公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

最終活動報告|地域の力を総動員して取り組む学習支援事業の強化

特定非営利活動法人ユースコミュニティー

経済的困難を抱える子どもの学び支援

2020~2022年度の助成期間を終えられた特定非営利活動法人ユースコミュニティーより、3年間の取り組みと成果についてご報告いただきました。

事業目的:
① 拠点リーダーの育成と確立
教室ごとの課題分析と業務の改善を行い、拠点リーダー制度(キャリアシステム)を新たに確立し、拠点リーダーによる教室運営の拡大を目指す。研修やヒアリングなどで改善を重ねながらブラッシュアップする。拠点リーダーシステムが機能して、運営基盤が固まり、次のフェイズを目指せる状態を確立する。

② あらたな活動資金獲得のためのファンドレイジングの確立
助成金や委託費に依存しない運営資金の確立。支援者集め(ファンドレイジング)の礎をつくる。※助成前の年間寄付返金額約60万円について、3か年計画により、年間200万円の目標を目指す。ファンドレイジングの取り組みにより新たな資金調達ルートが確立している状態を目指す。

③ 子どもの支援の輪を広げるための地域ネットワークの確立と連携事業の実施
地域の子ども支援団体、地縁団体(自治会・町会)および社会福祉協議会等と子どもの支援のネットワークの確立。そしてこの地域ネットワークが安定して運営され、連携や協働事業、地域へのイベントや学習会などが定期的に行う。さらに社会福祉協議会や行政からの後押しを受けられる状態を目指す。



2020活動報告|ファンドレイジング確立のための基盤整備

2021活動報告|学習支援事業の基盤強化:拠点リーダーの育成



東京都大田区を中心に学習支援活動を定着させていたユースコミュニティさんが、中長期的な事業の在り方を見据えて、「事業基盤」の強化にあたられた3年間。コロナ禍と重なり想定通りにいかない状況もある中で、人材育成、ファンドレイジング、地域ネットワークと、様々な領域で非常に多くの種をまき、モデルとなる成果を出した3年間でした。今後も活動に注目し続けたいと思います。(ベネッセこども基金事務局)



1年目の活動内容と結果 2年目の活動内容と結果 3年目の活動内容と目指す状態 3年目の結果 課題および今後の展望

1年目の活動内容と結果

活動内容 
① 現教室(クラス)の現状分析と改善、拠点リーダーの育成
② 新たな資金調達の取り組み(特定財源に寄らない多様な収入源の確保→寄付金の拡大)
③連携のネットワークづくり

結果 
① 現状の教室業務を棚卸、整理・分析しながら、スタッフ全体で改善策を検討。教室運営のリーダー育成プログラムを策定し、研修を実施。
② 事業概要と寄付協力を掲載したパンフレットを作成。ネット戦略を強化。団体内にファンドレイザーを育成。過去最大の寄付金(99万円)を得ることができた。
③ 大田社協や大田区の他のNPO団体の協力のもと、地域の子ども支援団体とのネットワーク(フードバントリー等の協力)を作りました。コロナ禍の影響で、子ども食堂との合同イベントは予定通り実現しませんでしたが、新たな子どもの支援策の提言などを地元行政に懇談できる仕組みをつくりました。

成果物
・「教室運営マニュアル」の作成
・「団体概要パンフ」の作成(寄付者・支援者獲得を意識した)

2年目の活動内容と結果

活動内容 
① 拠点運営および地域連携の拡大→1年目に作成した「教室運営マニュアル」を活用した研修を定期開催。 長引くコロナ禍の中、オンラインでの学習支援マニュアルを新たに制作。
② 寄付財源の拡大と安定→新たな支援者獲得ルートの開拓および分析と評価を進める。
③ 地域連携の拡大→地域団体とのネットワークを拡大し、あらたに地域に「子ども部会」を立ち上げました。

結果 
① 拠点リーダーの育成プログラムを実施。団体内のキャリアシステムを創設しました。
② 地域に根付いたNPOの優位性をいかし、大田区内の事業体(ロータリークラブ、青年会議所等)への働きかけをしました。結果としてロータリークラブからプリンターやノート等の寄贈(およそ30万円相当)を受けたり、寄付チラシを配布するルートを作りました。寄付金の獲得については、前年度を更新し、過去最大の寄付金(149万円)を得ることができました。
③ 子ども部会が中心となり、大田区内のNPO団体と大田区社会協議会の連携が進みました。フードバントリー制度の確立(食品を寄贈したい区民や企業から社協が受け入れて管理し、困窮家庭に配布したり、区内の子ども支援団体に提供するなど仕組みづくり)や、大田区区議会議員との定期的な懇談会を実現しました。

成果物
・オンライン学習支援マニュアル
・郵便振替つき「寄付チラシ」

3年目の活動内容と目指す状態

3年目の目指す状態
① 拠点リーダーシステムの基盤が固まり、拠点の安定運営ができ、拡大を目指せる状態。
② 新たな資金調達ルートの目途が立ち、安定した新たな収入源が確立し、予算化できる状態。
③ 子どもの支援を広げる地域ネットワークが安定し、連携や協働事業、地域イベントや学習会などが定期的に行える状態。社会福祉協議会や行政からの後押しを受けられる関係性。

3年目の活動内容
① 拠点リーダーによる安定した教室運営と教室の拡大
団体の活動メンバー全員を対象にした意識調査とその調査結果の視覚化による振り返り、ミッションビジョンの再確認と再確立

② 本格的なクラウドファンディングの実施。
アンバサダーという視点を絡めたマンスリーサポーターや賛助会員の獲得。ファンドレイジングを強化するための団体HPのリニューアル

アンバサダー学習会

③行政の施策だけではカバーしきれない諸問題に対処する地域のネットワークを強化する。地元の町会・自治会と連携して子ども支援事業やイベントを取り組む。

調布地区青少年委員学習会

3年目の結果

①CRファクトリーのコミュニティーキャピタル診断およびワークショップを実施。診断では162名から回答を得て、ミッションビジョンの浸透、自己有用感、居場所間の3つの因子から(偏差値も含めて)分析しました。そしてフィードバックするためのワークショップを2回実施し、団体内部の強化につながりました(今後、診断については毎年定期的に実施する予定です)。

②新たなクラファン手法(サポートファンディング)をシンカブルのファンドレイザー伴走のもと実施。約34万円の支援を得ることができました。結果、これまでの実績をさらに更新し、過去最大の寄付金(181万円)を得ることができました。

クラファン伴走


③大田区の嶺町町会と合同し、夏休みの子どもイベント(夏休み宿題お助け塾、長期休み昼食支援)を取り組みました。また②のクラファン時の連携として他団体から応援メッセージ等の広報協力や地元プロバスケットボールチームの試合会場内でのチラシ配布等の新たな連携も生まれました。

嶺町町会合同地域イベント
アースフレンズZクラファンチラシ配り

課題および今後の展望

課題及び今後の展望
① 拠点リーダーの育成について、多くのNPOでは代表や一部のコアメンバーの負担が集中しており、持続可能な事業運営や拡大などに課題を抱えている声をよく聞きます。そんな中、拠点リーダー育成(キャリアシステム)を3年かけて作り上げ、スキームとして確立することができました。懸念点を強いてあげるなら、拠点教室の文化継承があります。実際、拠点リーダーの教室への影響力は非常に強く、代替わり(引継ぎ)において、リーダースキルの資質だけでなく、他のボランティアや子ども達との協調が欠かせないことです。(次期)リーダーを務める人物の柔軟性とその拠点へのマッチングが一つの課題です。

② 資金調達について、理論とスタッフスキルの確立、そして実践を通じ、新たな資金調達の礎を築くことができました。過去3年間において、いずれも寄付金額を更新し、助成期間内の最終目標であった200万円に近い寄付を得ることができました。今後は、この取り組みを継続させるべく、毎年ファンドのプロジェクトチームを結成し、役割分担(アイキャッチ画像づくり、リード分テキスト作成、メッセージ依頼、SNS拡散)をしながら、団体内の多くのスタッフからの協力を得て、支援者を増やし、安定した資金調達を進めていきます。

③ 地域ネットワークの確立について、この3年間のコロナ禍もあり、当初予定していた企画(イベント)はなかなか行えませんでした。しかしコロナ禍だからこそ、支援すべき子どもとその家庭を支えるための地域ネットワークと協働の取り組みが前進しました。この5月から5類に移行され、いよいよコロナ前の日常が戻ってくることが期待されています。そんな中、私たちNPO・市民活動には再起動が求められています。地域団体と合同しての学習会やイベントの開催を積極的に企画して取り組んでいきます。

3年間の事業の成果と評価
助成開始年度の4月がコロナの最初の緊急事態宣言と重なってしまい、当初の予定どおりに進められず、その後も想定どおりに進まなかったというのが、率直な感想です。しかしながら、そうした中にあってもベネッセの方が柔軟に対応していただき、コロナ禍においてできることを模索しながら、当初の目的はある程度(自己評価すると88点ぐらい?)達成できたと思います。ベネッセこども基金さんのような組織基盤の強化に使える助成金は現状ほとんどないため、私たちぐらいの団体の規模が中長期的な展望と事業を見据えた土台を作りにあたり、今回の助成には大変助けられました。本当にありがとうございました。また成果報告会などの集まりでも、他の助成団体様の取り組みが大変勉強になりましたし、他団体の方たちと繋がれたことが今後の財産にもなりました。

3年間本当にありがとうございました。他団体への参考事例など、何か恩返しができる機会があればと考えております。今後とも宜しくお願い致します。



特定非営利活動法人 ユースコミュニティー

代表

濱住 邦彦さん

2012年任意団体ユースコミュニティーを設立。2014年にNPO法人化、代表理事に就任。2016年5月より団体の専従を務める。 表彰:住友生命「未来を強くする子育てプロジェクト」未来賞。 行政の委員歴:2014~15年大田区青少年問題協議会委員、2016年より大田区子どもの貧困対策に関する計画検討委員(大田区子どもの生活応援プラン推進委員)。 2022年エクセレントNPO「市民賞」を受賞。

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