助成団体紹介
2023活動報告|ブラジル人児童の学習や発達を、学校や教育委員会とも連携しながらサポート
特定非営利活動法人 在日ブラジル人を支援する会(サビジャ)
3年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。
採択団体一覧|2021年度<経済的困難を抱える子どもの学び支援活動助成> 2021活動報告|在日ブラジル人児童への発達サポート事業 2022活動報告|ブラジル人児童への学習サポート
事業の目的 事業の内容と活動の経過 事業の結果 事業の成果 課題および今後の展望 3年間の助成を振り返っての感想
事業の目的
心理面・発達面・学習面から包括的にサポートを行うことで、在日ブラジル人児童生徒が、家庭環境やバックグラウンドに関わらず、日本のどこに住んでいても、健全な成長に必要な個々に適した教育を受けられる体制を、行政や教育機関、NPOなどとネットワークを通じて構築することをめざしています。
事業の内容と活動の経過
実行項目①として、ブラジル人心理士によるポルトガル語での心理サポートを実施しました。子どもへのサポートだけでなく、子育てする保護者の相談も受け、日本での子育てや子どもの発達についての支援も行いました。
実行項目②として、知能検査を含むポルトガル語での発達サポートを行いました。保護者と学校と連携し、包括的に児童をサポートする体制を作りながら、支援を行いました。
実行項目③として、バイリンガル指導員による学習サポートを実施しました。計画当初は対面での学習サポート教室を予定していましたが、新型コロナウィルスの影響もあり、オンラインに変更して実施しました。オンラインにすることで、日本全国どこに住んでいても参加できるようになり、多くのニーズがあることが判明しました。一方、オンラインにすることで児童の集中力持続や細かい指導に難しさが出てくるため、オンライン授業には必ず保護者に同席してもらうことを条件としました。結果、指導員と家庭との連携が密になり、また保護者も子どもの学習状況を知る機会にもなり、効果がありました。
事業の結果
本事業は、地域の住民であるブラジル人児童に必要な支援であり、制度化することが望まれます。そのため、1~2年目の実績を持って、ブラジル人集住地域の教育委員会を訪問し、事業の説明やニーズの高さ、行政での制度化について働きかけを行いました。
地域によっては教育委員会に温度差がありなかなか話が進まないこともありましたが、実行項目①と②の心理・発達サポートで支援したケースの多くは学校からの依頼であり、教育現場からのニーズが高いことを示したことで、働きかけを続けてきた教育委員会の一つである愛知県豊川市教育委員会から次年度の業務委託を受けることができました。
事業の成果
実行項目①②では、地域の住民であり、地域で育つブラジル人の子どもたちが、これまでに育ってきた環境や文化、言葉が違うことにより、適切なサポートを受けられていない状況があり、NPOの活動としてそのニーズに対応してきました。その結果、一部の地域ではありますが、ポルトガル語での心理・発達サポートを教育委員会の事業として行う体制が整備できました。母語が日本語でなくても、必要な支援が児童とその家庭に届く環境ができました。特にブラジル人児童が通う学校にとっても、教育委員会の制度として児童に適切なサポートをできるようになったといえます。
実行項目③では、制度化は実現できませんでしたが、バイリンガル指導員のネットワークを3年間で構築することができました。オンラインのため、生徒も指導員もどこに住んでいてもサポートを実施できる環境が整いました。
課題および今後の展望
3年間の助成事業として実績を積み、ニーズが多くあることが改めて明らかとなりました。2024年度は愛知県豊川市教育委員会からの業務委託がスタートできることになり、大きな一歩と言えます。
また、ふじのくに未来財団のハイブリッド基金として、静岡県内でのブラジル人児童への心理・発達サポートを実施できることも決まり、事業を継続しています。
今後も、日本に住むブラジル人児童とその家庭が、同じ地域の住民として日本人と同様にサポートを受けられるよう、行政に働きかけを続けていきます。
3年間の助成を振り返っての感想
3年間の継続的な支援を頂けたことで、NPOサビジャとその活動について、在日ブラジル人コミュニティーや日本社会、特に行政や教育委員会に知ってもらうことができました。子どもの保護者だけでなく、学校の先生にも相談先としてNPOサビジャがあることを周知でき、多くのサポートを実施することができました。
加えて事業の実績を積み、ニーズを数値として示すことができたことで、教育委員会での予算を確保できたことは、NPOサビジャの今後の活動だけでなく、在日外国人児童へのサポート分野において意義のあることだと言えます。
また、ベネッセこども基金の助成団体との交流会では、他の団体と知り合うことができ、活動内容を知るだけでなく、団体が抱えている課題を共有したり、どのようなモチベーションで活動をしているかなど、生の声を聞いたりする機会を設けてもらい、参加したスタッフ自身の事業への取り組み方などに良い影響をもらうことができました。
千葉明子 さん
大学でポルトガル語を専攻し、ブラジル留学を経験。ブラジル文化やブラジル人の人柄にふれあい、魅了され、帰国後はボランティアとして、日本に住むブラジル人とその子どもたちのサポートにかかわるようになる。現在は、NPO在日ブラジル人を支援する会(サビジャ)の心理相談や生活相談の窓口として、ブラジル人からの相談にポルトガル語で日々対応している。2022年度社会福祉士資格を取得し、日本語・ポルトガル語で対応できるバイリンガル社会福祉士としてブラジル人からの相談に対応中。