公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2024活動報告|学習サポートや進学ガイダンスの開催、教育相談事業を通じて外国につながるこどもと親を支援

特定非営利活動法人 ABCジャパン

経済的困難を抱えるこどもの学び支援

2年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。

2023年事業紹介 神奈川県・群馬県の外国につながるこどもの状況調査・教育相談とフリー スクールのモデル化事業 2023活動報告|群馬県太田市と横浜市にて、外国につながるこどもの状況調査や学習支援を実施

事業の目的 2024年度の取り組み 2024年度の取り組みの結果 1年間の振り返り 2年目に向けて

事業の目的

外国につながるこどもと家族が、安心して学び、働き、共に暮らせる社会を実現するために、群馬県太田市と横浜市鶴見区においてフリースクールを運営しています。さらに、母語による教育相談への対応を行い、こどもたちが将来の選択肢を広げられるよう、進学ガイダンスも開催しています。
また、群馬県太田市とその近郊の外国につながる家族やその取り巻く状況についての調査も行い、実態を把握することで、より良い支援体制の構築をめざしています。

2024年度の取り組み

【フリースクールの運営】
横浜市の教室では、来日したばかりで初期日本語指導が必要な中学生から、中学卒業後に来日し高校進学をめざす学齢超過生まで、それぞれのニーズやレベルに応じた授業展開を行いました。受験生に対しては、入試直前の1月から、学校教員や企業、行政など外部の方に面接官を依頼し、毎日のように面接練習を行いました。

フリースクール横浜教室。レベル別に2つのクラスに分け、大学生ボランティアのサポートも入って、きめ細かな授業を行いました
横浜教室の模擬試験。外部会場を借り、近隣中学の外国ルーツの生徒も参加し、本番さながらの雰囲気の中で実施しました

群馬県太田市の教室には、来日して間もない中学生が多く在籍しており、日本語がある程度話せる生徒でも、学習言語としては伸びしろがあるというケースが多く見られました。そうした中、参加人数は徐々に増えています。以前はあまり参加していなかった中学3年生が、先輩との交流を通じて刺激を受け、入試前には非常に熱心に学習に取り組む姿も見られました。

フリースクール太田教室。大学生や高校生のボランティアも多く、一人ひとりに寄り添ってサポートしました
太田教室の小学生クラス。先生との会話も楽しみながら、勉強に取り組みました

【群馬県太田市での高校進学ガイダンス】
1年目に実施した調査結果をもとに、外国につながるこどもと保護者に多言語で高校入試に関する情報を提供し、親子で進学について考える機会を設けることを目的として、「高校進学ガイダンス」を3月22日(土)に開催しました。会場は、太田市が12月に新しくオープンした多文化共生センターおおたです。

ガイダンスは、太田市国際交流協会の後援を受け、大泉町、群馬県内の2つの支援団体、さらに在東京ブラジル総領事館の協力のもと実施されました。また、地域の教育事務所や教育委員会を通じて学校から外国につながるこどもと保護者に直接広く周知し、小中学生・保護者41人、教育関係者・支援団体等14人、合計55人が参加しました。当日は通訳付きでオリエンテーションを実施し、その後、高校生による体験談の共有と先輩との交流タイム、さらに個別相談を行いました。

太田市で開催した高校進学ガイダンス。市内だけでなく近隣市町村の外国ルーツの親子が大勢参加してくれました
高校進学ガイダンスでの先輩&後輩の交流タイム。みんな積極的に発言し、熱気に満ちた時間になりました
高校進学ガイダンス終了後、参加者、登壇者、スタッフが一堂に集まって記念写真を撮りました

【外国につながるこどもたちと保護者向けの教育相談】
外国につながるこどもたちを取り巻く環境にはさまざまなケースが見られます。たとえば、保護者が日本の学校や教育システムについての情報を得られないために、こどもの将来の選択肢が狭まってしまったり、親の離婚や失業などによる経済的困難から、こどもが勉強したくてもできない状況に置かれてしまったりすることがあります。さらに、悩みや課題があっても言葉の壁により不安を誰にも相談できず、抱え込んでしまっている家族も少なくありません。 そのような外国につながる家族を対象に、母語での相談対応や情報提供を行い、彼らが安心して生活が送れるようサポートしています。必要に応じて当団体の心理支援事業などの専門家につなげたり、専門家とともに家族と話す機会を持てるようにするなどの体制を整えています。

2024年度の取り組みの結果

  • 横浜市の教室では、一人ひとりに合わせた学習指導や面接対策によって、日本語力と面接対応力の向上を図ることができました。今年度の外国籍生徒対象の特別入試は、例年に比べてかなり倍率が高く、2倍以上の学校も複数ありましたが、全員が無事に第一志望に合格することができました。
  • 群馬県太田市の教室では、参加者それぞれの希望や状況に応じ、県内あるいは近隣県の公立高校・私立高校などへ進学が決まりました。また、教室の時間中に保護者が進路について相談に訪れるなど、教育支援の場として地域に定着しつつあります。
  • 群馬県太田市での高校進学ガイダンスでは、特に先輩との交流タイムが盛況で、ガイダンスで体験談を話してくれた高校生たちと、参加した小中学生、さらにボランティアの大学生も交えて、長時間にわたり熱心に話し合う様子が見られました。また、会場に設けた資料コーナーには、県内の外国人生徒が多く在籍する高校から、学校案内資料の提供を快く受けることができ、情報提供に大いに役立ちました。これにより、高校とのつながりも生まれ、今後の事業展開において大きな力となることが期待されます。
  • 教育相談では、2024年は全体で124件の相談が寄せられました。学校や進学、フリースクールなど教育関係の相談が多数を占めましたが、年度末には抑うつや不安、ストレスなど心理的な悩みに関する相談も多く寄せられたため、心理の専門家につなげました。また、高校合格後に家庭の事情で入学金や学費を払うのが難しくなったケースなど、家族に関わる問題の相談もありましたが、その都度学校や関係機関に連絡を取り、解決につなげるよう努めました。

1年間の振り返り

神奈川県横浜市と群馬県太田市という地域による違い、外国につながるこどもと保護者を取り巻く現状、行政や学校の支援体制の差などを理解した上で、それぞれのニーズにあった形での教育支援を進めるよう尽力しました。太田市が多文化共生事業のための施設を立ち上げるというタイミングで、今後の連係・協力を得られることになったのは群馬での活動において大きな一歩になると考えています。

2年目に向けて

1年目の調査結果、そしてフリースクールや高校進学ガイダンス、教育相談の実績を踏まえた上で、群馬での各関係機関、団体のネットワークを作りながら、持続的な活動が可能になるような体制を確立していきたいと思います。

特定非営利活動法人 ABCジャパン

理事長

安富祖美智江さん

ブラジル・サンパウロ出身の沖縄系二世。在日30年・横浜市鶴見区在住28年。 二女の母。地域のブラジル人や南米系日系人住民への相談ボランティアからスタート。
定住外国人支援のため仲間と共にABCジャパンを立ち上げ、その後NPO法人化。
2016年より理事長として、行政や学校、ブラジル大使館・総領事館等と連携して、当事者の立場に立って外国人住民の生活・教育等の支援を行っている。
2018年ブラジル国家勲章受章、2019年外務大臣表彰受章。2023年度国際交流基金地球市民賞受賞、第4回(2024年)SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞受賞。

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