助成団体紹介
2023活動報告|「もぐらんワーク」の開発を通して得た、貴重な時間の積み重ね
認定特定非営利活動 法人地球学校
3年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
採択団体一覧|2021年度<経済的困難を抱える子どもの学び支援活動助成> 2021活動報告|外国につながる子どもたちの日本語学習を支える教室のオンライン化事業 2022活動報告|外国につながる子供たちの日本語学習を支えるオンライン化事業
事業の目的 事業の内容と活動の経過 事業の結果 事業の成果 3年間の助成を振り返っての感想
事業の目的
助成3年目の目標は、1・2年目に蓄積してきた教材に加えて、「公開できる新規教材」を増やすことと、「教材の活用につながるアイデアサイト」の公開をすることでした。また、公開後もアイデアが集まり、改善が進められるようなネットワークを構築するべく現在進行中です。助成期間後も継続できる仕組みを整えることで、地球っ子教室はもちろんのこと、全国の外国につながる子どもたちと、支援する人たちの笑顔が増える活動にしたいと考えています。
事業の内容と活動の経過
3年間を通して取り組んだ3種の各事業を、【もぐらんワーク】としてお披露目しました。
地球学校の公式ホームページ
①重点実行項目1は【もぐらんと学ぼう】やさしい日本語・スモールステップ・視覚化を意識した学習教材
②重点実行項目2は【もぐらんと読もう】音読用の日本の物語・2種類のやさしい日本語・独自のイラスト
③重点実行項目3は【もぐらんと遊ぼう】ゲーム漢字王決定戦ウェブ公開・イベント漢字王決定戦
すべての原動力は地球っ子たちです。今回、NPOの活動会員とともに、多くの外部の方々にもお世話になったことを再認識しました。多様な視点からアドバイスをいただいたり、自分たちだけでは難しいスキルを補っていただいたりと、ご協力に感謝するばかりです。
事業の結果
【もぐらんワーク】専用サイト(2024年9月正式公開)
もぐらんワークは、オンラインで子どもたちの学習をサポートするときに「こんな教材があったらいいな」 という思いから始めた取り組みです。
現状では一人で学習するのが困難な子どもが、やがては自分でどんどん学んでいけるための下支えとなるよう、もぐらんワークを支援教室などで活用してもらえたらと願っています。それぞれの現場で、目の前にいる一人ひとりの外国につながる子どもたちの成長を一緒に応援していける存在が増えたらという願いを込めています。
もぐらんワーク専用サイトでは、助成期間に作成した学習教材とともに、「子どもたちに使ってみたらこんなでした」という実例動画なども継続的に公開していきます。
【もぐらんと学ぼう】には、プレ学習と教科学習があります。教材の実践例や工夫例の紹介をすることで、「使ってみたい」はもちろん「作ってみたい」につながることも期待しています。外国につながる子どもたちの学習をサポートしている日本全国、世界各国の人々とつながることができたらいいな、とも思っています。
【もぐらんと読もう】では、日本の物語が2種類の「やさしい日本語」で読めます。絵本のようにページをめくりながら読み聞かせをしたり、見本となる音声を聞きながら声に出す練習をしたりできます。各物語の挿絵にあるオリジナルイラストを使った「間違い探し」は子どもたちが大好きな教材です。
【もぐらんと遊ぼう】のゲーム漢字王決定戦は、学習支援者がいなくても一人で遊ぶことができます。
①羊の中に犬が一匹:一つだけ違う漢字を選びます。漢字は、学習する学年別に選べます。※ランキングあり
②世界の文字:全38の世界の文字があります。一つだけ違う文字を選んだり、各国の言葉や発音に触れたりすることができます。
③仲間で集まれ:漢字の「部首」と「書き順」に触れることで、漢字の字体をつかむことにつながります。
④神経衰弱:漢字の読み方と文字、漢字とイラストなどをマッチングします。文字とともに言葉の学習にもつながります。
「世界の文字」は日本の子どもたちにも遊んでほしいゲームです。知らない文字、読めない文字に接したときの気持ちを実感してもらえたら、学校にいる外国につながる子どもたちの漢字学習の困難さに気づき、他者の立場を理解することにつながるのではないかと思います。同時に、多様な文字に触れる楽しさも味わってもらえるはずです。
事業の成果
助成期間3年間の目に見える成果は、地球っ子教室を支えてくれている大勢の支援者の教材作成スキルが向上したことかもしれません。突然始まったコロナ禍に対応するために始めたオンライン教室では、開始当初は戸惑うことが数多くありました。その最たるものは、パソコンやインターネットまわりのスキル不足による不安です。そんな中、助成1年目に開催したスキルアップ講座で徐々に操作に慣れていき、心のハードルが下がっていきました。助成3年目には、画像を入れたスライド教材の作成は当たり前になっていました。
パソコンのスキルはもちろんのこと、内容においても、地球っ子教室のオンライン教室で使用しながら試行錯誤し、カスタマイズ例が蓄積できたことも大きな成果です。毎週のように開催していた20:30からのオンラインミーティングでは、地球っ子教室の多くの支援者と教材作りのポイント・着眼点について共有できましたし、日々の教室活動の悩みを相談し合える環境にもなりました。
ほかにも、外国につながる子どもや保護者とコミュニケーションする中で必要なスキルの一つである「やさしい日本語」については、【もぐらんと読もう】を作る過程で日常的なものになりました。また、地球っ子教室で年2回開催している「イベント漢字王決定戦」の問題作成と進行を担える支援者が増えたことも心強いです。
これらすべての成果は、一人ひとりの支援者が接する目の前の子どもたちの日々の成長に結びついています。一人として同じ子どもはいないし、同じ子どもでも次の週には前の週と同じ状態ではありません。そんな個々の特性や変化を観察しながら、子どもとのやりとりを楽しめる余裕ができたような気がしています。子どもたちの反応に一喜一憂しつつも、長い目で子どもの成長を見守ることの大切さを子どもたちから教わっています。
3年間の助成を振り返っての感想
最後に、3年間の助成後である2024年度、地球っ子教室ではリーダー交代がありました。20年継続してきた事業を、次世代にバトンパスすることができたのは、ベネッセこども基金の助成のおかげでもあります。計画した実行項目を進める中での自然な流れでもありますが、助成期間中に開催された2つの研修に新旧のリーダーがともに取り組み同じ時間を過ごしたことが大きいと考えています。
2年目の「事業評価研究会」、3年目の「ファンドレイズ研修」に参加した際、全体会と並行して個別サポートを得られたことは、いずれも非営利組織特有のマネジメントについて学ぶよい機会にもなりました。
これからもNPOの事業として、地球っ子教室の活動も、【もぐらんワーク】も継続していきます。これらの活動を必要とする人が一人でもいる限り、継続することが私たちの使命です。
丸山伊津紀 さん
福武書店、ラボ日本語教育研修所非常勤講師(継続中)。2000年に地球学校に参加し2008年理事長就任。
2020・2021・2022年かながわ国際政策推進懇話会委員、横浜市地域日本語教育総合調整会議委員。