公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2021活動報告|医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたちの"食"の世界を広げるプロジェクト

特定非営利活動法人 i-care kids 京都

病気・障がいを抱える子どもの学び支援

2021年度の1年間の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。


2021年度事業紹介|医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたちの"食"の世界を広げるプロジェクト 【助成団体活動見学】i-care kids京都によるシンポジウム「医療的ケア児×食べること」に参加しました


事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望

事業の目的

①医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたちの食育についての知識や経験を積み上げ、それを発信することで、園児の保護者や園児以外の医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたちの保護者が家庭での"食べること"に繋げていくことができる。

②子どもたちが食べることについて、育てる、五感で触れる、食べる体験を広げることができる。

③子どもたちのケアに携わる支援者や保護者が食についての講座を受けることで、普段の食生活を見直したり、質を高めることができる。

④地域や全国に、この活動が広がり、他の施設での取り組みのモデルとなり得る。

事業の内容

重点実行項目①
「医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたち×食育」のホームページのページを作成し、情報発信を行う。(対象:医療的ケア児家族、支援者 不特定多数)

重点実行項目②
1年を通して、医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたちと食べ物を育てる、五感で触れる、食べる活動を実施する。(対象:小規模保育園キコレの園児8名 2021年4月~随時・毎月1,2回年間計画に沿って実施)

重点実行項目③
家族や支援者向けの「医療的ケア児×食育」シンポジウムの実施。(対象:医療的ケア児家族、医療、福祉、教育、保育、療育、行政等関係者 約80名 2021年12月)

「今日はパン作りをするよ!」絵本からイメージを膨らましていきます。
夏野菜のトマトで今年もキコレケチャップを作りました。

事業の結果

重点実行項目①
「医療的ケア児や重い障害を抱える子どもたち×食育」のページを法人ホームページ内に2021年4月に設置。小規模保育園キコレでの食育の取り組み、ペースト食の作り方等の情報を発信した。同年9月にはFBにも記事を連動させた。

重点実行項目②
小規模保育園キコレの園児8名とスタッフ14名に対して、季節の野菜を育てる、調理する、うどん打ちをする、季節の野菜を知るなどの計16回の食育プログラムを実施。また2022年2月には、保護者と園児たちと一緒に味噌の仕込みワークショップを実施した。

重点実行項目③
2021年12月にシンポジウム「医療的ケア児×食育」をひとまち交流館京都にて実施。医療的ケア児家族をはじめ、医療、福祉、保育・療育等関係者80名が参加した。小規模保育園キコレの食育プログラムを紹介するとともに、島田療育センターはちおうじの小沢浩先生に「食べるって楽しい」をテーマに講演いただいた。


事業の成果

・ホームページ内の食育ページの設置は、園での食育の取り組みや医療的ケア児、重い障害を抱える子どもたちの食についての発信をする場ができ、保護者や支援者がいつでもアクセスでき情報を得られる場として今後も機能していくと思われる。

・園での食育プログラムでは、昨年と同じプログラムと新しいプログラムを混ぜて実施したが、継続プログラムでは子どもたちの取り組みの変化、成長発達を見ることができた。新しいプログラムにもスムーズにチャレンジすることができ、経験の積み上げをすることの大切さを実感した。

・季節のお野菜を育てるプログラムでは、経管栄養から経口摂取に移行中の園児が園で育てたお野菜を食べられるようにと、家庭でまず食べてみるというモティベーションにつながった。

・自分が育てたお野菜は、積極的に食べることができるようになる園児も複数名いた。

・親子での味噌づくりワークショップは、コロナ禍で難しかった母親同士の交流の場となった。

・シンポジウム「医療的ケア児×食育」は、医療的ケア児の食育についての注目度も高く、定員いっぱいの80名がシンポジウムに参加した。質疑応答でも熱心に質問する参加者がいたり、終了後も支援者同士が情報交換をしたり、久しぶりに対面でのシンポジウムが実現できたことで、横のつながりがうまれた。

冬に仕込んだお味噌を開ける日。「お味噌はお豆とお塩とこうじでできているよ。」と給食の先生からお話を聞きます。
収穫した冬野菜はとってもきれいな色。苦手なお野菜も自分たちで育てることで食べられるようになりました。

自己評価

・食育は小規模保育園キコレの保育の3本柱の一つであり、1年目から熱心に取り組んできたが、その成果を外に発信できるホームページのページができたことは有意義であった。今後は、発信のペースをより頻回にしたり、質問や意見など閲覧者のレスポンスが得られるようなページにしていきたいと考えている。

・園での食育プログラムの実施は、昨年度の実績もあり、今年度もさらに積み上げをすることができた。年間を通して、子どもたちの成長を感じることができるとともに、保育の中で、食べることを扱うことで、関わるスタッフも楽しんでプログラムを実施することができた。好き嫌いが減ったり、新しい食材を食べるきっかけになったり、季節を感じながら、様々な取り組みを通して、手ごたえを感じつつ、取り組むことができた。

・シンポジウムの実施は、コロナの感染がいったん収まった12月に無事に実施することができ、直接会うこと、同じ空間で学ぶことの大切さを実感することができた。シンポジウムを通して新しい横のつながりも生まれたことは、とても有意義であった。

課題および今後の展望

「食べること」はどんな障害や疾病があったとしても、子どもたちの成長発達には欠かせないものである。小規模保育園キコレでは、子どもたちが共通して楽しめることとして、食べることをとても大切にしており、4つの保育方針の1つも「障害や病気があってもなくても、五感を通して豊かな「食の体験」を積み重ねる。」というものになっている。

今後も、子どもたちの"食"の世界を広げることについては継続して取り組んでいく予定である。ホームページの食のページについても、よりアクセスしやすく、レスポンスが得られやすい形態にしていきたいと考えている。また、地域とのネットワークづくりも積極的に行い、"食"の世界に関わる人たちとの交流も行っていきたいと考えている。

特定非営利活動法人i-care kids京都

代表理事
アートセラピスト・保育士・特別支援教育教員免許取得・医療的ケア児家族

藤井 蕗 さん

京都教育大学発達障害学科卒業後、ドイツ、スウェーデンにて障がい児・者の支援に携わる。2004年英国ハートフォードシャー大学大学院アートセラピー科修了。帰国後、医療法人にて発達障がい児、高齢者、緩和ケアの領域でアートセラピーを実践。二男・旅也が18トリソミーを抱えて生まれてきて、在宅移行する際に退職。著書「a life 18トリソミーの旅也と生きる」(クリエイツかもがわ出版)。自分自身の体験を通して、障害や病気を抱えた子どもを授かったとしても、お母さんたちが自分の仕事を続けられる社会にしたい、自分たちと同じような体験をしている子どもたちや家族たちのプラットホームとなるような場所を作りたいと考え、「i-care kids京都」を立ち上げた。

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