助成団体紹介
2023活動報告|子どもの職業観を育てる「先輩取材」「動画製作」「交流会」を実施
認定特定非営利活動法人 ラ・ファミリエ
助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
2023年事業紹介 病気のある子どもの職業観・勤労観を育む「先輩のおしごと!」ビデオ配信&インタビュー 事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 自己評価 課題および今後の展望
事業の目的
認定特定非営利活動法人ラ・ファミリエでは、病気のある子どもとその家族の悩みに寄り添い、相談支援や相互交流支援、きょうだい支援や学習支援などを行っています。
その中の就職支援事業にて、病気のある子どもたちの就労について必要な支援または情報の提供を行っています。相談場面の中で、進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期である学齢期に長期入院・長期療養していた子どもたちの中には、身のまわりの仕事等への関心や意欲を高くもつ機会がなかったり、将来の自己イメージが漠然としていたりする子どもたちも少なくないと感じています。また、自身の入院・治療経験から医療関係職員に就く方も多いのですが、働き始めて早期に退職したり、「仕事といえば医者や看護師だと思っていたが、もっと他の仕事を考えても良かったかもしれない」と悩んだりする方も少なくありません。
どのように仕事を選択しても起こりうる出来事ではあるものの、具体的な職業・勤労イメージが持ちにくかったり、職業の選択肢を幅広く知った上で選択する経験ができていなかったりすることも要因の一つではないかと考えています。
このような現状から、病気のある子どもたちが入院・長期療養などにより不足してしまいがちな、いろいろな職業や生き方があることを知ったり、将来の夢や職業を思い描き自己の将来の生き方について関心・意欲を高めたりする機会、すなわち職業観・勤労観を育む機会を意図的に設定することが必要だと考えました。
事業の内容
(1)先輩(インタビュイー)へ仕事についてのインタビュー実施、映像編集と配信
・一日の仕事の流れや内容、その仕事に就いた理由や病気がある中で仕事を続けているコツなど、子どもたちが具体的にその職業のことや社会人生活のイメージができる映像をめざして撮影・編集をし、配信を行います。
・視聴対象:愛媛県内に住む病気のある子どもやその家族、支援者等
・映像の数:合計6本
(2)先輩(インタビュイー)と病気のある子どもたちの交流会
・社会人の先輩と子どもたちが直接やりとりできる機会を設け、子どもたちが気になること、聞いてみたいことを直接聞ける時間をとります。先輩との時間の中で、具体的な社会人像を知り、将来の自分について思い描くきっかけとなることを図ります。
(3)周知啓発活動
①成果報告会
・事業の活動について成果報告会を実施します。また、成果報告会の中では子どもたち自身が学んだこと・考えたことを発信する時間を設けます。病気のある子どもたちが機会を逃しがちな「自分の気持ちを伝える」場面を作り、職業観・勤労観とはまた違う生きる力を育むきっかけとしたいです。
・回数:1回
・連携先:愛媛大学医学部小児科、愛媛県立中央病院、松山赤十字病院、心臓病の子どもを守る会愛媛支部、がんの子どもを守る会愛媛支部
②HP・SNSでの理解啓発
・事業について、団体HPやFacebook、公式LINE、月刊便りで活動報告を行います。
・回数:年12回以上
事業の結果
(1)先輩(インタビュイー)へ仕事についてのインタビュー実施、映像編集と配信
・映像の数:合計6本
・動画に出演した先輩の職種:グラフィックデザイナー、会社員(事務)、警察事務、小児科医、AIによるデータ管理、建築会社事務&歌手
・動画の内容:
①先輩の仕事について:先輩の職種、仕事の具体的な内容、1日のスケジュール
②先輩の身体のこと:先輩の病気、普段の生活で気をつけていることや制限
③先輩が今の仕事に至るまでの経緯:今の仕事に就こうと思ったきっかけ、進路
④仕事を続けていく工夫:働いていて困ったことや悩んだこと、仕事を続けるために工夫していることやコツ
⑤後輩たちに伝えたいこと
・動画は動画サイトの限定公開で公開しており、当法人の各種SNSやHP、月刊便りでの周知の他、ポストカードを作成し県内の病棟へ送付しました。
(2)先輩(インタビュイー)と病気のある子どもたちの交流会
・実施日時:①2024年1月27日(土)、②2024年3月24日(日)
・会場:①地域子どものくらし保健室(松山市内)、②ファミリーハウスあい(松山市内)
・対象:愛媛県内の病気のある子ども
・参加人数:①中学生2名、動画に出演した先輩3名、②小学生3名、中学生2名、高校生2名、動画に出演した先輩2名
(3)周知啓発活動
①成果報告会
・日時:2024年3月20日(水・祝)15:10〜16:10
・開催形式:対面とオンラインのハイブリッド形式
・会場:愛媛大学医学部総合教育棟2階 基礎第二講義室
・参加人数:45名
・内容:事業の成果報告、交流会に参加した病気のある子どもの発表、動画に出演した先輩2名の発表、質疑応答
②HP・SNSでの理解啓発
・事業について、団体HPやFacebook、公式LINE、月刊便りで活動報告を行いました。
事業の成果
(1)先輩(インタビュイー)の働く様子の撮影・映像編集と配信
・実際に働いている病気のある社会人の語りを通して、子どもたちがさまざまな仕事や生き方があることの気づきを得るとともに、将来の自分について具体的に考えるきっかけとなる動画作成ができました。
・視聴者から「ニーズはあるので、動画ならいつでも観ることができるしとてもいいと思います」などの感想が挙がりました。
(2)先輩(インタビュイー)と病気のある子どもたちの交流会
・一方通行となる動画配信だけではなく、交流会を実施することで、子どもたちとのやりとりをしながら具体的な話をする中で、子どもたちの疑問なども取り上げることができ、子どもたちの学びの深化や具体的な将来像を描くきっかけになりました。子どもたちからは「実際に話が聞けて良かった」「今まで就きたい仕事は考えてはいたけど、より具体的にやりたいことについて考えるきっかけになった」などの感想が挙がりました。
(3)周知啓発活動
・報告会をすることにより、仕事や将来の社会生活について、登壇した子どもたち自身の学びの振り返り・深まりとなりました。また、病気のある子どもたちや家族だけではなく、支援関係者など地域に理解啓発を図ることができました。
・「子どもも登壇したのは印象深い」「先輩方の経験に基づいた報告は、後輩にとって参考になる貴重な情報だと思った」などの感想が挙がりました。
自己評価
広く子どもたちに届けることができる「動画」と、一方通行にならず子どもたちも自分の気になっていることや疑問をリアルタイムで質問することができる「交流会」のそれぞれの良さを発揮しながら、実際に働いている先輩からの言葉を子どもたちに還元することができ、子どもたちが自分の将来を自分ごととして考えるきっかけを作れた1年間だったと考えています。
課題および今後の展望
交流会に参加した子どもから「自分が実際にアルバイトなどで働き始めたら、また交流会に参加してみたい」と感想が挙がりました。活動は今後も継続していきたいと考えています。
また、動画の中で先輩たちが話した「就労継続のコツ」と「後輩たちへ伝えたいこと」と、研究などで必要性が明らかにされているエンプロイアビリティやヘルスリテラシーの獲得などは共通する項目が多くありました。これらを子どもたちに還元していけるよう、団体の活動の中での子どもたちとの関わりや、地域への周知啓発を継続していきたいと思います。
檜垣 高史さん
小児科医として病気のある子どもやご家族と関わる中で、子どもたちやご家族には多くのハードルがありそれぞれ個々にあった支援が必要であると感じ、現在の活動につながっている。
愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座 教授
認定特定非営利活動法人ラ・ファミリエ 理事長
愛媛大学 移行期・成人先天性心疾患センター センター長