向けプログラミングクラブなどの市民活動を開始。2016年、特定非営利活動法人 志塾フリースクールラシーナに理事長として入職。
2018年 第32回人間力大賞 会頭特別賞受賞
2020年 保育士資格取得