公益財団法人ベネッセこども基金

助成団体紹介

2025活動報告|外国につながるこどもたちの学習や進路・キャリア選択の支援が前進

特定非営利活動法人 ABCジャパン

経済的困難を抱えるこどもの学び支援

3年目の助成期間を終え、活動の成果をご報告いただきました。事業の詳細などは以下からご覧ください。

2023年事業紹介 神奈川県・群馬県の外国につながるこどもの状況調査・教育相談とフリー スクールのモデル化事業 2023活動報告|群馬県太田市と横浜市にて、外国につながるこどもの状況調査や学習支援を実施 2024活動報告|学習サポートや進学ガイダンスの開催、教育相談事業を通じて外国につながるこどもと親を支援

事業の目的 事業の内容 事業の結果 事業の成果 課題および今後の展望 3年間の助成を振り返っての感想

事業の目的

本事業の目的は、外国につながるこどもたちの教育環境をより良くするため、横浜市鶴見区で積み重ねてきた支援の経験や方法を群馬県太田市に伝え、地域に合った支援の形をつくることです。
特に3年目は、これまでの活動で見えてきた課題に対して、専門的な知識や技術を活かしながら、安定した運営体制を整えることをめざします。太田市内の小中学校や高校、教育委員会、自治体、支援団体などとのつながりをさらに深め、進路ガイダンスやフリースクールの活動を地域に定着させていく。また、外国につながるこどもへの学習支援に関する再調査を行い、その内容を報告書としてまとめる。学習支援だけでなく、心の面も含めた幅広い相談体制を整え、助成終了後も地域全体でこどもたちを支え続けられる、持続可能な仕組みを完成させることが、3年目の大切な目標です。

事業の内容

    本事業は、横浜市鶴見区で培った支援のノウハウを群馬県太田市へ広げ、外国につながるこどもたちの教育環境を改善する取り組みです。
    1年目は、太田市で教育の実態調査を行い、学習支援を行うフリースクールを開設しました。また、母語による教育相談も始め、初年度は140件以上の相談に対応しました。調査では、家庭で十分な学習支援が受けられないことや、進路情報が不足していることなどの課題が明らかになりました。
    2年目は、安定した運営体制づくりと地域との連携強化に力を入れました。太田市で団体として初めて「高校進学ガイダンス」を開催し、外国につながるこどもと保護者に多言語で必要とする情報を伝え、また地域の学校や行政、他団体との関係づくりにつなげました。フリースクールでは、きめ細やかな支援により、生徒の学習意欲を高めるとともに、保護者への啓発活動も行いました。
    3年目は、群馬県内の外国につながるこどもへの学習支援に関する再調査を行い、報告書にまとめました。高校進学ガイダンスには8か国の親子が参加するなど、地域に根づいた活動となりました。相談内容も、心の問題や在留資格など内容が多様化し、195件に達しました。さらに、多世代のボランティアが関わる仕組みを定着させ、助成終了後も地域全体でこどもたちを支え続けられる持続可能な体制を整えました。

事業の結果

まず、太田市で実態調査を行い、生徒や保護者、教育関係者が抱える課題やニーズを把握しました。さらに3年目には、学校教員や行政担当者、支援団体等への調査やインタビューを実施し、現場の課題や必要とされる支援内容を整理しました。調査結果は報告書としてまとめ、地域の支援体制づくりやネットワーク形成に役立つ資料となりました。
直接支援としては、横浜と太田でフリースクールを運営し、生徒一人ひとりの日本語力や学習状況に応じた支援を実施しました。安心して学べる居場所づくりにも力を入れ、先輩や多世代ボランティアとの交流機会も設けました。
また、母語で対応可能なオンライン予約システムを構築し、数多くの相談に対応しました。教育相談だけでなく、心理支援などの専門家へつなぐ体制も整備しました。
さらに、太田では、行政や総領事館等の協力を得て、多言語資料を用いた「高校進学ガイダンス」を2回開催し、行政、学校、支援団体、大学生ボランティアなどと連携しながら、地域全体で外国ルーツのこどもを支えるネットワークを構築しました。

横浜のフリースクール。レベル別に2つに分けたクラスでの授業の様子
横浜のフリースクールでの高校入試前の面接試験対策練習。外部に面接官を依頼
太田のフリースクールでの小学生教室の様子。大学生ボランティアがサポート
高校進学ガイダンスでの先輩体験談紹介のコーナー

事業の成果

3年間の取り組みにより、群馬県太田市において、外国につながるこどもたちを支える地域の教育支援体制が大きく前進しました。学習意欲の向上により学校のテスト点数が上がった例や、公立・私立高校への進学などの実績が生まれました。また、学校の教員から「生徒が日本語に前向きに取り組むようになった」との報告もあり、支援が学校生活にも好影響を与えました。横浜のフリースクールでは、きめ細かな支援を通して全員が第一志望校に合格し、太田市でも進路や学習に関する相談が継続的に寄せられるなど、地域に信頼される教育支援の場として定着しつつあります。

また、高校進学ガイダンスでは、行政や国際交流協会、支援団体、学校など多くの関係機関との連携が進み、外国につながる親子が進路について安心して情報を得られる環境が整いました。先輩学生や大学生ボランティアとの交流を通して、生徒たちが将来の進学やキャリアを具体的に考える機会にもつながりました。
さらに、母語による相談体制やオンライン予約システムを整備したことで、これまで相談先につながりにくかった家庭も安心して支援を受けられるようになりました。こうした取り組みにより、学校・行政・地域住民が連携しながら、助成終了後も継続して外国につながるこどもたちを支えていける持続可能な地域モデルを築くことができました。

課題および今後の展望

助成終了後の課題は、本事業で築いた学校、行政、支援団体等とのネットワークを維持・発展させながら、増加・多様化する支援ニーズに対応できる体制を継続していくことです。調査を通じて、人手不足や言語の壁、支援内容の複雑化といった課題が改めて明らかとなりました。特に、教育相談はDVや在留資格、心理的ケアなど多岐にわたり、専門知識を持つスタッフや通訳の継続的な確保が不可欠です。また、フリースクールや進学ガイダンスを安定して運営するためには、継続的な財源確保も大きな課題となります。

今後は、これまで築いてきた地域とのつながりを活かし、学校や行政、地域住民、大学生ボランティアなど多様な主体が協力しながら、地域全体で外国ルーツのこどもたちを支える持続可能な支援モデルの確立をめざします。母語による相談や情報発信を継続し、学校だけでは対応が難しい課題を地域全体で支える仕組みを定着させていきます。横浜での実績を他地域へ展開した本事業の成果を活かし、外国ルーツのこどもたちが将来の進路を安心して描ける社会の実現に貢献していきたいと思います。

3年間の助成を振り返っての感想

当団体の理事長が以前から群馬と縁があり、また「鶴見のような学習支援教室や相談体制がほしい」という現地からの強い声を受けて、本事業は横浜市鶴見区と群馬県太田市の2拠点でスタートしました。当初は、鶴見で培った支援の方法を「鶴見モデル」としてそのまま太田市でも展開できるのではないかと考えていました。しかし、実際には地域性や学校の状況、保護者を取り巻く環境などが大きく異なり、同じやり方では十分に対応できないことを実感しました。

その中で、現地の状況を丁寧に知るための調査を重ね、学習支援や相談支援を続けていくうちに、学校や行政、地域の支援団体とのつながりが少しずつ広がり、新たな可能性が見えてきたことを大変嬉しく感じています。地域に合った支援の形を模索しながら、関係者と信頼関係を築くことができたのは、大きな成果です。
このような取り組みを実現できたのは、ベネッセこども基金の助成によって3年間という時間をかけて事業に取り組むことができたからこそです。短期間では得られなかった地域とのつながりや変化を積み重ねることができたことに、改めて深く感謝申し上げます。

特定非営利活動法人 ABCジャパン

理事長

安富祖美智江さん

ブラジル・サンパウロ出身の沖縄系二世。在日30年・横浜市鶴見区在住28年。 二女の母。地域のブラジル人や南米系日系人住民への相談ボランティアからスタート。
定住外国人支援のため仲間と共にABCジャパンを立ち上げ、その後NPO法人化。
2016年より理事長として、行政や学校、ブラジル大使館・総領事館等と連携して、当事者の立場に立って外国人住民の生活・教育等の支援を行っている。
2018年ブラジル国家勲章受章、2019年外務大臣表彰受章。2023年度国際交流基金地球市民賞受賞、第4回(2024年)SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞受賞。

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