公益財団法人ベネッセこども基金

コラム

防犯 いよいよ小学校入学、防犯対策を忘れずに!

子どもの安心・安全を守る活動

専門家コラム:防犯編VOL.85
担当:安全インストラクター 武田信彦


みんなで取り組む!通学路の防犯対策

 このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

 年が明け、4月には今年も多くの小学1年生が誕生しますね。ぜひ、安全で健やかな小学校生活を送っていただきたいと思います。
 この数年間、通学路の防犯対策を強化すべく政府がまとめた「登下校防犯プラン」をもとに安全への取り組みがなされてきました。私も、各省庁の防犯事業において助言を務める機会をいただきました。大切なことは、「子どもの防犯対策には、みんなで取り組む」という考え方です。保護者やお子さまだけではなく、関係機関や地域など社会全体で見守り・助け合う環境づくりが推進されています。こちらのコラムでもたびたび取り上げていますが、子ども、保護者等の身近な大人、地域の連携と協働による防犯・安全対策を広げていくことがこれからも重要になっていきます。

 ところで小学校へ入学する前に、現在暮らしている地域や学区内における防犯対策をリサーチしてみてはいかがでしょうか。たとえば、地域ボランティアやPTAのみなさまによる見守り活動、青いライトでパトロールする青色防犯パトカー、自転車の前かご等に「パトロール中」のプレートを掲げている「ながら見守り」、玄関先に貼られた「子ども110番」のステッカー...など、子どもたちの安全へ心を寄せる人々の取り組みを見つけてみましょう。通学路や集団登下校などについてわからないことがあれば、2月ごろに行われることの多い就学時検診の時に先生やPTAのかたに聞いてみるとよいでしょう。また、所轄の警察や自治体等から発信される防犯情報も参考になります。最近では、メールで情報が送られてくるサービスが増えています。
 さらに、お子さまといっしょにお買い物やお出かけをする際、地域のお店や施設等で積極的にあいさつすることもおすすめです。おたがいに顔見知りになることは、見守り・助け合いの力が育まれる大きな底力となり得るからです。


お子さまといっしょに育てよう!防犯力

 小学校の入学前、ぜひ行っていただきたいのが、保護者のかたとお子さまで一緒に通学路や地域をじっくり歩いてみることです。その際、大人と子どもがそれぞれの「防犯の視点」をもって歩くことがポイントです。特に次の2点についてはしっかり確認するとよいでしょう。

①ひとりになりやすい環境を確認してみる
とくに子どもがねらわれる犯罪の多くが「子どもだけの瞬間」に発生しています。家族やきょうだい、同級生等となるべく一緒に行動するようにしましょう。また、店舗や民家が少なく人気が無いような道はなるべく歩かないといった行動習慣も重要です。道を歩きながら、お子さまにアドバイスしてあげてください。

②助けてくれる所(逃げ込める所)をたくさん見つける
ところどころで立ち止まり、「ここから一番近くで、助けてくれそうな所はどこ?」等の投げかけをしてみましょう。お子さまの目線をとおして、助けてくれそうな所を探すことも効果的です。心の準備ができていれば、危険な状態になった際、すぐに逃げることができるからです。なお、私がおすすめしているのは、まずは公共施設。警察署や消防署、役所の出張所、図書館等です。さらに、子ども110番の家、地域密着型の商店や事業所、クリニック、高齢者福祉施設等もよいですね。また、学校や塾、おけいこの教室、友達の家、日ごろ家族と利用しているお店など、お子さまになじみがある所もおすすめです。なるべくたくさんリストアップできると、防犯対策として効果的です。

よりくわしい防犯力向上については、コラム63コラム64をぜひご覧ください。


防犯ブザーを忘れずに!

 日本では、小学校入学と同時に子どもだけでの行動が増える傾向があります。外に出かける際、忘れずに持って行ってほしいのが、防犯ブザーです。「防犯ブザーなんて、役に立つの?」といった声が聞かれますが、一般市民が携帯できる防犯道具は、ほぼ防犯ブザーしかありません。武器や凶器になるような物は法律で厳しく規制されているからです。また、スタンガンや催涙スプレー等の護身グッズは、使い方によってはこちらが加害者になってしまうリスクがあるので、持ち歩きたい場合は警察の指導を受けることをおすすめします。

 防犯ブザーは、高音が鳴る道具ですが、人を傷つけることはありません。防犯ブザーの効果はおもに2点あります。

①「まわりにSOSを知らせる」こと
危険に遭遇した際、声が出にくくなることも想定されますが、声が出せなくなっても大きな音でSOSを知らせてくれます。なお、防犯ブザーの音に反応してくれる人がいなければ効果が弱まるため、子どもたちの安全へ意識を向ける地域の連携・協働が欠かせないのです。

②「隙を生み出し、逃げる時間を作る」こと
防犯ブザーの本来の意義は、相手を驚かせて逃げる時間を生み出す効果だと考えられます。そのためには、日ごろから電池の確認を行い、利き手がすぐに届くところへ装着しましょう。腰まわりが一番おすすめですが、服装等によっては難しいため、ランドセルのベルトでも構いません。しかし、ベルトに固定されてしまうと使用しにくい場合があります。私は、簡単に取り外すことができるキーホルダータイプをおすすめしています。既製品の場合、装着部分の金属をカラビナなどに替えてもよいですね。

なお、防犯ブザーを選ぶ際は、デザインよりも音質、音量、耐久性で選んでください。全国防犯協会連合会では、ブザーの性能を評価して「優良防犯ブザー」を発表していますので、選ぶ際の参考にしてみてください。

 お子さまの防犯力は、"生きる力"の実践といえるもの。そして、生きる力は家庭や学校で育まれるものです。特別なものではありませんが、大切な力を忘れないよう、くり返しお伝えいただければと思います。



うさぎママのパトロール教室

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター

武田 信彦 さん

犯罪防止NPOでの活動を経て、2006年より安全インストラクターとして活動を開始。「市民防犯」のパイオニアとして全国で講演やセミナーなど多数実施中。子どもたちを対象とした「安全ワークショップ」も好評を得ている。
著書には「SELF DEFENSE 「逃げるが勝ち」が身を守る」(講談社)ほかがある。



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