コラム
防犯 子どもの防犯対策、"場所"より"瞬間"に注意を
専門家コラム:防犯編VOL.75
担当:安全インストラクター 武田信彦
「子どもだけになる瞬間」を減らすことが防犯の基本
桜の開花が待ち遠しい今日この頃。もうすぐ、小学校では新1年生を迎える季節ですね。この時期は、通学路の防犯対策についての関心が高まります。こちらのコラムでも何度か取り上げていますが、「入学前に知っておきたい、子どもの防犯対策」についてまとめているコラム63、コラム64をあらためて確認いただければと思います。
さて、講演や研修会では、「危険な場所はどこですか?」「暗い道は危険ですか?」などの質問をいただくことがあります。私は、「お子さまが"ひとりになりやすい瞬間"こそ、注意が必要です」と答えています。ポイントは"場所"ではなく"瞬間"という視点です。ちなみに"場所"はタイミングによって状況が変わるものです。同じ場所でも、誰かと一緒にいる時もあれば、地域の方が見守ってくれている時もあります。そして、気づけば、ひとりになる瞬間が生まれることもあるのです。
すなわち、通学路の防犯対策で重要なポイントは、「子どもだけになる瞬間」をなるべく減らすことです。だからこそ、最も強い防犯力となり得るものは、保護者等の身近な大人による付き添いなのです。学校までの付き添いはもちろん、集団登校の集合場所まで送る、玄関先で見送る...など可能な範囲で見守りを行うことは、子どもを犯罪から守るための大きな力になります。一方、保護者と子どもの生活パターンが重なりにくくなっている現状では、防犯ボランティアなど地域の人々の見守り・助け合いの力が不可欠です。まさに、地域ぐるみの「見守りのリレー」によって、子どもたちの安全を守る必要があります。そのためには、地域における緩やかな協働・連携が欠かせません。たとえば、保護者のみなさまと地域のみなさまが気軽に挨拶を交わせる雰囲気づくりなどは、見守り・助け合いの力を高める一歩となり得るものです。
子ども自身も「自分だけにならない」を知っておく
「"外"では、いつでもどこも防犯対策が必要です」。私が、保護者や教員のみなさま対象の防犯研修会で伝えている大切なポイントです。ここでいう「外」とは、玄関ドアのカギを開けてから閉めるまでの間すべての空間...という意味です。すなわち、集合住宅の敷地、自宅の周辺、玄関等も含んでいます。「通学路の防犯対策」のイメージは、道路や公園、駐車場...など公共空間を思い浮かべるかもしれませんが、「自宅のまわり」「玄関」などのプライベートな空間でも防犯対策を忘れずに。最近、後ろからついてこられて、自宅やその周辺等で犯罪と遭遇するケースが増えているからです。「ここは大丈夫」「もう安心」などと聖域を設けずに対策をとっていただきたいのです。
そして、保護者や地域のみなさんによる「子どもだけになる瞬間」を減らす対策とともに重要なことが、子ども自身も「自分だけにならない」が、自分を守る防犯対策であるという知識を身につけることです。たとえ、地域ぐるみで取り組みがされていても、防犯ボランティアのみなさんがいない路地等を歩いてしまったら、見守り・助け合いの効果が及びません。見守ってくれる人がいる道を歩く、同じ学校の児童たちと歩く、お店や施設が多い道を歩く...など、なるべく「自分だけにならない」よう行動することが重要なのです。
子どもたちへの防犯指導においても、私がまず始めに伝えることは「ひとりにならない」です。見守り・助け合いが、お互いを守り合える大きな力であることを、大人とともに子どもたち自身にも知っていただければと思っています。
防犯対策を分かりやすくまとめている「子どもの安全安心ハンドブック」も、ぜひ活用いただければと思います。
安全インストラクター
武田 信彦 さん
犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。