公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2021活動報告|外国につながる子どもたちの日本語学習を支える教室のオンライン化事業

認定特定非営利活動法人 地球学校

経済的困難を抱える子どもの学び支援

1年目の助成期間を終え、実行項目の1つである「オンライン指導のスキルアップと教材検討」についてご報告いただきました。
事業の詳細などは以下からご覧ください。

採択団体一覧|2021年度<経済的困難を抱える子どもの学び支援活動助成>

【助成先訪問】外国ルーツの子ども向け無料日本語教室の「地球っ子教室」(横浜)を訪問しました!>




オンライン指導のスキルアップと教材検討 実施概要と結果 スキルアップ講座から見えてきたこと 子どもの発達と言語獲得講座 参加者の声 1年間の総括および次年度の取り組み概要と抱負

オンライン指導のスキルアップと教材検討 実施概要と結果

日本語学習教室のオンライン化にむけて、以下のABCを実施しました。

A【スキルアップ講座】 
5~7月、6回シリーズで講座を実施(1回90分・土曜日午後と木曜日夜の2コース)。約20名の会員が参加しました。
1回目:PCの基本操作とZoomの設定
2回目:オンラインで使える教材作成
3回目:Zoomの画面共有と操作
4回目:音声教材・映像の共有
5回目:クラウド共有
6回目:実践発表・体験会
最終回の成果発表会では、学んだスキルを活用して各自が作ったアイスブレイク用のクイズやゲームを披露し合いました。講座内容を反映した『おんらいん手引書』も完成しました。

B【オンライン学習教材作成】
スキルアップ講座に続けて7月から始まった教材作成チームには、地球っ子教室のメンバー11名が参加し、3月まで毎月1回ミーティングをしました。
今年のゴールは、オンライン土曜教室のオープニング10分間「みんなの時間」で使える教材をつくろう!とアイデアを出し合い21種類のスライド教材が完成しました。12月からは4つのチームで活動しました。
チーム分け: 【学校行事】【ことば遊び】【クイズ】【オノマトペ】

C【講座:子どもの発達と言語獲得】
講師:北 洋輔 氏(一橋大学森有礼高等教育国際流動化機構 准教授)。
第1回 1/8 (土)「基本的な子どもの発達とその障害」~言語環境 /
第2回 3/26(土)「外国にルーツをもつ子どもの発達を考える」~多言語環境。
各回Zoomで90分(13:00-14:30)、約30名が参加。

地球っ子たちの土曜教室・オンライン「みんなの時間」

スキルアップ講座から見えてきたこと

助成一年目のはじめにスキルアップ講座(A)を開催できたことは非常に意味のあることでした。特に、最終回では学んだスキルを活かして、各自が作成した独自の学習教材の発表会をしたことにより、オンライン学習教材(B)の作成に自然とつながりました。そのオンライン・ミーティングでは、毎回GoogleのJamboard(ジャムボード)に付箋でコメントを入れることで参加者の声を共有したことも新しいチャレンジでした。
スキルアップ講座を開催してわかったことは、オンラインZoomのスキルのみならず、パソコンの基本操作やネット検索、Power Pointや画像処理など、個人のPCスキルの差が大きいということです。それでも、できないことが一つでもできるようになることは、参加者にとって大きな喜びにつながりました。また、得意・不得意のスキルを参加者同士が教えあう機会にもなりました。
今回の試みは、NPO内の事業部の枠を超えて取り組めたことで、NPOの組織としての一体感が強まったことに、とても感謝しています。

Aに参加後Bに参加したメンバーの声をご紹介します。
●「パワーポイントで楽しい教材を作ってみたい」というのが、スキルアップ講座に参加した第一の理由でした。最初は一枚のスライドを作るのも恐る恐るでしたが、最近はレイアウトや配色に気をつかったり、イラストを挿入してみたりと、見やすい、わかりやすい、楽しい教材にするために色々チャレンジしています。でも、そうなると美的センスも必要になります。  
●教材用のイラストや写真はオンラインで手軽に手に入りますが、著作権には気をつけています。自分で撮った写真や自分で描いたイラストを使えれば理想的なのでしょうが...なかなか難しいですね。  
●紙の教材と違い、オンラインの教材にはあまり文字数を入れることができないので、本当に必要な情報を見極めることも必要です。紙の教材とオンラインの教材、それぞれの長所と短所を生かしながら、使い分けることが理想的だと思います。

スキルアップ講座 対面とオンラインの同時開催
オンライン・ミーティングで教材を披露したあとのJambordコメント
【講座:子どもの発達と言語獲得】講師:北 洋輔 氏

子どもの発達と言語獲得講座 参加者の声

●外国籍を持つ子供達の日本の教育現場における現状を把握でき、大きな変化をかなりのスピードで起きていることを知り大変驚きました。と同時に、少しでもできることから対応していく必要を実感し、地球っ子教室の活動の意義を強く感じました。
●現場のモヤモヤした悩みを、専門の方が、寄り添って翻訳してくださった感じがしました。悩み方の視点の、整理ポイントを教われました。
●発達の問題なのか、言語の問題なのかという二値論より、今いる場所、これから向かう場所を示すメリットを取るという言葉は、現場に出ている方ならではのものだと思いました。
●発達の問題か言語の問題かにとらわれず、本人に必要な支援を見極めることの大切さがわかり、迷いが吹っ切れた感じがしました。
●「気づく」ことが大切。知識として持っていて損はないが、専門家じゃないからとかではなくて、自分たちには何ができるかを仲間と考えることが大切。
●「多言語という先入観はNGということ。言語に惑わされずに判断すること。その子の良さや力を見落とす。」子どもに対してだけではなく、大人の学習者と接するときにも必要な考え方だと思いました。

1年間の総括および次年度の取り組み概要と抱負

コロナ禍2年目、外国につながる子どもたちを言葉の面からサポートしている地球っ子教室では、対面とオンラインの同時開催が日常となりました。オンライン参加を希望する子どもの数も増え、平均で毎回7名の参加がありました。必然的に、オンラインで子どもの学習サポートができる支援者の数が必要になります。それはA・Bの取り組みのおかげで、安定的に継続してオンライン教室を開催することができました。コロナ禍1年目には考えられなかったことです。

オンライン教室で個別指導をするブレイクアウトルームでは、公開されているフリー教材に助けられつつも、一人ひとり違う目の前の子どもの成長段階に適した教材があったらいいな~と感じることが多々あります。そんなときは、担当者が独自にスライドを作ったり、工夫を凝らしたりして、子どもとの時間を過ごしてくれました。対面教室のときとは違う新しいチャレンジです。著作権に配慮する必要があることで困難さも感じます。だからこそ、自分一人ではなく、大勢でプロジェクトとして取り組むことに意義を感じます。ちなみに、NPO内では通称「プロジェクトB」と呼んで活動しています。

さて、オンライン教材として一年目にメインで取り組んだのは「オンライン遊び」でした。毎週土曜日のオンライン教室では、個別の部屋に分かれる前に、メインルームで、子どもと支援者が全員で、画面上で、約10分の「みんなの時間」と称する「オンライン遊び」に取り組み続けました。何かを教えること以上に、子どもとの言葉のやりとりを大切にし、子どもたちの豊かな発想につながるような遊びと学びの時間をたくさん重ねました。

次年度は、「オンライン遊び」の教材に加えて、教科学習や日本語学習につながるスモールステップの独自教材を増やしたいと考えています。
地球っ子教室の子どもたちが学習でつまずきがちな点を克服できることにつながる「あったらいいな~」という教材を作りたいです。そして、ゆくゆくは同じ気持ちで活動している外国につながる子どもの支援の場で使ってもらえるよう、広く公開することを目標にしています。そんな目標の第一歩となる大切な一年目でした。

認定NPO法人地球学校「地球っ子教室」

認定特定非営利活動法人地球学校 理事長

丸山伊津紀 さん

福武書店、ラボ日本語教育研修所非常勤講師(継続中)。2000年に地球学校に参加し2008年理事長就任。
2020・2021・2022年かながわ国際政策推進懇話会委員、横浜市地域日本語教育総合調整会議委員。

SNSでこの記事をシェアする

一覧に戻る